ここから本文です

【舛添要一の僭越ですが】私がカジノに慎重だったわけ

7/17(火) 14:00配信

ニュースソクラ

IR法は失敗だったリゾート法に似ていないか

 国会の会期末が7月22日に迫っている。

 政府・与党は、会期内の法案処理に全力をあげているが、とくにカジノを含むIR(統合型リゾート)実施法案と参院選挙制度改革に関する公選法改正案が与野党の激しい攻防の的となっている。

 IR法案については、10日から参院内閣委で実質審議が始まった。その前提となる「ギャンブル依存症対策基本法」(議員立法)は既に成立している。

 IR法案の担当大臣は石井国土交通大臣であるため、野党は豪雨による災害対策を優先させるべきだと批判しているが、法案を確実に成立させるために、与党は一切の譲歩を拒否している。

 IR法との関連で、私がいつも思い出すのは、1987年に成立したリゾート法(総合保養地域整備法)である。当時の雰囲気は、バブルということもあって、これこそ地域振興の特効薬だと持て囃され、多くの国会議員が旗振り役となって、減税などの支援措置が採られた。そのときの空気は、今のIR法案への熱気によく似ている。

 民間活力の導入による内需拡大、ゆとりある国民生活の実現などのスローガンが行き交い、これには誰も反対できないような風潮であった。しかし、バブルが崩壊し、自然保護運動が高まると、多くのリゾート施設が赤字経営に陥り、破綻していった。

 その象徴が宮崎のシーガイアであり、夕張市のように財政負担に苦しめられるケースもあった。今から振り替えると、リゾート法は失敗であったと結論づけるしかない。

 私が約25年前に政治活動を始め、国会議員になったときには、すでにカジノ・IRの魅力について喧伝されており、自民党議員ならばこれに賛同すべきであるという空気になっていた。

 カジノ関連業界などが積極的にロビー活動を展開していたが、私は、ギャンブル依存症や資金洗浄(マネー・ロンダリング)など様々な問題があるので、諸手を挙げて賛成するわけにはいかず、2010年4月に発足したIR議員連盟にも参加しなかった。

 今回の法案では、6000円の入場料、週3回・月10回までの入場制限などが課されているが、それがギャンブル依存症の十分な対策になるとは言えない。さらには、日本人が額に汗して稼いだカネが海外資本に吸い取られる危険性がある。そもそも、期待するほどの経済効果がもたらされるかどうか、海外の失敗例は多々ある。

 カジノ目当ての海外の富裕層が、あえて東京に来るだけのメリットはあるのか。たとえばラスベガスやシンガポールのほうを選ぶのではないか。IR法は第二のリゾート法となるかもしれない。IR法推進者には、そのような危惧の念はいささかもないのであろうか。

 東京都知事として、私は、東京という大都市には「ナイトライフ」が欠如していることを指摘し、カジノもまた、それを改善する一つの方法として位置づけていた。しかし、ギャンブル依存症など諸問題について広汎な検討が行われることを大前提としたので、拙速に進める考えはなかった。

 この態度がカジノ推進派の怒りを買ったようであるが、海外マフィアの怖さを知っているだけに慎重に対応すべきだと判断したのである。

 夜のエンタテイメントならば、たとえば、コンサートや芝居などの上演時間をもっと遅くする、深夜でもフルコースで楽しめる料理店を増やす、夜食付きのナイトクルーズ(屋形船もそうだが)を増便するとか、カジノ以外にも様々な手がある。また、公共交通をせめて夜1~2時まで動かすなどの対応もある。

 カジノ誘致の候補地としては、大阪の夢州(ゆめしま)、横浜の山下埠頭などが挙がっているが、東京のお台場は、私の慎重姿勢が理由なのか、今のところ候補地として有力視されていない。

 世界の富裕層が大挙して日本のカジノに到来し、ラスベガスのような賑わいになる姿は、残念ながら、私にはあまり想像できない。むしろ、日本人が大金をつぎ込んで、家計破綻、一家離散などの悲劇が数多く生まれることを危惧する。

 カジノがなくても、寺社などの建築美、歌舞伎などの伝統芸能、若い才能溢れる現代美術、健康的な日本料理、四季に恵まれた自然など、日本には世界中の人々を惹き付ける魅力が多々ある。韓国の平昌から南へ50キロの江原にあるカジノ周辺の殺伐とした風景の再現は御免である。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:7/17(火) 14:00
ニュースソクラ

あなたにおすすめの記事