ここから本文です

イオンもライバル視 知る人ぞ知る快進撃のゆめタウン

7/19(木) 6:51配信

ITmedia ビジネスオンライン

 今年も「日経MJ」小売業調査の季節になった。1面解説は、「総合スーパーも個性の時代」というタイトルで、ドン・キホーテとの共同運営による「MEGAドン・キホーテUNY」座間店が取り上げられていた。ドンキ式の導入によって店の中身がまるで変わり、シニア中心だった客層が若返り、かなり活況を呈しているとのこと。

主な総合スーパーの売り上げランキングと業績

 このようにドンキ化した店舗の来店客数は前年比1.9倍、売り上げは2.2倍になったという実績が出ており、ユニーは2023年までに100店舗規模に拡大する意向だという。やはり今のところ、総合スーパー(GMS)の再生事例は、ドン・キホーテによる業態転換しかない、ということのようだ。

 下の表は、冒頭の小売業調査を基に総合スーパーの売り上げ、収益の状況を抽出したものだが、ほとんどの企業が減収かつ低収益の状況から脱していない。イオングループもセブン&アイ・ホールディングスも、総合スーパーの収益は前年比で改善してはいるのだが、その収益率(売上高経常利益率)は1%にも満たないレベルであって、到底胸を張れる水準とはいえない。そのほかの企業もほとんどが減収かつ低収益率であり、総合スーパーは相変わらず苦境から抜け出せないでいると言っていいだろう。

 ただ例外がある。上から3行目のイズミ(広島県)だけが、増収かつ高収益率を確保している。イズミと聞いてもどんな会社かよく分からない方は多いはずだ。特に近畿以東にお住まいの方には、ほぼ知られていない企業だが、中国・四国・九州では「ゆめタウン」(店舗名)といえば、知らない人はいないほど有名な店なのである。地域で人気の大型ショッピングモールを展開し、中国・四国・九州では、イオンモールの唯一のライバルといった存在だ。

イオンの全国制覇に立ちはだかる

 イズミは、ゆめタウン(大型ショッピングモール)、ゆめモール(中型ショッピングモール)、ゆめマート(食品スーパー)等を運営する、西日本では最大の総合流通グループで、構造的な不振にあると言われる総合スーパーを中核としているにもかかわらず、業績は好調を維持している。

 「なぜそうなのか?」という説明は、マニアックになるため割愛するが、(1)地域最大クラスの売場規模を確保している、(2)食品部門の運営レベルが他社に比べ優れている(総合スーパーは一般的には得意ではない)(3)モール構成であるが、テナント料でもうけようとはしていない、といったところにあるようだ。特にモール運営について、一般的にはテナントから最大限賃料をとってもうける、という意識が先行するのだが、ゆめタウンは他社比賃料の水準を低く抑えて、店舗に最適なテナントを確保することに重点を置いていると言われている。こうした地道なテナント運営が、イオンモールにも引けをとらないテナントミックスと地域密着の店づくりを両立させているのであろう。

 地方での大型ショッピングモールといえば、最大手であるイオンモールがその代名詞で、地方に行くとショッピングモール≒イオンモールというのが一般的な状況だ。中心市街地や地方百貨店が衰退してしまった地域では、土日にはイオンモールしか行くところがなく、必ず誰か知り合いに会ってしまう、という話も地方の住人たちからよく聞く。

 そんなモールの王者が、中国・四国・九州ではゆめタウンに手を焼いていて、地域一番店はゆめタウンであることが少なくないらしい。イズミグループはイオンに目の敵にされており、ゆめタウンやゆめモールといった施設の近隣には、しばしばイオンの商業施設が後追い出店してガチンコとなる。少し前にイズミグループが新しいタイプのショッピングモール「LECT」を地元・広島でオープンさせたが、イオングループはその5キロ圏内に、「ジ アウトレット広島」という大型アウトレットモールを投入して対抗している。全国制覇に立ちはだかる存在として、イオングループからも認識されているという現れなのだろう。

 そのイズミグループは先ごろ、セブン&アイ・ホールディングスとの業務提携を発表している。首都圏の方々は、セブン&アイはイオンと並ぶ流通大手だから全国展開しているグループだと思っている人が多いが、このグループで全国展開しているのは、コンビニエンスストア(セブン-イレブン)ぐらいであり、その他のグループ会社は首都圏および大都市圏、もしくは東日本といった場所でしかお目にかかることはないはずだ。このため、総合スーパー、食品スーパーといった業種においては、セブン&アイは地域企業と補完的なアライアンスが十分可能なのである。このため、両社の提携というのは、業界では想定の範囲内の出来事といえる。

 スーパー業界においての基本的な構図は、全国を直系の企業で制覇しようとするイオングループが各地域でシェアを拡大している中、地方に既得権を持たないセブン&アイが、地域の最有力企業を支援して「代理戦争」を仕掛けるというものだ。これまでも、近畿のH2Oグループ、岡山の天満屋ストア、北海道のダイイチなどとの提携関係も、こうした構図の一環と理解できる。今回のイズミグループとセブン&アイの提携はそうした意味で中国・四国・九州エリアの対イオン同盟であり、セブン&アイの後方支援を受けたイズミとイオンの攻防戦がこのエリアの流通再編のメインストーリーになるのだろう。

1/2ページ