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【#平成】〈9〉空前のブーム「失楽園」ドロドロ不倫が支持を受けた現実と幻想の間

7/14(土) 11:02配信

スポーツ報知

 天皇陛下の生前退位により来年4月30日で30年の歴史を終え、残り1年となった「平成」。スポーツ報知では、平成の30年間を1年ごとにピックアップし、当時を振り返る連載「♯(ハッシュタグ)平成」を掲載する。第9回は平成9年(1997年)。

 大人の不倫を描き、1997年(平成9年)2月に講談社から単行本として刊行された「失楽園」は、上下巻を合わせた年間発行部数は300万部を突破。同年の映画も、興収約44億円の大ヒットとなった。「失楽園(する)」は同年の流行語大賞に選出。老若男女が不倫の恋に憧れた。今では考えられない「ドロドロ不倫」の社会現象化。なぜ男性だけでなく女性からも支持されるまでに至ったのか、映画スタッフの証言を中心に、その要因に迫った。(樋口 智城)

■興行収入44億円「失楽園」

 97年5月10日。映画「失楽園」の公開初日は、銀座の映画館に数百メートルもの長蛇の列ができた。その8割方が女性だった。「100万人動員、興収12~13億円が成功の目安」とされるなか、「約300万人、興収約44億円」を記録する大ヒットとなり、「失楽園ブーム」をさらに加速させた。

 映画作りを振り返るために、時間を少し巻き戻す。

 96年初頭。角川書店の角川歴彦(つぐひこ)社長(当時)から映画化を持ちかけられた時、プロデューサーの原正人さんは「難しい。できません」。そう言って、難色を示した。ネックは作中の性描写。「原作を忠実に描いてひとりの女性が乱れていく姿をそのままに描くと、“ハードコア”になってしまう。成人映画ならいいんだけどって話ですよ」と振り返る。

 渡辺淳一氏原作の「失楽園」は、95年10月に日本経済新聞で連載開始。不倫する男女を主人公に性の奥深さを描き出した内容は男性を中心に大きな話題となり、通勤中にむさぼり読むサラリーマンの姿はテレビのワイドショーでも取り上げられた。映画化の話が出た時、小説は連載中。原さんは「97年に講談社から本が出ることは分かっていた。歴彦さんには、そこに映画をぶつければブームが起きるという計算があった」と明かす。

 歴彦氏にも事情があった。93年、当時の社長の不祥事で会社は経営的に打撃を受け、社外にいた歴彦氏が社長就任。映画「失楽園」はグループ再建の第1弾だった。社運を懸けた企画。簡単に諦めるわけにはいかなかった。

 そこで原さんは「どういうコンセプトなら映画化できるか」を考えた。ふと思い出したのは、自らが関わった74年の仏映画「エマニエル夫人」。性をテーマに、主人公の女性が大胆に自立していく姿が、日本の女性から絶大な支持を受けた。「あの文学的な香り、美しい映像。『現実とファンタジーの間』のセンでいこう」。方向性が固まった。

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最終更新:7/14(土) 11:02
スポーツ報知