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農業で流通革命なるか? スーパー内『農家の直売所』が大ヒット 農家も客も喜ぶ急成長の理由

8/1(水) 7:01配信

関西テレビ

大阪市内にあるスーパーの野菜売り場。その一角に『さんさん市場』と書かれたコーナーが…。

今が旬の桃がたくさんありますが、ラベルをよく見てみると、同じ種類の桃なのに198円、290円、350円と値段がまちまち。実は、色んな農家が作った桃が一緒に並んでいるんです。

一見、契約農家の野菜を置いているだけの“産地直送コーナー”に見えますが、お客さんに聞いてみると…?

買い物客:
「新鮮で、日持ちがしておいしくて、ほかのより甘味があります。全ての野菜や果物が」

別の買い物客:
「夕方には、売り切れてほとんど無いです」

大人気だという野菜等は全て前日にとれたもの。一角は“農家の直売所”コーナーだったのです。

この直売所は全国に1100店舗以上あり、ここ5年で7倍以上に急増!関西ではイズミヤなど、およそ400店舗に設置されていて、去年の売り上げ総額は、なんと70億円以上にものぼります。

それにともない、収入が大幅にアップした農家も続出!

モロヘイヤ農家の男性:
「売り上げが去年は最高でしたね。2倍半くらい」

コメ農家の男性:
「わしらも病みつきになってしもうた」

急成長の背景には一体何が?そして、消費者の心をつかむ秘密に迫ります!

■「頑張った人が伸びる仕組みを」

「農家の直売所」を手掛けるのが、和歌山にある農業総合研究所。率いるのは、及川智正社長(43)です。

及川社長:
「僕らが1番やりたいのは、日本から世界から農業が衰退しない仕組みを作っていきたいなと」

近年、農業をする人の数は、減少の一途をたどり、1997年に約393万人だったのが、2017年には約181万人と、20年間で半分以下に(農水省調べ)。

及川社長も、かつて農家を営んでいましたが、野菜を出荷した後、消費者にどう届くのか分からないことにやりがいを持つことができず、その仕組みを変えたいと、今の会社を立ち上げました。

及川社長:
「作るだけじゃなくて、食べてもらうまでをコーディネートできる農業を作っていくと、そうするとやることがたくさんあるので、すごくクリエーティブな仕事になる。頑張った人がどんどん伸びていく仕組みをつくっていきたいです」

■農家が値段・出荷量・出荷先を自分で

では、農家のやりがいをどう引き出しているのか?その仕組みを探るべく、農家を訪ねました。

和歌山県美浜町でピーマンやキュウリなどを生産している、中谷宗幹(むねき)さん(44)。収穫した野菜の半分以上を、及川社長の農業総合研究所を通じて販売しています。

農家・中谷さん:
「農業総合研究所さんの場合、次の日に店頭に並ぶのが確実なんですけど、市場の場合はそれがいつ店頭に並ぶか出荷者が分からないんです」

一般的な流通の仕組みでは、農家が野菜を農協に売り、その後市場などを経由し、スーパーなどの小売店に並んでいました。

この方法だと、収穫してから消費者の手に渡るまでおよそ3日から4日かかります。

しかし、農業総合研究所が手掛ける方法だと、農家が野菜を集荷場に持っていき、そこから直接小売店側に届くため、原則として収穫の翌日には消費者の手に渡るのです!

とれたばかりのピーマン。集荷場でどうなるのかというと…。

農家・中谷さん:
「ここで値段を自分で入れていくんですよ」

タブレットで値段を入力すると…、出てきたのは値札のシール!

これまでは、野菜が農協に買い取られたあと、いくらで消費者に売られるのか、農家には分かりませんでした。

しかし、ここではタブレットを使い、スーパーで売られている野菜の平均価格や売れ行き、店の立地や規模などを確認することができます。それにより、農家は野菜をいくらで、どれだけの量を、どこの店舗に出荷するのか、自分で決めることが出来るのです。

農家・中谷さん:
「この店が高く売ってるなと思ったら、そこへたくさん持って行ったり。作ってから販売まで最後までするということ。今までは作って出荷するだけだったんで」

一方、農協や一般的なスーパーの産地直送コーナーのように、出荷した野菜を買い取ってくれるわけではないので、売れ残れば全て農家の損失に。

だからこそ、それぞれの農家が美味しい野菜を作るように努力し、売るための工夫をするようになるのです。

中谷さんが出荷前の商品に一つ一つ貼り付けているのは、「まっすぐ一筋」と大きく書かれたシール。野菜作りに対する思いを表現した、お客さんへのメッセージです。

農家・中谷さん:
「ピーマンでも何軒か出してますんで、その中でも自分のところの野菜を一番先にとってもらいたいなと思って。その反面、品物が悪かったり何かあったりしたら、次から買ってくれないこともあるんですけど。やりがいはありますね」

■日本の農業を支える鍵となるか

中谷さんの作ったピーマンが並ぶスーパーに行ってみると…、次々と売れていました!

Q.何が購入の決め手ですか?

中谷さんの野菜を買った客:
「厚み!ここで大体買うんです」

別の客:
「新しくておいしいから、中谷さんが出してるピーマンを買います」

一目で自分が作った野菜だと分かるようにすることで、リピーターを獲得!消費者にとっても、どの農家の作った野菜がおいしいか選べるようになります。

こうして野菜が売れると、もちろん農家の収入に。その取り分は一般的な仕組みではスーパーで販売する価格の3割ほどでしたが、この仕組みでは、なんと6割以上!関わる業者の数が少ないため、農家の取り分が増えるのです。

Q.売り上げはどれくらい上がったんですか?

農家・中谷さん:
「市場へ出荷するよりは、1.5倍くらいは」

実は、形が悪かったり大きすぎたりして、農協で買い取ってくれない野菜も売ることができ、さらに売上アップ!

中谷さんは、増えた収入をもとに、パートの従業員を雇う余裕ができ、作る野菜の量が増えました。

中には、年間の売上が1億円を超える農家もいるそうです。

Q.今までだと、農家の中には「稼げないのに子供にさせたくない」という方もいたのでは?

農家・中谷さん:
「多分ほとんどだと思いますね。ある程度自分でどれだけの収入か見込めるようになってきたんで、それだったら自分の子供が『農業をしたい』って言ったら、させてあげたいなっていう所も出てきてると思います」

農家にも、消費者にも喜ばれる新たな仕組み。それが、日本の農業を支える鍵になるかもしれません。

(関西テレビ7月24日放送『報道ランナー』内「なるほど!ちまたのケーザイ学」より)

最終更新:8/1(水) 7:01
関西テレビ