ここから本文です

BUCK-TICK 『No.0』ツアー完結 ツアーを経てアルバムが到達したのは、極上のカタルシス

7/28(土) 10:00配信

エキサイトミュージック

BUCK-TICKが今年3月にリリースしたアルバム『No.0』を携えた全国ツアー『BUCK-TICK 2018 TOUR No.0』の追加公演、事実上のツアーファイナル公演を7月26日(金)、東京・国際フォーラム ホールAで開催した。

【この記事の関連画像をもっと見る】

誕生と終焉、創造と破壊、愛と死を描いた『No.0』が、このツアーを経て到達したのは、極上のカタルシスだった。メンバー自身が制作段階から“映像的”だと評していた『No.0』の世界を、スチームパンクをテーマにしたステージセットの中、重厚かつシリアスなメンバーのパフォーマンスと、それをよりドラマティックに演出する映像とライティングとで、雄弁に物語っていた。

そして、そこで綴られた別離の哀しみも、日常の不条理も、争いの悲劇も、すべてを浄化するエンディングへと導かれ、思わず涙した人も多かったはずだ。その感覚は、このツアーを体感した者にしか分からないものかもしれないが、このレポートを通して少しでも感じてもらいたい。デビュー31年目に突入するBUCK-TICKが、この史上最高のツアーを経て、前人未到のステージへとまた一歩、歩を進めたということを。

SEと共にスクリーンに映し出されたのは、一つずつ組み上がっていく金属のパーツ。“創造”を感じさせる映像の後、ステージ上の4つの白い紗幕にメンバーのシルエットが浮かんでは消滅する。そしてシルエットのままスタートする「零式13型「愛」」。その1音目は、宇宙の誕生・ビッグバンを思わすほどの爆音だった。やがて紗幕が開くと今井寿(Gt)、星野英彦(Gt)、樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Dr)の姿が顕になり、センター後方からゆっくりと櫻井敦司(Vo)が登場。ヤガミが打ち鳴らすバスドラの音が鼓動とシンクロする。この力強く、ドラマティックなオープニングに自然と胸が高鳴った。

甘美なエロスを放つ「美醜LOVE」では、今井と星野がセットの外を飛び出し花道へと繰り出す。激情の「サロメ -femme fatale-」では真っ赤なライトが会場を染め、一転して「Ophelia」ではグリーンの照明とミレー作の絵画が悲劇の女性を映し出す。櫻井は時に激しく、時に儚くたおやかに、この対照的な二人の女性を歌い演じた。

ポップなインダストリアルチューン「光の帝国」からは、壮大なサウンドで非日常へとトリップさせてくれた。今井が放つノイズ音の中、「私たち人間は闇から来ている。闇へ消えていく。私たち人間は闇になる」と即興の詩を読む櫻井。それに続いたのは「ノスタルジア -ヰタメカニカリス-」。シアトリカルなメンバーのパフォーマンスを食い入るように見つめるオーディエンス。ヤガミの迫力あるドラミングが熱気を誘う「IGNITER」では、さらにそれを煽るように灼熱の炎が上がった。

本編では『No.0』の楽曲に、インダストリアルや反戦など、『No.0』の世界観に合った過去曲が4曲セレクトされた。それはツアーを重ねるたびに少しずつ変化し、より表現の自由度が増していったように思う。インダストリアルナンバー「PINOA ICCHIO -躍るアトム-」では、Bメロで今井が「ICONOCLASM」のフレーズを忍ばせ、「楽園」の前に櫻井が鳴らす鈴の音は、より静寂を深めた。共に月に問いかける、男性性の強い「BABEL」と、女性性の強い「Moon さよならを教えて」との対比も印象的だった。「BABEL」では地を這うような樋口のベースイントロが重厚感を放ち、「Moon さよならを教えて」では水中にいるような音像の中、櫻井がしなやかにステップを踏んだ。

先にこのツアーを“史上最高”と書いたが、それは『No.0』の楽曲がもつ強さと、徹底した世界観を構築したサウンドメイクとパフォーマンス、そして、より深まった櫻井の歌の表現力にあると思う。猛々しい王者にも、儚げな女性にも変化し、「ゲルニカの夜」では、「夢をね、見たんだ」と幼い少年に変わった。兄や母を思う少年の日常が一瞬にして破壊されていく様を、スクリーンに描かれるサンドアートと共に、鬼気迫るヴォーカルでストーリーを表現していく。歌に対する貪欲なアプローチが、聴く者を釘付けにした。

本編ラストの「胎内回帰」はまさにその真骨頂。“爆撃機”や“美ら海”と具体的な言葉を使い、反戦への思いを込めたこの歌は、誰かを演じることなく、剥き出しの感情のまま吐き出される。心を揺さぶるそのリアルな声に、思わず感情移入してしまった。そして、星野の心を掻き立てるようなアコギのストロークも、今井の歌に絡み合うエモーショナルなギターフレーズも絶品だった。MCを挟むことなく『No.0』の世界観に終始した本編は、実に圧巻だった。

シリアスな本編とは打って変わって、アンコールの一曲目は「GUSTAVE」。この最強のキャットソングは、「ニャオ~ン」と艶やかに鳴く櫻井や、猫じゃらしで観客をいじる今井、猫ポーズを見せる樋口に、威嚇ポーズを取る星野と、これまでのBUCK-TICKのステージでは見たことがない名シーンを生み出した。もちろん、会場中が猫ポーズで乱舞する姿もその一つ。さらに「薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-」で咲き乱れた後、「ROMANCE」をじっくりと聴かせた。

Wアンコールでは「NATIONAL MEDIA BOYS」と「REVOLVER」を聴かせた後、櫻井が「今日も最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました」と、観客と共にツアーを回ったスタッフに感謝の言葉を伝える。「何よりも拍手と歓声で温かく迎えてくださったファンの皆様、ありがとうございました。もう31年目に突入です。秋にはライブハウスツアーがあります。それまで皆さんお元気で。今日はどうもありがとう」と語ると、オーラスの「Solaris」へ。この曲は約8年前にリリースされたアルバム『RAZZLE DAZZLE』に収録された楽曲だが、当時のツアー以来ほとんど演奏されることがなかったレア曲。その曲が時を経て『No.0』の世界を締めくくる曲になるというのも感慨深い。柔らかく美しいサウンドスケープと、大きな愛で包み込むような温かみのあるヴォーカルが、悲しみも苦しみも痛みもすべて浄化していく。♪夢を 夢を♪と歌いながら、それを分け与えるように唇から会場へと指を差し出す櫻井の仕草には、届けたい思いが溢れていた。

余韻の中、最後に今井が奏でたのは1曲目の「零式13型「愛」」のフレーズ。ループするようにまた始まった『No.0』のストーリーは、10月からスタートする“TOUR No.0 -Guernican Moon- ”へと繋がっていくのだろう。
(取材・文/大窪由香)