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「このすば」大ヒットも暁なつめさん「実感湧かない」

7/14(土) 11:34配信

福井新聞ONLINE

 シリーズ累計650万部という大ベストセラーのライトノベル「この素晴らしい世界に祝福を!」(略称このすば)。作者の暁なつめ(あかつき・なつめ)さんは福井県越前市出身だ。異世界に転生した少年が一癖ある仲間たちと繰り広げるコメディー要素たっぷりの冒険物語が、読書離れが指摘されている中高生ら若者らの絶大な支持を得ている。アニメや漫画、ゲームになり、映画化も決定。海外での人気も高く、現代の出版界が目指す最高峰のメディアミックスも達成した。

 暁さんは小中学生の頃からファンタジー小説に親しみ、2012年にライトノベルの新人賞で1次選考を通過したのを機に、小説投稿サイトに自作を掲載するようになった。12年末~13年秋に連載した「このすば」が大きな反響を呼び、13年に角川スニーカー文庫からデビューした。

 16年のアニメ化で知名度はさらにアップ。これまでに14巻とスピンオフ3作品を刊行した。「異世界コメディーの金字塔」と評され、「10年に1度あるかないか」(同文庫編集部)のメガヒットを記録している。

 主人公は、ショック死したゲームオタクの少年、カズマ。女神の力を借りて魔王の支配するファンタジー世界へ転生し、魔法使いや剣士ら複数の美少女とパーティーを組むものの、それぞれ珍妙な性格・性癖の持ち主。冒険は思うように進まず、物語は奇想天外な展開にもつれ込む。

 「キャラを作るときはギャップを必ず一つ入れている」と暁さん。例えば、主要キャラの女神アクアは、女神なのに細かいことを気にしない豪快な性格で生活能力がない。魔法使いのめぐみんは最強攻撃魔法「爆裂魔法」の使い手だが、1日1発しか撃てず、小回りのきく魔法は使えない。口調には誰の発言か区別できるように個性をつけており、テンポのよい会話と軽妙な筆致で読者を非日常の世界にいざなっていく。

 暁さんは、素顔や経歴を明かさない覆面作家だが、著者紹介欄には「福井県越前市出身」と入れており、古里への思い入れは強い。作中でカズマがトラクターに耕されそうになる場面は、実家近くの田んぼをイメージして書いたといい、登場人物の面々がカニを好んで食べる一こまもある。父は洋画家で菊人形師だった。「たけふ菊人形」の人形製作に携わった経験もあるそうだ。

 「執筆ペースには波があり、締め切りが迫って出版社の会議室にこもって書くこともある」と人気作家としての一面をのぞかせる一方で、国境を越えた大勢のファンに注目されていることに「いまだに実感が湧かない」とはにかむ。精力的な創作活動の傍ら、プロ作家の登竜門「第24回スニーカー大賞」などの選考委員を務め、後進の発掘も担っている。新作シリーズ「戦闘員、派遣します」も好調で、漫画原作にも乗り出すなど勢いは止まらない。「福井県や越前市の名を世界に広められたら」とぼくとつながら力強く語る。