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カタログだって“半端ない” センチュリーに息づく「和」

8/10(金) 7:30配信

SankeiBiz

 御料車を源流とするセンチュリーは、カタログからして和の伝統技法で満たされている。トヨタセンチュリーのフルモデルチェンジは21年ぶりだという。初代が誕生したのが1967年。新型は三代目となる。(レーシングドライバー/自動車評論家 木下隆之)

◆なんと55ページのハードカバー!

 初代が生まれた1960年代は、日本の自動車産業が日進月歩の勢いを見せており、日々完成度を高めていた時期と重なり、高級セダン誕生が期待され始めていた。その期待に応え、御料車(天皇や皇族が乗る車)の開発が始まった。日産自動車からはプリンスロイヤル(ベースはプレジデント)が誕生、トヨタ自動車はセンチュリーロイヤルをリリースした。

 一方センチュリーは、御料車としてだけでなく民間にも愛されることを目的とした。それは成功し、大会社の役員や海外からの要人をエスコートする日本を代表する高級車としてその位置を確立していく。最近ではレクサスLSがその役割を担うことが多くなったが、やはり日本を代表するショーファードリブンとしての地位はセンチュリーで揺るぎない。

 そんなセンチュリーゆえに、カタログからして豪華絢爛である。硬質なハードカバーで装丁されており、総ページ55に及ぶ大作だ。おそらく販売店に行ったからといって、「はいどうぞ」と頂ける代物ではないと思う。

◆日本の伝統技術を余すことなく

 ページをめくってみると、さらに厳かな誌面展開に驚かされる。センチュリーがいかに日本的であり高級車であらんと開発されているかが上質な写真と丁寧な解説によって綴られているのだが、日本の伝統技術が余すことなくそそがれていることが伝わってくると同時に、その説明からは古風な漢字が目に飛び込んでくる。

 車内空間は「寛(くつろぎ)」がテーマであり、オーディオは「愉(たのしむ)」ことを追求した。

 コントロールパネル類は「賢」のごとく様々な操作が可能で、乗り心地は「静」。ボディは「護」。アーマー仕様のごとく要人を護るのである。サスペンションは「滑」。パワートレーンはもちろん「進」だ。といった具合である。

 さらに詳細に、伝統技能の数々が紹介されている。

 エンブレムが「鳳凰」をモチーフにしているそうだ。鳳凰とは伝統の瑞鳥(ずいちょう。めでたいことが起こる前兆とされる鳥)であり、1967年の工匠が腕を揮った手彫りの金型を、新たな江戸彫金の流れをくむ工匠が鏨(たがね)と槌(つち)に魂を込めて彫り上げた金型…、だそうである。

◆まるで博物館めぐりの気分?

 ボディのプレスラインは、無駄な凹凸を嫌い、シンプルかつ力強い面構成になっている。それを几帳面と呼ぶ。几帳面とは、平安時代の屏障具(へいしょうぐ)の柱にあしらわれた面処理の技法。精緻を極めた独特の面形状は、ボディに高い格調を与えている…、だそうなのだ。

 フロントグリルや時計の文字盤などにあしらわれた文様は「七宝(しっぽう)文様」というらしい。

 七宝文様とは、無限に繋がる輪によって円満や財産、子孫繁栄などをあらわす伝統文様。紗綾(さや)形崩しは、卍(まんじ)を組み合わせた端正で品格のある柄が、貴族や武家に好まれていた。このふたつの吉祥柄を…、である。

 なんだか重要文化財の観戦ツアーに紛れ込んで学芸員の案内を耳にしているかのようである。あるいはキュレーターに付き添われて展覧会を観て回っているようである。

◆“帰国子女”レクサスとの違い

 カタログにつきもののカラーバリエーションの紹介ページもけして浮き足立ってはいない。

 漆黒のエターナルブラック、つまり黒塗りセンチュリーの典型的な黒は「神威(かむい)」と命名されている。「神の威光」。アイヌ語で神格を持つ高位の霊的存在だという。ブルー系の紺は「摩周(ましゅう)」、深いレッドマイカは「飛鳥(あすか)」、シルバーメタリックは「精華(せいか)」である。

 これがレクサスとなると、いわば“帰国子女”だからどこかバタ臭い。カラーバリエーションの紹介もロイヤルマッドブラックだとか、イタリアンブルーサンシャインになっていたかもしれない。

 だがセンチュリーのそれには、歯の浮くような文言は見当たらないのである。

 御料車をルーツに持つセンチュリーは、カタログからして和の伝統が脈々と受け継がれているのだ。

最終更新:8/10(金) 14:03
SankeiBiz