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東京医大の「女子受験者差別」 社会進出阻む日本の雇用慣行を断ち切れ

8/10(金) 14:45配信

SankeiBiz

 文部科学省の官僚による東京医科大学の裏口入学事件は、今月に入り入学試験で女子受験者を一律減点していたことが報道されると、一段と大きく扱われることになった。本来公平であるべき入試で、今や先進国では珍しい性差別が堂々とまかり通っていたからである。一方、大学関係者からは女性医師を増やしたくない意向が示された。肉体的負荷の重い診療科を避けたり、出産育児で離職したり、短時間勤務を希望したりするケースがあるからだ。同時に勤務医の苛酷な労働実態も明らかにされた。(作家・板谷敏彦)

 しかし、医師に占める女性比率の国際比較をみると、先進国の中で飛び抜けて低いわが国の現状はわれわれが世界の中で異質であることを示している。これは医者に限らず裁判官、高級官僚、会社経営者らの分野でも同様である。世界経済フォーラムが発表している各国における男女の社会進出の格差を測る2017年度のジェンダー・ギャップ指数で、わが国は144カ国中111位と最低レベルである。

 海外主要メディアではこうした観点から、不正入試の是非よりも、この事件はジェンダー(性別による格差)問題として大きく報道され、日本独自の雇用慣行が、家事や育児を期待される女性が仕事と両立できない状況を生んでいると指摘している。

 在日フランス大使館はツイッターで、フランスの大学医学部に占める女子学生の割合が16年に64.1%に達したことを紹介して、日本の若者に「皆さん、ぜひフランスに留学に来てください」と呼び掛けた。ちなみに日本の女子学生の割合は3分の1である。

 また、不正入試問題と前後して、ニュージーランドのアーダーン首相(38)が6週間の産休から職場に復帰したニュースが流れていたのは、まさに日本の女性の社会進出の遅れを象徴的に示していた。

 人口停滞を経験した欧州先進国では、労働力不足による経済成長力の減退を女性の社会進出で補ってきた経緯がある。

 古くさい言い方をあえてするならば、他国が男女総動員で戦っているときに、わが国が知的職業の一角を男性に限定していては成長が停滞し、国際競争に勝てないのも道理である。

 各国とも以前は女性の社会進出に日本と大差なく、女性比率が増えてきたのは、この半世紀のことである。半世紀のうち、われわれが「失われた30年」と呼ぶ期間があったことも重要な要因でもある。

 ジェンダーや人種、言語、文化を乗り越えた多様性こそが成長の源であると認識される現代社会において、労働力不足を外国人労働力に頼る前に、日本人女性の社会進出に関する国際格差の問題は、一番足元に近い必須の解決事項であろう。

 林芳正文科相は東京医大の不正入試報告を受けて早速、全国の国公私立大学医学部に対して不正の有無の調査を命じたが、安倍晋三政権はこうしたジェンダー問題に対して「全ての女性が輝く社会づくり本部」を設置して、手始めに国家公務員の女性の活躍とワークライフバランスの推進に取り組んでいるところである。

 今回の問題を、単なる大学入試問題に矮小(わいしょう)化せず、わが国のジェンダー問題、またそれの根本にある雇用慣行や経済成長を阻害する悪しき慣習などを整理する機会になればと願う次第である。

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【プロフィル】板谷敏彦

 いたや・としひこ 作家。関西学院大経卒。内外大手証券会社を経て日本版ヘッジファンドを創設。兵庫県出身。著書は『日露戦争、資金調達の戦い』(新潮社)『日本人のための第一次世界大戦史』(毎日新聞出版)など。62歳。

最終更新:8/10(金) 14:45
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