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イイダのショルキー、『あさってColor』の演出。『スプラトゥーン2』ハイカライブに込められた数々のこだわりを、アレンジ担当の大山徹也氏にインタビュー!

7/21(日) 2:16配信

ファミ通.com

文・取材:世界三大三代川

 そんな人はいないかもしれないが、『スプラトゥーン』が好きでまだ観ていない人は、とりあえず下の映像を観てほしい。


『スプラトゥーン』&『スプラトゥーン2』インタビュー記事まとめ
https://www.famitsu.com/news/201907/21179901.html

 上記のハイカライブを始め、『スプラトゥーン』は、これまでシオカラーズのシオカライブ、テンタクルズ&シオカラーズのハイカライブと、数々のライブが行われ、どれも観た人から称賛の声が挙がっている。シオカラーズ、テンタクルズのダンス、パフォーマンスはもちろんのこと、ライブならではの特徴のひとつが楽曲アレンジ。このアレンジを手掛けるのは、作・編曲家としてさまざまなアーティストの楽曲を担当してきた大山徹也氏だ。

 今回、2018年7月18日に発売されたCD『Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Octotune-』に、2018年2月に行われた闘会議でのハイカライブの音源が収録されることから、改めて、大山徹也氏にハイカライブの制作秘話、楽曲のアレンジの秘話などをうかがった。そこには、大山氏はもちろん、任天堂のスタッフなど、関わる人々の熱い想いとこだわりがあった。

 ちなみに、今回のインタビューの中には、たびたびWet Floor Shibuyaというワードが出てくる。Wet Floorは『スプラトゥーン2』の一部の楽曲を担当するアーティストで、2017年7月にタワーレコード限定でCD『Inkoming!』を発売した、イカ界の人気バンドだ。そのCDの中に収録されたのが、Wet Floorを人間界のメンバーで再現したとも言える、Wet Floor Shibuyaの演奏する楽曲で、彼らはCD発売記念にライブを開催。記者は幸運にもチケット付きのCDを購入できライブに参加したのだが、そのライブの盛り上がりはすさまじく、メンバーと観客の一体感など、本当にすばらしいものだった(観られた人の少なさから、一部では伝説的な扱いになっている)。

 大山氏は、このWet Floor Shibuyaのバンドメンバー集めやアレンジも担当。ハイカライブの一部の楽曲は、このWet Floor Shibuyaのアレンジをオマージュしたようなものもある。今回のインタビューの前知識として欠かせない要素でもあるので、ぜひ下のWet Floor Shibuyaのレコーディング映像と合わせて、チェックしておいてほしい。


こだわり溢れるスタッフの想い



――まずは、ハイカライブのアレンジのコンセプトを教えてください。


大山 テンタクルズの曲がEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージックの略称)の要素が強いので、バンドで行くという方向性に決まったところから、そのうえで何をすべきか考えたときに、自分の中で“EDMとバンドのライブ感を足す形がいちばんいいだろう”と思って。このテーマありきで進めたので、それがコンセプトと言えると思います。あとは、イイダのスタイルの確立が、もうひとつのコンセプトでしたね。


――アレンジのオーダーが来る時点で、ある程度の方向性が示されているものなのでしょうか? それとも、ある程度大山さんにお任せに?


大山 今回のハイカライブは、任天堂さんからライブでやりたいことや方向性をメールでいただきました。2016年の最初のシオカライブのときは、綿密なやり取りを重ねて、相当細かい微調整もしたんですが、だんだん数を重ねるうちに僕と峰岸さん(峰岸透氏。任天堂のコンポーザーで、『スプラトゥーン』シリーズのサウンドディレクター)の中で何かが疎通してきているので、最近はざっくりとしたオーダーも増えてきましたね(笑)。



――ある程度のオーダーでお互いのやりたいことがわかるようになったんですね。


大山 そうですね。でも、曲によってだいぶ違います。最初のオーダーの時点で細かいところまで書いていただく曲もあれば、雰囲気を伝えてもらうような曲もあったりします。


――“EDMとバンドのライブ感を足す”といった方向性は、その時点で出ていたのでしょうか?


大山 その時点ではなかったですね。最初の話では「今回のライブはギターを入れないでやるのはどうだろう」というアイデアがあったんです。でも、僕から「ギターがないと、バンド感が出ないので入れたい」と伝えて。もう少し丁寧に言うと、ギターがいたほうがEDMとバンド感をつなぐ楽器になるかなと思ったのと、ライブにはシオカラーズの曲もあるので、テンタクルズとシオカラーズの差異が出すぎてしまうと、ひとつのバンドで演奏をするのが難しくなってしまうこともあって、全体をつなぐ役まわりとしてギターを提案したんです。


――なるほど。個人的な印象ですが、EDMはそのままだと、ライブならではの変化が出しづらいように感じるのですが。


大山 そうですね。ですので、僕がやったこととしては、EDMらしさを強く仕上げるというよりは、EDMの世界観をバンドが演奏するライブでやるという方向に寄せていったイメージです。デジタルロックと言うと語弊があるのかもしれませんが、そういったジャンルで使うギターの入れかたを持ってきたり、といった意識がありました。


――よりEDMのビートを強くするといったものではなく。


大山 ビートやダンス感を強くするよりは、デジタルロックというか、デジタルのバンドとしての要素をどう組み込むかといった部分を強く押し出せば、バンドのライブとしてカッコよくなるだろうと考えていました。


――シオカライブとハイカライブはどちらのほうがたいへんでしたか?


大山 かかった時間としては、ハイカライブのほうがたいへんだったかもしれないですね。というのも、峰岸さんも僕も思い入れが強くなっていったぶん、やりたいことが増えていったんです。たとえば、新しいボイスを入れるとか、当初からイイダに何かやらせたいという話があったので、ショルキーで出てくるとか。『あさってColor』の演出も、音が先にできあがって、そのあとあの演出ができたんですが、僕がシオカラーズに想い入れがありすぎて『あさってColor』はどうしても泣けるようにしたかったんです(笑)。だから、間奏でアオリとホタルのソロ曲のフレーズ昔が流れるところをより劇的な演出にしたいと思って、原曲よりもわかりやすく過剰にふたりの昔の曲が流れるようにして、対比を出しているんです。そういった部分を足して楽曲のほうで演出を増していったら、「だったら演出もこうしていきましょう」という話も生まれていって、そういった意味でやるべきことが増えていきましたね。



――本来ならば、回数を重ねて短縮できる部分も増えていくはずなのに……。


大山 ふたりとも、やりたいことが増えていく(笑)。


――(笑)。お聞きしていると、アレンジだけでなく演出にも関わっているんですね。


大山 ただ、演出は演出のチームがいるので、僕は最初に音を作るときと、途中で話をするくらいでしたね。峰岸さんやほかのスタッフの方々が音も演出も見ているので、僕から音を作って受け渡して、あとはそこから演出も作っていただいて、という感じです。ただ、演出や踊りを取りまとめているめろちん(ニコニコ動画などの踊り手として活躍。振り付けやDJなども手掛け、シオカラーズ、テンタクルズの振り付けのほとんどを担当している)を含め、皆さんと関わるようになって長いので、そこも意思疎通が取りやすくなっていますね。とくに、めろちんはDJをやっているから、こっちの意図を汲んでくれるだろうなと思いながら音を作ると、ちゃんと汲んでくれますし。


――ああ、信頼関係ができていて、お互いのメッセージを自然と拾えるというのはいいですね。


大山 シオカライブ、ハイカライブのチームは、そういうことがすごく自然にできていた印象がありますね。
イイダのショルキーの秘密


――ハイカライブより以前のお話ですが、最初にテンタクルズを見たときの印象はいかがでしたか?


大山 “カッコいい”という印象でしたね。最初はトレーラーで観たんですが、「カッコいい」というのと同時に「これでライブやるなら、どうする……?」っていうのは、やっぱり最初に考えちゃいました(笑)。でも、『フルスロットル・テンタクル』は最初から好きな曲だと感じていたので、ライブでやれるんだったら楽しそうだなとも思っていました。



――シオカラーズとはかなり方向性が違って、驚きましたよね。


大山 そうですね。予想はしていなかったです。「こう来たか!」っていうのはありました。


――大山さんの中にあるシオカラーズ、テンタクルズのイメージをそれぞれ教えてもらっていいですか?


大山 僕としての解釈ですが、シオカラーズはどこまでいっても王道アイドルでいたいという想いで、意識して作っている気がします。僕の中でテンタクルズはアーティストらしいアーティストで、ヒメがああいう自由な立ち位置でいて、イイダはマルチに何でもできて歌もうまい、ハイカライブでもそういう見せかたができたらいいなと思ってやっていました。


――ハイカライブではイイダがショルキーを持って演奏する部分がありましたが、あれはどういった経緯で決まったのでしょうか?


大山 順序立てて言いますと、最初の打ち合わせのときに、イイダはDJセットありきで考えていたので、「DJセットはマストだと思うので、DJソロがなければおもしろくないと思うんですよ」といった話をしていたんです。で、あとはイイダがずっと歌うというのもあまり想像しづらかったので、「キーボード持って出てきたほうがおもしろいですよね」みたいな話もして。そういう話を、たくさんの人がいるシーンとした大きい会議室で、僕と峰岸さんだけがめっちゃ盛り上がってやっていたんです(笑)。


――(笑)。


大山 けっこう早い時期の打ち合わせでいろいろ盛り上がって「こんなことやれたらいいですね」といった話をしたので、その時点で、ボイスを新しく収録することやイイダがある程度動くことなどを決めていた気がしますね。


――ゲーム内ではショルキーを使っているパートもないですから、完全にライブ用に作ったわけですよね。


大山 そうですね。結果的には大正解だった気がします。テンタクルズは、アレンジしながら「これは何のソロにしようかな」と考えて、DJソロを頭とお尻に入れれば盛り上がるかなと。それで、最初の『ウルトラ・カラーパルス』と最後の『フルスロットル・テンタクル』に入れて、真ん中をショルキーにしようと『レッド・ホット・エゴイスト』に入れました。



――ショルキーを弾くイイダの動きは、ある程度曲に合っているようにも見えました。そういった動きの監修もされているのでしょうか?


大山 いえ、僕は一切していないです。スクラッチの動きとかは、めろちんが理解しているでしょうけど、キーボードもある程度合っていましたよね。だから、あれは映像担当の方ががんばって作られたんだと思います。


――そうなんですね。譜面ができあがってそれを渡したら、あとは演出のチームがそれを見ながらやっていくと。


大山 いやー、この動きをつけている時点ではたぶん譜面は渡してすらいないと思います。


――えっ!?


大山 だから、たぶん音だけで判断してやっていると思いますよ。


――す、すごい。いわゆる“耳コピ”に近い状況なんでしょうか?


大山 そうだと思いますね。僕も詳しいことはわかりませんが、テンタクルズの動きは指まではモーションキャプチャーできていないはずなので、あのショルキーの指の動きは映像制作時点で音を聴きながらがんばったんじゃないかなと。


――じゃあ、実際に演奏と合っているような動きを見て、大山さんも驚きました?


大山 リハーサルの前に一度スタジオでデモをやるんですが、そこで見たときは感動しました。「おお!」と(笑)。


「『あさってColor』で泣かせなかったら嘘だろう」



――アレンジしやすかった楽曲と、難しかった楽曲などはありますか?


大山 しやすかった楽曲の優劣はあまりないんですが、時間をかけたという意味では『あさってColor』がダントツですね。取り掛かるまでにも相当考えたし、バージョン違いで5、6パターンくらい作ったかな……。


――そんなに作ったんですね。


大山 はい。峰岸さんを含めて誰も聴いていないものが4、5パターンはありますね。で、そこから再びいろいろ考えているときに峰岸さんからも要望があって、さらに作っていったので、けっこう時間がかかりました。闘会議のハイカライブの中で最後にできましたね。考えることが多かったので、最後まで手を付けづらかったというのもありました(笑)。


――想い入れがすごい(笑)。


大山 もう、ここで泣かせなかったら嘘だろうくらいに思ってましたので(笑)。とくに『スプラトゥーン2』のヒーローモードをやった直後でもあったので、僕の中でも想い入れは相当強かったですね。


――それは、最高に想い入れがあった瞬間ですね! ちなみに、複数作ったバージョンというのはどう違ったのでしょうか?


大山 まず、ピアノをどう使うかというのが悩みでした。ゲーム内で流れている『あさってColor』はもうちょっとポップなんですね。で、ライブのときにあの曲で泣かせるためには、おセンチな部分をもう少しブラッシュアップしたいなと。ライブには、キーボードのメンバーもいたので、それに合わせてピアノのパターン違いを何個か作りましたね。あとは、『トキメキ☆ボムラッシュ』と『スミソアエの夜』のフレーズが出てくるところで、ふたりが過去を思い出す瞬間の演出を音楽でどう作ろうかと。最終的には、あのシーンはオケトラック(編注:ここでは生バンド以外の演奏のこと)だけにフィルターをかけた音色で始まり、リバーブが強くかかっていくんですが、そこもエフェクトのかけ具合やバンドが戻ってくるタイミングの違いを何パターンか作りました。で、自分の中でいちばんグッと来そうなのを考えて。



――大山さんがいちばん泣きそうなものが選ばれたんですね(笑)。『あさってColor』は時間がかかった曲とのことですが、そのほかに、アレンジに苦労した曲はありませんでしたか?


大山 アレンジしづらいっていうのはなかったです。むしろ、『スプラトゥーン』はイメージしやすいものが多いですね。ちょっと大きい話になってしまうかもしれませんが、『スプラトゥーン』の楽曲はゲームで使っている音楽なので、ゲームありきの音楽、ゲームを盛り上げるための音楽なんですよね。ですので、シオカラーズとテンタクルズというふた組のアーティスト……アイドルでもいいんですけど、そういう演者がいる状態でのライブにする時点で、今度はゲームがなくても音だけで楽しめるもの、そしてゲームをやったことがある人は音楽だけでゲームをやっている気分になれるくらいのものに仕上げるということが、僕がやっていることだと思うんです。だから、「ライブでアガる音楽を!」という意味ではどれも余地が最初から残っているので、意外と浮かぶんですよね。


――イメージが浮かびやすいと。


大山 そうですね。最初のシオカライブのときには、いろいろと考えていたような気はするんですが、いまとなってはしづらいという感覚はそんなにないです。


――では、テンタクルズ、シオカラーズじゃなくても、たとえばWet Floor Shibuyaのときも想像しやすかったんですか?


大山 Wet Floor Shibuyaのときは、またちょっと話が変わりますね。Wet Floor Shibuyaは、バンドありきだったので、あの若者たちがどういうふうに弾けるかというのを念頭に置いて考えていました。あれは、人間のバンドでライブをやらなければいけないので、考えるベクトルは違いましたね。


――ああ、なるほど。『あさってColor』の話に戻りますが、大山さんの狙い通り、見事に泣いたんですが(笑)、あの演出をご覧になっていかがでしたか?


大山 僕自身も感動してました。全体を通して会場で見ていると感動もひとしおで、歓声もすごかったですし、とくに闘会議のときはシオカラーズとテンタクルズの中の人たちが皆さん揃っていて、号泣されていた方もいたので、そういうのを見ると僕自身もグッと来ちゃいますよね(笑)。
『シオカラ節』から『濃口シオカラ節』へ、そして……


――もともと『シオカラ節』をライブ版としてアレンジされて、さらに今度は『濃口シオカラ節』をアレンジするというのは、いかがでしたか?


大山 まずシオカラーズの『シオカラ節』をシオカライブ用にライブアレンジしたわけですが、ゲーム中の『濃口シオカラ節』のイントロは、まさにライブアレンジ版の『シオカラ節』をそのまま持ってきているんですよね。任天堂さんから「あのイントロ、もらっていいですか?」っていう話があって(笑)。


――直接交渉が(笑)。


大山 それでもちろん「ぜひ」と答えて、『濃口シオカラ節』という楽曲ができあがって、聴いてみたらイントロがライブのフレーズになっていたことが、僕にとってはうれしいですし、すごくありがたかったですね。今回は、それをもう一回受け取って、さらにハイカライブ用にアレンジするというものだったので、バトンがどんどん受け渡されて演出がマシマシにしていく感覚で、とても楽しかったです。ただ、ゲーム内でも完成されている感覚がとても強いので、ちょっとだけプラスオンしたくらいのアレンジでした。



――お互いにバトンを渡しながら、「そう来たか」、「こう来たか」とアレンジしていくみたいな。


大山 そうですね。あれこそが、最初のシオカライブからいまへのバトンタッチと言える曲じゃないですかね。


――じゃあ、もし今後があったら……。


大山 たいへんですね。“超濃口”とかになるのかも(笑)。


――(笑)。楽曲の中で、とくに大きく変わったなと思うのが『イマ・ヌラネバー!』でした。イントロの「ラー、ラーララーラーラー」を観客といっしょに歌う部分などは、Wet Floor Shibuyaがライブで演奏した『Now or Never!』と同じものでしたが、あのアレンジを踏襲するといったコンセプトはあったのでしょうか?


大山 はい。オマージュと呼ぶべきかはわかりませんが、出だしのコール&レスポンスは、企画が動き出したあたりで、峰岸さんから「Wet Floor Shibuyaでやった、アレをぜひやりたいです」とリクエストをもらっていました。その話が出た時点で、トラック自体もWet Floor Shibuyaの『Now or Never!』と、シオカライブの『イマ・ヌラネバー!』を合わせたような、いいとこどりミックスを目指そうということは考えていました。


――では、大山さんの中でも目指したいものがあったと。


大山 そうですね。あと、ニコニコ超会議のときは、さらに頭にハイスタ(Hi-STANDARD)チックなアレンジを付けたりと、いろいろとブラッシュアップをしていたので、最終的には僕なりの『イマ・ヌラネバー!』への想いを入れたという部分もあったと思います。


――ニコニコ超会議では、闘会議からいろいろと手を加えていたんですね。


大山 じつは、もともとは闘会議と超会議は、『ナスティ・マジェスティ』が入る以外は変えない予定もあったんです。でも、峰岸さんから「やっぱりアレンジを変えたいです」というメールが来て(笑)。


――(笑)。


大山 ただ、僕もずっと“変えるべきなんじゃないか”と思っていたんですよ。闘会議、スイス(編注:2018年3月に行われたPolymanga 2018でのライブ)を踏まえての超会議だったので。峰岸さんからは「でも、時間もないので、生演奏などのできるところでアレンジをうまく変えていけたらいいですね。あと、DJのソロとか」って書いてあって、「DJは生じゃないぞ!?」と心の中でツッコんで(笑)。


――あはは(笑)。


大山 でも、せっかく変えられるなら、ということで、DJソロは2曲分とも変えて、あとはトラックの差異を出したり。生演奏は、闘会議と超会議でギター以外のメンバーが違うんですが、これは超会議のメンバーを集めるときに、闘会議と同じメンバーにならないとわかった時点で、よりライブを意識したメンバーにオファーしたんです。その結果、バンドメンバーの違いがライブ感の差異としていい方向に出て。みんなが暴れてくれたので、おもしろいほうに出た気がします。


――ちょっとお話が戻りますが、『イマ・ヌラネバー!』は初の4人による歌唱でしたが、相応の苦労はあったのでしょうか?


大山 最初の打ち合わせで、僕が無邪気に「あれは絶対にイイダに歌わせたいです」という提案をさせてもらって。ただ、『イマ・ヌラネバー!』って、テンタクルズ版ではヒメだけでイイダは歌っていないんですよね。それも知っていながら提案をしたんですが、峰岸さんはかなり悩んで、しばらく沈黙されて。いろいろ悩まれたと思うんですが、最終的には「4人で歌いましょう」と。それから歌を新録して調整したんですが、4人の声が違いすぎるというか、シオカラーズとテンタクルズの方向が違うので、その4人が並ぶいいバランスで聴かせるのが難しかったですね。



――その成果か、特別感がありましたよね。ちなみに、新録という点では、MCのボイスも収録されていますよね?


大山 そうですね。最終的にセリフに合わせて流れるボイスは任天堂さんのほうで制作されているので、すべてを知っているわけではありませんが、実際にボイスの収録も行っています。


――たとえば、掛け声用のボイスなども?


大山 はい。峰岸さんと「もうちょっとこういうのが欲しいよね」といった話をしながら、どんどん録っていきましたね。


――そういった部分は、一般的な音楽のお仕事には存在しないような内容だと思うんですが、ライブCDを作るようなイメージなんでしょうか?


大山 そうですね。……いまこの質問を受けて、「ああ、確かにふつうのライブにはないんだな」と思ったんですけど。じつは、僕は毎年“超パーティー”というニコニコのライブを担当していて、7年ほどボーカロイドのライブに携わらせてもらっているので、“ライブを事前に収録する”という感覚はすごくふつうになってしまっていて。初音ミクなどは、MCや掛け声も全部事前に作っていくのがデフォルトなんです。いまあらためて「そうか、ふつうはしないんだな」と(笑)。いわゆるバーチャルライブの鉄則ですから。


――大山さんの中では特別なものではなかった(笑)。


大山 ですから、収録するまでにライブのビジョンを詰めておかないとマズイなと思って、峰岸さんと話しながら作っていましたね。「こういうところは、こういう掛け声があったほうがいいですよね?」みたいに。でも、ポイントは『フルスロットル・テンタクル』のイイダのフェイク(編注:ライブなどで、通常のメロディーとあえて異なるメロディーに変化させて歌ったりすること)でしょうね。あれは、録っているときからヤバイなと。


――そういうところも事前に決めないといけないですよね。


大山 フェイクは峰岸さんのアイデアでしたね。峰岸さんがイイダの見せ場みたいなものを入れたいと。そういったアイデアを直接話すこともあれば、メールでやり取りすることもあるんですが、メールは関係者が多いので、20人くらいCCに入っているんですよね。その中には偉い方もいらっしゃって。無邪気にやり取りしてるけど、大丈夫だったかな、と後で思うことはあります(苦笑)。


――それは恐い(笑)。超会議では、新曲として『ナスティ・マジェスティ』が入りましたが、『オクト・エキスパンション』が配信される前だったので、フルバージョンの披露はライブが初めてになりましたね。これは、何か意識した部分などはありましたか?


大山 『ナスティ・マジェスティ』を初めて聴いたのは、トレーラー映像だったと思うんですが、じつはそのときは超会議で新曲をやるという話を知らなくて、何の意識もなく観て「これをライブでやるならたいへんだなー」と思っていたんです。それで、その後に「超会議でやります」と言われて(笑)。最初に考えたのは、フル尺の初披露になるので、ある程度ライブとしてカッコよく見せるためにアレンジをするのか、原曲としての部分を多く残したほうがいいのかという2択でした。でも、いろいろ考えたんですが、意外と答えはすんなりと出て。ライブはライブっぽくいったほうがいいと。とくに、ああいうメロディーが前面に出た曲ではないので、ライブをもっと盛り上げる1コーナーとして、アレンジもさせてもらいました。



――今回の『オクトチューン』では、超会議で披露された『ナスティ・マジェスティ』は入りませんが、闘会議のハイカライブがCDとBlu-rayになります。どのように聴いてほしい、観てほしいという想いがありますか?


大山 先ほどもちょっとお話しましたが、『スプラトゥーン』の曲は、ゲームを遊ぶための音楽として存在しているものなので、ゲームの画面ありきで、ゲームの熱量をさらに上げるための曲として作っているんですよね。でも、ライブになると、今度は音楽が先に飛び込んでくる。なかなか難しいとは思いますが、理想としては、ハイカライブの音楽を聴いて「『スプラトゥーン』をやってみたい」って思ってくれる人がいたら最高にうれしいです。そこまでいかなくても、音楽だけでも『スプラトゥーン』に興味を持ってもらうとか、ゲームを遊んでいる人たちだったらゲームをやりたくなってもらえれば、それが本望です。そして、やっぱり何と言ってもシオカラーズとテンタクルズのために作っている音楽という認識でやっているので、彼女たちのことをもっともっと好きになってもらえれば(笑)


――なるほど! ありがとうございました!


 これにてスプラトゥーン2』1周年記念の3日連続インタビューは一段落。また、別の機会に合わせて、『スプラトゥーン』関連のインタビューをお届けしたい。また、以前のインタビューを読んでいない方は、下の記事もぜひ読んでいただきたい!そして、2018年7月28日(土)からは、“第4回スプラトゥーン甲子園”が開催!(日程などはこちらの記事を参照) 東海地区大会を皮切りに、熱い戦いが期待される。参加者として楽しむのはもちろん、観るだけでも十分に楽しめるので、『スプラトゥーン』ファンはぜひチェックを!

最終更新:7/21(日) 3:16
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