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金融緩和 ”出口”は近づいたのか、遠のいたのか

8/3(金) 15:01配信

ニュースソクラ

【日銀の政策変更】専門家二人の解釈分かれる

 日銀は31日の政策委員会で、長期金利の上昇容認などを打ち出した。これについて、前の日銀理事でみずほ総研の門間氏と前の日銀政策委員で野村総研の木内氏に聞いた。


●遠のいた日銀の正常化
 門間前日銀理事(みずほ総研)

ーー長期金利の上昇容認は金融政策の正常化への一歩ですか。

 いや、今回の表明で正常化はより遠のいたとみるべきです。

ーーどういうことですか。

 政策金利のフォワードガイダンスのところに、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」と書いています。その前にはわざわざ、「2019年10月に予定されている消費税率の引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ」と書き込んでいます。これは消費税上げ前には金融政策の正常化には動かないと宣言しているものです。正常化は遠のいているのであり、だから市場も円安に動いているのではないですか。この辺のニュアンスはこの後の総裁会見や近く予定されている雨宮副総裁の講演などでより明らかになっていくと思います。

ーーちょっとがっかりな内容と言えますか。

 やらないよりはいいですね。いまの政策の下で、国債市場は死んでしまっているというような状態だったのが少しは上下に動けるようになるのはいいことです。金融機関も少しはほっとしたということではないですか。副作用を直すという点ではほんの少しはできた。しかし、イールドカーブコントロールの廃止とかマイナス金利を止めるとかにはほど遠いと言っていいいでしょう。

ーーこれは緩和継続のサインであるということなのですね。

 タイトルからしてそうですよ。「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」ですから、緩和を続けるために、長期金利の縛りを少し緩めたということなのです。


●日銀は「正常化」に踏み出した 
 木内前日銀政策委員(野村総研)

ーー日銀が長期金利の上昇を容認したことについてどう評価しますか。

 これは金融政策の正常化と受け止めている。裏返して言えば、金融緩和の長期化に伴う副作用に対する配慮ということができる。

ーーどのくらいの長期金利の上昇を容認することになるのでしょうか。

 現在は0.1%だが、これを0.2%から0.25%程度まで容認するという小幅なものにとどまるだろう。あまり急速な上昇を認めれば、国債価格の急落となって中小金融機関の含み損を急増させかねない。この程度であれば、長短金利の利ザヤ拡大により金融機関の収益力にプラスに働く面もある。マイナス金利の導入により批判の強かった金融機関の経営への影響も考慮しているのだろう。

ーー長期金利をコントロールする「イールドカーブコントロール」は持続可能なのだろうか。

 先週から市場は日銀のコントロールに逆らうように、あるいは日銀の意図を試すように上限を試しに来た。これに対して日銀は3回もの指値オペの実施によってようやく抑え込めたようにみえる。イールドカーブコントロールへの信頼は揺らぎ始めており、役割は終えつつあると言えるのではないか。例えば、海外でドルなど他の通貨の金利が急上昇するようなことがあれば、日銀が意図する水準を超えて長期金利が跳ね上がることもありえないとはいえない。

ーーイールドカーブコントロールの枠組みが崩れていくのか。

 長期金利のコントロールはより難しくなっていく。私は崩壊が始まったのだと思っており、抜本的な改革が必要だ。具体的に誘導目標の年限を現在の10年から5年に短期化することになると思う。もちろんその先には長期金利のコントロールということ自体を止めることも想定しておくべきだろう。国債買い入れ額の減少は今後も順調に進むことになるだろう。

ーーETFについては。

 買い入れの減額が進むのかどうかは、まだわからない。

■聞き手 土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

最終更新:8/3(金) 15:01
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