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【岡山から伝えたい】「水が来るぞ!」叫びながら自宅へ 真備であの日何が、濁流の証言

8/6(月) 14:01配信

山陽新聞デジタル

 200人以上の死者が出る「平成最悪」の水害となった西日本豪雨。被災地の地元メディアである山陽新聞が被害の実態を伝える。記録的な雨量で岡山県内各地に深い爪痕を残した西日本豪雨は、最初に大雨特別警報が発令されてから、6日で1カ月を迎えた。4河川8カ所の堤防が決壊し、甚大な浸水被害を受けた倉敷市真備町地区では、生活再建に向けた復旧が少しずつ進む一方、詳しい浸水域の拡大状況や堤防決壊のメカニズムは判然とせず、大規模災害に対する備えのためにも実像をあぶり出す作業が急がれる。

 被災した住民たちへの取材で、未曽有の災害の実態に迫る数々の証言を得た。地区内を東西に流れる小田川の水位が上昇し、支流の水が流れ込みにくくなって逆流する「バックウオーター現象」の目撃情報が複数あったほか、倉敷市が避難指示を出す1時間以上前に、少なくとも支流2カ所の堤防が決壊していた可能性が高いことも判明した。

 倉敷市北西部に位置し、国道486号や井原線が貫く倉敷、総社市のベッドタウンとして約2万2千人が暮らす。タケノコ産地としても知られる真備町地区は、豪雨と堤防決壊に伴う濁流に全域の3割に当たる約1200ヘクタールがのみ込まれ、死者は51人、被災家屋は推計で4600戸に上った。

 浸水域はどのように広がり、その時、住民たちは何を目にし、どう行動したのか。なぜ多くの命が奪われたのか―。現地で繰り広げられた救助活動、災害に対する日頃の備えの検証を含め、証言を基にリポートする。

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 「水が来るぞ!」。降り続く雨の中、声の限りに叫びながら30メートルほど離れた自宅へと駆けだしたのを覚えている。7月6日午後11時半すぎ、会社員須増国生さん(57)=倉敷市真備町箭田=は小田川に北方向から注ぐ高馬川の西岸にいた。水位が気掛かりだった。

 不安は当たった。

 小田川から押し戻されているのか、水が上流の方へ向かっている。そう思うや否や、堤防を越えた水はのり面の土を削るようにして宅地に向かって流れ出した。自宅で避難所生活の支度を急いで整え、玄関を出ると言葉を失った。押し寄せる濁流に腰まで漬かった。

 高さ1・3メートルの門柱の上に逃げたが、すぐにのまれた。庭の松に何とかしがみつき、助けを待った。消防隊員に救助されるまで約30分。「生きた心地がしなかった」と振り返る。

 高馬川は幅5メートル程度。西岸に続き、向かいの東岸堤防も決壊が確認された。いずれも小田川との合流部付近だった。小田川の水位が上がり、水が流れにくくなって逆流する「バックウオーター現象」が支流で発生して堤防を破断させた可能性が高いと、専門家は指摘している。

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