ここから本文です

中国で過熱する早期教育ブーム 「即効性」求め迷走する保護者たちはカモ?

8/4(土) 12:20配信

東方新報

【東方新報】「大きくなたら音楽、美術、ダンス。小さいうちは注意力と手足の訓練……」

 早期教育教室の営業スタッフがよどみなく説明を聞きながら、二人の子を持つ母親の舒繡さんは分厚い資料を手に、心の中で費用を計算した。

 営業スタッフはさらに畳みかけた。「お子さんを負け組にするわけにはいかないでしょう」

 授業料は1回ごとに200~400元(3300円~6600円)。習い事に週2回行けば、1年で2万元(約33万円)。授業料がもう少し高いクラスだと、1年に3~4万元(約49万円~66万円)かかる。

 舒さんは長女を、「2018年早期教育ブランドランキングトップテン」を自称する早期教育教室に通わせていた。1回の授業料は300元(約4900円)と高額だが、最近になって、無資格業者だと判明した。

 田明さんは、北京の小学校教師だ。教育の専門家として、保護者からの相談も多い。2年前、田さん自身も女児を出産。他人の子どもについてはアドバイスできたのに、自分のことになると分からないことばかりだ。

 田さんは先月、早期教育教室に3万元を支払い、娘に毎日、半日の教育を受けさせることにした。

「あなたは教師なんだから、自分で英語、数学、文字を教えられるでしょ。なぜそんな教室に通わせるの」。同僚にはそう聞かれた。だが田さんは、早期教育から成果を得られるなら、3万元を払う価値があると考えた。「ほかの子どもとの交流を通じて、学べるものもあるだろうから」

 ■「忙しくて子どもに構えない親」と「高望みする親」

 世の中は、早期教育のブームまっただ中だ。早期教育に熱心な保護者は、一般的に二つのタイプに分けられる。

 一つは生活のプレッシャーが大きく、育児に焦る若い親だ。日頃から忙しく、子どもと過ごす時間が少ないので、早期教育機関に子どもを託すパターン。もう一つは、自分の生活力が弱いことを背景に、子どもに多くを望む母親だ。こうした女性たちは、早期教育教室が豊富な経験を持ち、高額なお金と引き換えに自身の焦燥感を解決してくれると信じている。

 記者は、早期教育に子どもを通わせる保護者の数人に話を聞いた。ある親は、「親子クラスに参加することで、子どもがより健康で活発になってほしい」と話した。別の親は、「少しでも早く教育を受けさせることで、成績が上がることを期待する」。「何が得られるか分からないが、周りが皆やってるので」という人もいた。ともあれ皆、何らかの即効性を期待していた。

 冒頭の女性の話に戻ろう。舒さんは早くから早期教育に関心を持ち、約1年をかけて20校以上を比較した。そして、早期教育業界にはさまざまな理念やシステムがあり、費用が高いクラスにはそれなりの理由があるとの結論に至った。

 ところが、長女が通う教室で子どもの事故が起き、保護者に訴えられた際、教室の責任者は裁判でこう主張した。

「我々は教育コンサルタントに過ぎず、学校を運営する資格はない。子どもは保護者が見るもので、早期教育機関は何の責任も負わない」

 ■「優秀な教師」…その中身はあいまい

 多くの保護者は、早期教育に通わせるべきか、何年も考え慎重な態度を持っている。一方で、何を基準にするべきかは本当にはっきりしない。

 価格だけでは質を測ることはできないと気づいた舒さんは、「教師の質」を重視するようになり、教室に問い合わせた。しかし、あいまいな答えしか得られなかった。

「当校の教師の質を疑う必要はありません。教師は皆、本部で研修を受けています。本部から合格証書を受け取っています」。そのほかの資格を持っているのかと尋ねると、「留学経験があり、英語ができる」「心配する必要はないですよ」といった答えが返ってくる。

 舒さんは「早期教育教室は専門性をうたっているが、実際には未就学児や幼稚園児を対象とした教育をきちんと受けている教師は少ない。だから、会社の研修を受けているのだろう」と話した。

 舒さんが訪問した十数校、100人余りの教師の最終学歴は大専(高校卒業後に通う2年生職業訓練学校)卒が多く、四大卒以上の学歴を持っている人は少なかった。「つまり、多くの教師は、教育を専門に学んでおらず、教職の資格を持っているはずもない」

 記者も取材中に、早期教育教室チェーンの教師の求人票をたまたま見かけた。

「標準語が話せて、子ども好き。音楽、ダンス、絵画のうちどれかが得意。勤勉。中専(中卒後に進学する専門学校)卒以上」とあった。

 取材に応じた早期教育教室の多くが、教師採用基準について「学歴より資質と能力重視だ」と答えた。

 早期教育教室の教師として1年間働いた経験がある張慧さんは、「早期教育の特徴は、短期間では効果が分からないことだ。かといって、長期的な効果もデータが多いわけではない。だから、不安を抱える保護者から、高いお金を取ることができる」と語った。さらに、こう明かした。「早期教育業界の90%以上は、カリキュラム開発や管理能力を持たない。フランチャイズに加盟した経営者から加盟料を徴収した後は、ほとんど面倒を見ない」(c)東方新報/AFPBB News

※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。

最終更新:8/4(土) 12:20
東方新報

あなたにおすすめの記事