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農業ベンチャー「農匠」、水田の水管理を遠隔自動化

7/18(水) 16:01配信

ニュースソクラ

水管理次第で単位収穫が増減

 全国に約2万5000ある農業法人経営は、農業の担い手として期待される存在だ。多くが雇用や経営の分野で近代的な手法を持ち込んだり、最新の情報通信技術(ICT)を利用するスマート農業を手がけていたりする。最近注目を集めているのが農匠(のうしょう)ナビと呼ばれる稲作4農業法人などで構成するベンチャー企業だ。

 同社を構成するのは石川県のぶった農産、茨城県の横田農場、滋賀県のフクハラファーム、熊本県のAGL。米生産コストの4割削減を掲げ、九州大学の南石晃明教授が主導してきた農匠ナビ1000研究プロジェクトに、4法人は「研究機関」として参加。研究成果を広く現場に普及しようと、4法人と南石教授らが立ち上げた会社だ。

▽農匠自動水門を披露

 農匠ナビは6月16日、茨城県龍ケ崎市の横田農場で、水田向け自動給水器の「農匠自動水門」をお披露目した。手で持ち上がるほどのブリキ製の四角い中空の箱に、小型モーターとパイプが収納されている。短いコードで接続された田んぼの水位計の目盛りを手動で設定すると、指定した範囲で水が流れ出る。モーターで水を汲み上げるのではなく、パイプを上下することで自然に水が流れる原理を利用する。構造が簡単で水路を流れるごみが詰まりにくいという強みを持つ。エンジニアの経験を持つAGLの高崎克也社長と南石教授が考案した。

 「全国の水田の7割を占める開水路に面した水田に設置できる」と農匠ナビ社長でもある農場の横田修一代表は説明会で胸を張った。

▽水管理徹底でコスト削減

 水田への給水は、稲作にとって大切な作業だ。稲が生育ステージごとに要求する水加減が異なる他、散布する農薬や肥料の効き具合を調節するにもきめ細かい水管理が欠かせない。「水管理を向上させることで米の単位収量を増やすことができる。単収が上がれば米の生産コストを下げることにつながる」と南石教授は解説した。簡単な操作で自分の水田に最適な水管理ができれば、農匠ナビが目指すコストの4割削減に近づく。

 農匠自動水門は来年から1台5万円以下で市販される予定。今年は全国で100台を試験中。JA全農も別途100台を購入して傘下のJAで試験している。「これまでの中間調査で試験導入した農家の75%が、省力効果を実感している」と横田社長は指摘する。農匠自動水門が、農家の省力化=コスト削減に役立つ手応えを感じていると言う。

 農家が直面する課題を解決するのは、必ずしも最新のICTだけではない。「農家目線で開発した」と横田社長が言うように、オールドファッションな器具が、役立つことも多い。これからも技術開発を続けるという農匠ナビに注目だ。

■山田 優(農業ジャーナリスト)
明治大学兼任講師。農学博士。1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。

最終更新:7/18(水) 16:01
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