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負け組に転落する中国の地方都市  高速鉄道誕生10年がもたらしたもの

8/5(日) 10:00配信

J-CASTニュース

 中国初の高速鉄道、北京天津間鉄道が2008年8月1日に開通してから10年がたった。この10年の間に、中国の高速鉄道の総営業距離は2万5000キロにまで増加し、世界の高速鉄道総営業距離の3分の2を占めるまでになった。

 この高速鉄道建設ラッシュにより、中国の中・西部地域の経済情勢にも変化が生まれ、人口・物資・資金の流れは、ひっきりなしに武漢、鄭州、合肥、重慶、成都、西安、昆明などの中西部の中心都市へと集まった。しかし、この10年間をきちんと「清算」してみれば、高速鉄道建設ラッシュによる本当の受益者はその実、大都市・巨大都市であり、中小都市では逆に、産業と人材の流出という現象が顕著になっている。

■6割近い都市で人口が減るサイフォン現象

 著名な経済ライターである呉暁波氏は2018年7月14日、中国版のLINE、微信(WeChat)の個人公式アカウントで発表した文章で、高速鉄道の「サイフォン現象」について紹介している。

 このレポートでは、北京と上海を結ぶ「京滬(けいこ)高速鉄道」と上海、武漢、成都を結ぶ「滬漢蓉高速鉄道」の沿線36の中小都市に対する影響が研究されている。そのうち、京滬高速鉄道は北京・天津・上海という直轄市3市及び河北・山東・安徽・江蘇という4省を経ており、滬漢蓉高速鉄道は上海からスタートし、南京・合肥・武漢・重慶などの都市を経て、終点が成都となっている。

 それによると、高速鉄道は中小都市にとって人口集中を助ける役割を果たしてはおらず、58%の都市の人口が減少している。とくに、山東省の泰安、安徽省の滁州(じょしゅう)、江蘇省の昆山、湖北省の荊州、重慶市の豊都、湖北省の天門などは、人口の流出が最も深刻な都市である。

 ■高速鉄道開通後に成長率は下落

 GDP成長率で見ても、高速鉄道開通後、京滬高速鉄道沿線の50%の都市、滬漢蓉高速鉄道沿線の60%の都市は、GDP成長率が所属する省に比べ減少しており、全省平均を下回っている。

 さらに注目すべきことに、江蘇省の昆山、安徽省の全椒及び六安、湖北省の巴東などの都市では、高速鉄道開通以前の成長率は全省平均よりも高いレベルにあったが、開通後に全省平均よりも低くなってしまっている。

 財政収入が全省財政総収入に占める割合も、京滬高速鉄道沿線の50%の都市で減少がみられ、滬漢蓉高速鉄道沿線では70%を超える都市で減少している。

 住民の可処分所得に至っては、滬漢蓉高速鉄道沿線の80%を超える都市で減少がみられ、中でも重慶の合川区・潼南県の減少が最も際立っていて、それぞれ35%、20%前後の減少となっている。

 歴史に目を向ければ、こうした現象は、実は不思議でもなんでもない。

 50年余り前、日本初の高速鉄道である東海道新幹線が開通したとき、大阪と新幹線沿線の小都市は、「今後は東京の人口・物資・資金の流れを自分たちの都市に引き寄せることができる」と小躍りして喜んだものだ。しかし、結果は多くの沿線都市にとって大いに失望させられるものだった。中小都市のみならず、大阪ですら東京の「サイフォン現象」に太刀打ちできなかったのだ。1970年代初めから、東京都市圏の人口が急激に増え、一方で大阪都市圏の人口はかえって減少することになった。

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最終更新:8/5(日) 10:00
J-CASTニュース