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<現地調査>今年も北朝鮮漁船は来るか? 中国が密輸黙認でイカ漁が復活―修正版

7/23(月) 12:14配信

アジアプレス・ネットワーク

◆早くも5月に100隻出没

日本海のイカ漁シーズンが幕を開けた。

石川、山形、北海道などの漁業者にとっては、昨年、北朝鮮のイカ漁船が日本の排他的経済水域の好漁場に押し寄せてきたことは記憶に新しい。
操業に支障が生じただけでなく、約100隻の漂流船が日本海沿岸に漂着、遺体も30体以上に上った。北海道松前市の無人島に上陸した北朝鮮漁民が施設を荒らす事件もあった。

【写真特集】  北朝鮮の船 海上保安庁の巡視船に放水される漁船など(15枚)

これらの船は、一部の海洋学者が主張するような工作船の可能性はない。現金収入を得るために無理をして日本近海まで遠征してきたイカ漁船である。

イカ漁は儲かる。良質のイカは主に中国に輸出され貴重な外貨収入になっている。海産物は北朝鮮の2016年の輸出額3位で、200億円程度を稼いでいる。イカもその一翼を担う貴重な外貨稼ぎ源だ。

◆経済制裁でイカ漁大打撃だったが

昨年末、イカ漁は大打撃を受けた。ミサイル発射実験を強行した金正恩政権に対して、国連安全保障理事会は8月の制裁で海産物の輸出を全面禁止した。金儲けにならないのなら、漁師たちが海に出る理由はない。

好漁場とはいえ、480キロも離れた大和堆(たい)は危険で油代もかかる。中国が北朝鮮の海産物輸入を止めている限り、出てくることはないだろう、筆者はそう予測していた。

ところがである。早くも5月後半、北朝鮮漁船が姿を現した。海上保安庁は、大和堆周辺で北朝鮮漁船のべ112隻に退去警告を出したと、6月1日に発表した。北朝鮮で何が起こっているのか? アジアプレスでは、内部事情を調査することにした。

◆イカ漁復活の理由は密輸

北朝鮮のイカ漁の拠点は東海岸の清津(チョンジン)市だ。ここに権力機関がたくさんの水産事業所を作っている。実際に漁労するのは、多くの場合下請け、孫請けの零細漁民たちだ。

清津市で水揚げされたイカは、冷凍、スルメに加工されて、国境都市の羅先(ラソン)に運ばれて中国に輸出される。7月初旬、この羅津の海産物市場に、北朝鮮国内に住む取材パートナーに調査に行ってもらった。

「昨年まで、良質の一等級のスルメは1キロ当たり75中国元(約1275円)で取引されていたが、それが年末に55人民元(約900円)に下がり、制裁によって中国への輸出が完全に断たれ、今年に入って市場価格が暴落していた。それが、密輸ルートが開かれて、最近では1キロ48人民元(約790円)まで値が戻っているそうだ」

密輸は主に両江道地区で行われているという。中国当局は国境警備を厳格化して密輸を遮断していたが、金正恩氏が二度目の訪中をした5月8日以降復活。豆満江と鴨緑江の上流に位置する両江道で、北朝鮮側の国家機関によって大々的に行われているのが現状だ。

「海産物市場で聞いたところ、制裁が緩和されることを見込んだ中国の業者が、スルメの買い付けを始めて値が上がったそうだ。スルメは羅先市内の倉庫に保管しているという」

このように協力者は言う。スルメの他にも、中国の業者は海産物を冷凍倉庫で保管しており、日本海側の漁業全般が、活魚を除いて回復が続いているという。

日本でも北朝鮮でも、イカ漁の最盛期は7~8月。現在のところ、大和堆周辺への北朝鮮漁船の出没は稀なようだ。だが、もし経済制裁が緩和されて海産物輸出が解禁されるようになれば、一獲千金を狙う漁船が日本近海まで遠征してきて、昨年のように漂流船が相次ぐ可能生がある。(石丸次郎/カン・ジウォン)

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