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「俺の考えた最強のデータ基盤」は使われない

8/9(木) 5:10配信

@IT

 「使われるデータ基盤」を構築するために筆者が取り組んだ試行錯誤を紹介する本連載『開発現場に“データ文化”を浸透させる「データ基盤」大解剖』。前回はデータパイプラインを支える基盤システム設計について解説しました。第3回となる今回は開発プロセスについてお伝えします。

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 なお、技術要素としてはPythonやBigQuery、ツールとしてGitHubやJIRAを扱いますが、他の手段でも代替可能な内容です。細部にとらわれずにご自身の担当する業務や組織に当てはめながら読んでいただければと思います。

「俺の考えた最強のデータ基盤」は使われない

 データ基盤の構築は苦い失敗の経験から始まりました。

 最初の取り組みとしては、オフィスの大型モニターにダッシュボードを投影するところから着手しました。メンバーが毎日のKPIをすらすら言えるようになるかもしれません。メンバーが異常値に気付いて迅速に動けるようになるかもしれません。全員が同じデータを見て、データを基に行動する。そんなデータ駆動組織への進化に期待は高まりました。

 しかし残念ながら、現実はそう甘くありません。たったの1週間で、誰もダッシュボードを見なくなりました。

 必要なのは何だったのでしょうか。基盤構築の長期ロードマップでしょうか。細部まで検討を詰めた企画書でしょうか。圧倒的な予算でしょうか。大規模な開発チームでしょうか。1年間の開発プロジェクトでしょうか。

 仮に、これら全てを用意しても結果は同じだったでしょう。「思っていたのと違った」「良さそうだけど結局使わなかった」――1年後には、そういった声が挙がるはずです。

 結局のところ「俺の考えた最強のデータ基盤」は誰にも使われないのです。

「現場が使う最小のデータ基盤」を積み重ねた

 そこで筆者は「現場が使う最小のデータ基盤」を積み重ねることにしました。ヒアリングを重ねると、業務イメージが見えてきました。

 例えばある部署では、毎朝SlackにKPIのグラフを手動で流しているとのことでした。事務スタッフがデータを出力し、複数のExcelシートに貼り付け、グラフをファイルに出力し、Slackにアップロードする。ビジネス成長に伴って業務が次々と増えていく環境において、工数面の負担は軽視できません。そのレポートを基に広告配信の意思決定を行うため、手動作業のミスで数字に誤りがあるとビジネスへの影響が生じます。

 そういった事情を知って、簡単なスクリプトを組むことで、デーリーレポートを自動化しました。たったそれだけでビジネス的には大きな改善の一歩となりました。すでに使っているのだから、これまでと同様に確実にデータを活用してもらうことができます。

 現場が必要とするデータを軸にして、集計や描画の処理を構築して、パイプラインに取り込みました。このようにして、少しずつ既存業務を置き換えながらデータ基盤を構築しました。

 データ活用の種は現場にあります。業務フローを改善したり、顧客体験を向上させたりするためにデータを活用するのです。何となくデータを集めたり出力したりすればいいわけではありません。業務を実際に担っているのも、顧客と実際に向き合っているのも、現場です。普通のシステム開発と同じで、現場の業務分析から始めることが必要になります。

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最終更新:8/9(木) 5:10
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