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栃木女児殺害 録画で立証「劇場型裁判」に警鐘 検察の手法に影響も

8/3(金) 21:54配信

産経新聞

 平成17年の栃木女児殺害事件で殺人罪などに問われた勝又拓哉被告(36)に無期懲役を言い渡した3日の東京高裁判決は、1審宇都宮地裁が取り調べの録音・録画(可視化)で犯罪事実を直接認定したことを「違法」と判断。録画を長時間再生する「劇場型裁判」に警鐘を鳴らした。録画を「立証の武器」として活用してきた検察側の手法にも影響を与えそうだ。

 「録画で取り調べ中の被告の様子を見て自白供述の信用性を判断しようとすることには強い疑問がある」

 録画で犯罪事実を直接認定したことが「訴訟手続きの法令違反」にあたるとした高裁判決には、録画を信用性判断に用いることへの懸念がにじんだ。

 可視化は、供述の任意性(強制ではなく自分の意思で供述したか)を判断する際の「補助証拠」とする想定で始まった。ただ、検察側が犯罪を立証するため調書に代えて用いる「実質証拠」として申請する例が相次いでいる。最高検が平成27年2月、通達で積極活用の方針を示したためだ。

 勝又被告の1審でも、検察側が録画を「実質証拠」として請求。これを受けて地裁は、信用性(供述内容が信用できるか)を判断するための補助証拠として用いることを決めた経緯がある。法廷での再生は7時間に及んだ。

 高裁の藤井敏明裁判長が録画に言及したのはこれが初めてではない。

 28年8月の判決では「審理が長時間の取り調べを視聴し、適否を審査する手続きとなる懸念がある」とし、裁判所内でも議論が活発化した。

 元裁判官の水野智幸法政大法科大学院教授(刑事法)は「自白の信用性判断では供述経緯なども考慮する必要があるが、録画を見ると、裁判員は誘導があるかどうかという印象だけで判断してしまう」と指摘。「本来は不当捜査を抑制するのが可視化の目的で、録画は任意性の補助証拠にとどめるべきだ」とする。

 高裁判決は、録画を用いると「自発的な虚偽供述」が見落とされる危険性があるとも指摘。殺害の日時・場所に関する自白は「虚構の疑いが否定できない」としており、元検事の高井康行弁護士も「録音・録画は訴求力が強いため、自白に任意性だけでなく信用性もあるという心証を形成してしまう危険性を具体的に指摘した、意義ある判決だ」と評価する。その上で「この判決は録音・録画を実質証拠として使うことに強い疑問を呈しており、今後の公判での使い方に影響を与えるだろう」とみる。

最終更新:8/3(金) 22:49
産経新聞

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