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ワールドカップ決勝に乱入したプッシー・ライオットとは? 「黒幕」のインタビューから迫る

7/16(月) 9:00配信

ハフポスト日本版

サッカー・ワールドカップロシア大会の決勝戦(7月15日)で、ピッチに乱入した男女4人は、ロシアのプーチン大統領に反対するグループ「プッシー・ライオット」のメンバーだった。いったいどんなグループなのか。6年前、この団体の「黒幕」とも言える人物にインタビューした内容から迫る。

プッシー・ライオットのゲリラ演奏の動画はこちら

プッシー・ライオットはフェミニスト集団。メンバーは通常、色とりどりの目出し帽をかぶり、時にパンクバンドとして演奏しながら、プーチン大統領らを批判してきた。

このグループが一躍有名になったのは2012年2月。プーチン氏が再選することになる大統領選の直前に、メンバー5人が目出し帽姿でロシア正教会の中心的な施設「救世主キリスト大聖堂」(モスクワ)に立ち入り、「パンクの祈祷」と称してゲリラ演奏を行なったからだ。

曲は「聖母様、プーチンを追い出して」などとする歌詞で、プーチン氏とプーチン氏と関係のいいキリル・モスクワ総主教とを批判した。

彼らはその模様をビデオで撮影し、インターネットに投稿したほか、教会内の立ち入り禁止場所にも入った。

5人のうち、エカテリーナ・サムセビッチさん、マリア・アリョーヒナさん、ナジェージダ・トロコンニコワさんの女性3人がフーリガン(暴徒)行為の疑いで逮捕された。ロシア正教会の信者からも「正教会や信者を侮辱した」として大きな怒りを買った。

アリョーヒナさんとトロコンニコワさんは禁錮2年の実刑判決、サムセビッチさんは禁錮2年執行猶予2年の有罪判決をそれぞれ受けた。

結成のきっかけ

筆者は一審にあたるモスクワの地区裁判所の判決前に、プッシー・ライオットの中心人物だったピョートル・ベルズィロフさんにインタビューした。

ベルズィロフさんはトロコンニコワさんの夫。2人は過激な左翼芸術家集団「バイナー(ロシア語で「戦争」の意味)」に所属しており、プッシー・ライオット結成のキーパーソンだった。

ベルズィロフさんによると、プッシー・ライオットは2011年9月に発足した。きっかけはこの直前、与党「統一ロシア」が、2012年にあった大統領選でプーチン首相(当時)を候補に擁立すると発表。これを受け、プーチン氏は当選したあかつきには、当時大統領だったメドベージェフ氏を首相に任命する方針を表明した。

この4年前は、プーチン氏が大統領で、メドベージェフ氏が首相だった。2人が入れ替わる形で三たび大統領と首相のポストを「独占」することに対し、世論は反発。ベルズィロフさんらもプーチン氏への反対運動を展開することを決意した。

コアメンバーは10~15人で、ゲリラライブごとにさらに20~25人の支援者が集まったという。当時ですでに10曲ほどの持ち歌があったとベルズィロフさんは明かした。

救世主キリスト大聖堂でのゲリラ演奏について、ベルズィロフさんはこう語った。

「キリル総主教の態度が急変したのがゲリラ演奏のきっかけです。2011年の12月にあった反政府集会の際、正教会の信者たちに『集会に行ってはならない。ロシアを救うことができるのはプーチンだけなのだから、信者はみな、キリストを支持するようにプーチンを支持しなさい』と言ったからだ」

「宗教が政治介入することは許されない。その上、正教会の金もうけ体質も問題だ。有料駐車場やサウナ、1回の利用で1万ドル以上もする宴会場の経営など、教会がまるでビジネスセンターになっている。もしそんなことが許されるんだったら、パンク祈祷だっていいじゃないか」

目出し帽をかぶっていることについては、「怖いからではなく、顔を覚えさせる必要がないから。というのも、このメンバーはいつでも交代できる戦争集団だからだ」と説明した。

ロシアの政治状況についてはこう述べた。

「ロシアには強権的な指導者は必要ない。必要なのは普通の民主主義体制だ。汚職体質の権威主義はいらない。クリーンな選挙が必要であり、強権政治は国を発展させない」

プーチン大統領の目の前で...

プーチン大統領はワールドカップの開催を、ロシアの発展ぶりを世界にアピールする場でもあった。そのクライマックスともいうべき決勝戦でプッシー・ライオットのメンバーに乱入されたことは、プーチン氏にとってみれば面子をつぶされた格好だ。

関根和弘