ここから本文です

<北朝鮮>大密輸の現場を行く 国家機関がバスから鉱物まで大っぴらに 中国政府は黙認(図画4点)

8/5(日) 15:24配信

アジアプレス・ネットワーク

◆公然の大密輸

「税関を通らないだけで、あらゆるものが行き交っている。こんなに大っぴらで大々的な密輸は初めて見た」

【写真特集】映像に記録された少女たちの受難 市場さまよい性被害も多発(7枚)

中国との密輸現場を調査で訪れた北部・両江道(リャンガンド)の取材協力者は、驚きを隠さない。密輸が集中して行われているのは、国境の川・鴨緑江の上流。国際連絡橋で公式貿易が行われている恵山(ヘサン)市から少し下った場所だ。

「鴨緑江岸に昼間に車が集まってきて待機し、夕方から明け方までずっと往来している。目立つのは中国から入ってくるバス、トラックなどの運送用車両だ。何十台も渡ってくる。一緒に電子製品や衣類も入ってきている。鉱物や木材などが中国に出されている」と取材協力者は言う。

昨年12月に国連安保理で採択された「制裁2379号」によって、北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出は全面禁止されている。
「密輸された車両は、平城(ピョンソン)市、南浦(ナンポ)市、清津(チョンジン)市などで転売されるそうだ。なぜだかわからないが、乗用車は白と銀色はいいが黒色はだめなのだそうだ」という。

◆6月の対中輸出は前年比92%減の大打撃

一方、朝中間の公式貿易は冷え切ったままだ。中国政府はことあるごとに「国連の経済制裁を完全に履行している」と強調する。7月後半に中国税関当局が発表した6月の通関速報では、北朝鮮の対中輸出は1296.5万ドルに留まり、前年同月比で92%も減少した。輸入は2億0419.3万ドルで同37.5%減、輸出入合計では2億1715.8万ドルで同55.5%減だ。

国境密輸が盛行しているのは、中国当局の黙認なくしてはあり得ない。中国当局は、脱北と密輸を防ぐために有刺鉄線が張り巡らせるなど警備体制を強化し、今年4月頃までは検問と巡回を頻繁にして密輸は壊滅状態だった。それが、5月7日に金正恩氏が二度目の訪中をしてから、密輸が目に見えて活発になった。貿易統計には現れない実質的な「制裁緩和」が始まっていると見てよいだろう。

◆密輸の主体は国家機関

北朝鮮側はどうか? 取材協力者たちの調査によれば、密輸は個人が小規模にやっているのではなく、三池淵、天池、連勝、綾羅などの権力機関傘下の貿易会社が行っており、「密輸を主導しているのは国家機関だ」と断言する。密輸は国境警備隊や保安署(警察)の庇護のもとに行われている。

「特定の貿易会社が密輸を独占してきたが、道の貿易局が、中国に金を支払う能力がある会社は参加してよいとお墨付きを与えたため、トンジュ(新興成金)たちが貿易会社の名前を借りて堂々と密輸に参加するようになった」という。 (カン・ジウォン/石丸次郎)

クリックで拡大 鴨緑江沿いに中国公安当局が立てた看板。密輸、麻薬売買禁止とある。2017年7月撮影石丸次郎