ここから本文です

知事選へ急加速 与党、枠組み維持焦点 野党、「弔い合戦」警戒

8/10(金) 7:04配信

琉球新報

 沖縄県の翁長雄志知事の急逝で県内政界は悲しみや衝撃に包まれる一方、11月から9月に前倒しになる知事選に向け、県政与党は、翁長氏の後任候補の人選を急ぐ。翁長知事が掲げた保革双方の支持を集める「オール沖縄」の枠組みが維持できる候補を選べるかが焦点となる。一方、県民の反発が強い辺野古新基地建設を巡り政府と激しく対立していた翁長知事の急逝を背景に、県政野党の自民党や政府は知事選で「弔い合戦」の空気が広がることを警戒する。


 前回知事選で「辺野古新基地建設阻止」の旗の下、それぞれの政党の立場を抑え「腹八分」で結集することで広い支持を得た翁長知事。仮に健康問題で2期目出馬を見送る場合でも、同じ理念を共有する後継者を自ら指名するかどうかが一つの注目点だった。県の謝花喜一郎副知事と池田竹州知事公室長は4日、知事が入院する病院を訪れた。翁長知事は「何かあったらしっかり頼む」と述べ、抗がん剤治療の影響などで自身の判断能力が衰えた場合に備え、副知事を職務代理者として置く方針を確認した。

■後継指名なし■

 この日、知事にはもう一つの作業があった。自身と近い関係の人に「肉声のメッセージ」を届けるための録音を予定していた。だが体調が思わしくなく、録音を翌日に延期した。その後容体は悪化し続けた。

 7月末の再入院後、翁長知事は最悪の事態を念頭に置いたような対応を取った。だが後継者を指名することはなかった。

 知事が息を引き取った8日夜。入院先の病院で開いた記者会見で、知事が生前に後継指名したかと問われた職務代理者の謝花副知事は「それは聞いていない」と説明した。

 与党会派は9月に控える知事選を目前に、まず候補者を決めるのが課題だ。ただ過去に自民県連幹事長も務めた翁長知事が構築した「オール沖縄」体制は、従来の革新政党だけでなく中道や保守の支持層も合流した背景がある。与党最大会派の社民・社大・結の照屋大河会派長は「翁長知事が亡くなってしまった今、政党や労組など、まとまるところはあるが、そうじゃないところも抱えている。そこは丁寧に意見を聞かないといけない」と述べ、オール沖縄体制の維持の難しさを語る。

 一方、党派に関係なく、多くの議員が知事の急逝によって県内政局の風向きが変わったとみている。

 与党幹部の一人は「志半ばで倒れた翁長知事の弔い合戦にならないわけがない」と語り、知事選では辺野古埋め立て承認の「撤回」が最大の争点となるとの見通しを示す。

■基地への関心■

 一方の野党自民は、知事選の事実上の選挙戦が辺野古への土砂投入や県による埋め立て承認「撤回」の時期と重なることから、基地問題への有権者の関心が高まった前回知事選の再現を警戒する。

 「今度の戦いは翁長知事の後継者を選ぶか仲井真弘多前知事の後継者を選ぶかだ」。与党幹部の一人は今回の知事選を「4年前の再来」だと形容する。念頭には、佐喜真淳宜野湾市長が選考委員会からの出馬要請を受諾した際、仲井真氏が隣に座っていたことがある。同幹部は「佐喜真氏は結局、知事として辺野古埋め立てを認めた仲井真氏の後継だ」と強調する。

 9月の知事選と自民党総裁選の日程が近いことを懸念する声も聞こえる。政権与党の自民はこれまで、名護市長選など県内の首長選挙に政権幹部や知名度のある国会議員を大量投入するなど、国政選挙並みの支援態勢を築いてきた。だが与党幹部の一人は、自民は今回は総裁選にエネルギーをそがれ、沖縄に対する応援態勢が弱くなるとみる。

 「弔い合戦」を警戒する自民県連関係者の一人は「知事選の前倒しで埋め立て承認『撤回』が争点になることは避けられない」と見通した上で「県連として早急に戦略を練る必要がある」と述べた。別の関係者は「こんなに早い知事の逝去は県連にとって想定外だった」と語った。

 自民党は二階俊博幹事長が急きょ来県し遺族を弔問するなど、辺野古問題を巡る県民感情の高まりを沈めるような動きを見せた。10日には辺野古新基地建設を巡り知事と直接対立し、「犬猿の仲」とされた菅義偉官房長官をはじめ、福井照沖縄担当相ら政権幹部も来県し、通夜に参列する予定だ。
 (島袋良太、吉田健一)

琉球新報社

最終更新:8/12(日) 19:23
琉球新報