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金正恩ートランプ会談から1カ月 脱北者から「歓迎」と「独裁政権を助けるな」の声

7/16(月) 16:19配信

アジアプレス・ネットワーク

◆死ぬまでに北にいる子どもに会いたい

6月の歴史的な朝米首脳会談から1カ月が過ぎた。非核化の問題だけでなく、朝鮮戦争終結に向けた対話が進められることになったが、まだ具体的で可視化された進展はない。冷戦構造最後の残滓が消えて軍事的な緊張は緩和に向かうのか。「漆黒の国」は開かれて光が差し込むことになるのか。当事者である北朝鮮の人と脱北者は、この歴史的会談をどう受けてとめているのか、話を聞いた。(石丸次郎)

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韓国ソウルに暮らす金周一(キム・ジュイル 仮名80歳)さんは、日本の東北地方生まれの脱北者。貧しかった青年時代に社会主義に傾倒して、大阪で在日朝鮮人運動に没頭した。革命家を夢見て1960年代に帰還事業で北朝鮮に渡った。

「20代で血気盛んだった。でも北朝鮮は物質的にも精神的にもあまりにも落伍した社会で失望の連続だった。もう、北朝鮮でのことは思い出したくもないんですよ」
という。

製鉄所に配置された。労働に打ち込みながら学ぼうと、日本からロシア文学やマルクスの書籍を持ち込んだが、すべて没収された。5年前に脱北し、北朝鮮にいる子供と孫に密かに送金を続けている。金一族による支配への嫌悪は今も激しい。「国民は奴隷だ」と言い切る。
そんな金さんも、この数か月間の南北と朝米の対話の進展には大いに期待を寄せている。

「敵対関係が終われば、人の往来ができるようになるかもしれない。そうしたら、死ぬ前に北朝鮮にいる娘、息子と会えるかもしれない。金正恩も本気だろう。トランプ氏が会談をうまくやって北には変わってほしい」

◆文政権の対北融和策に怒る人も

10年近く前に平壌から脱北し、今は関西地方に住む康忠識(カン・チュンシク 仮名40代男性)さんの意見は真逆だ。

「住民を犠牲にした核開発で生き延びようとした金正恩政権は、国際社会の制裁で窮地に陥っている。それなのに、なぜあの一族独裁体制の延命に手を貸すのか。北の人民の苦労をまったくわかっていない」
と、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の対北朝鮮融和政策に怒りを露わにする。

トランプ氏については、発言が目まぐるしく変わるので戸惑い続きだ。「金正恩と安易な妥協をせず、核を放棄するまで経済制裁を解くべきではない」
というのが康さんの意見だ。

北朝鮮の北部に住む取材協力者の女性にも、電話で考えを聞いた。
「そもそも金正恩元帥がトランプ大統領と会談するなんて、ほとんどの国民は知らされていなかった。非核化問題と朝鮮戦争の終戦を話し合う? それで支援が入って来るとか、開放に向かうなら歓迎だけど、あの政権が核を捨てるなんてありえないと思う。とにかく暮らしが早く良くなってほしい。中国のように改革開放してほしい。庶民は、皆こう考えていると思う」

女性はさばさばと答えた。朝米会談に対する考えは三様だが、祖国が変化に向かってほしいという思いだけは共通であった。