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【平成家族】疲弊する保育士「自分の子を預けたくない」 急増するニーズで負担増、保育でなく流れ作業に「心苦しい」

8/10(金) 12:13配信

朝日新聞デジタル

【アーカイブ:内容は2018年2月28日の初出時点のものです】

 核家族化がいっそう進む平成時代。地域の保育園は働く親と子どもだけでなく、慣れない育児に向き合うすべての家族の心強い存在です。しかし、その担い手である保育士たちは、急増するニーズの中で疲弊しています。理想と現実のギャップに悩んだ末、現場を離れる決断をした人もいます。(朝日新聞文化くらし報道部記者・田渕紫織)

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時給に換算すると最低賃金以下

 埼玉県志木市の女性保育士(31)は、昨年9月に長男を出産して現在は育児休業中。今年9月には、勤めている認可外保育園で復職する予定だ。

 復職に向け、保活を始めようとしている。しかし、葛藤もある。

 「果たして、自分の子を預けたいと思える保育園ってあるの?」

 都心から少し離れた志木市も駅前の再開発で大規模マンションが建ち、ここ数年で保育園に入る競争は激しくなっている。市内に勤める保育士は入園選考で優遇される制度がある。入りやすいかもしれないが、「自分の子を預けたくない」と思う理由とは――。

 ネットメディアで4年間、広告営業をした後、保育士の資格試験を受け、東京都内の認可保育園に転職した。「前職も『24時間働けますか』の体育会的世界だったけど、保育園は次元の違う重圧と恒常的な忙しさで、すりきれるような毎日だった」という。

 シフト上は、早ければ午前6時45分出勤、午後4時15分退勤。だがその後、午後9時ごろまでサービス残業が普通だった。タイムカードはなかったが、時給に換算をすると最低賃金を割った。

「預けたいと思える保育園ってあるの?」

 職員は新卒が中心。1年目から0歳児クラスの担任になり、6人の子どもを20歳の新人保育士と2人で受け持った。周りの新設保育園と同じように園庭はなく、散歩先では他園の園児と入り乱れ、見失わないよう、けがをしないように気遣うことで精いっぱい。保育士が1人でも休むと、晴れていても散歩に連れて行けなくなる。

 子どもの記録や園便りを書くことやミーティングの大半は、子どもが帰った後のサービス残業。持ち帰ることもある。加えて、月1回のペースで行事があった。生活発表会の桃太郎劇では、子どもが着る服を家に持ち帰って未明まで縫った。

 「このままだと、この子たちも自分も共倒れになる」と感じ、1年で正職員から非常勤に移った。2年後には、新規開園した系列の認可保育園に。駅ビルの中にあり、保護者からは人気で高倍率の保育園だったが、厳しい職場環境は変わらず、2年もしないで辞めた。

 今回、子どもを預けようという側に回る。「質が低下する現場をよく知るだけに、保育士は自分の子を長時間預けるのは望まないと思う」。早く迎えに行きたくても、復職してシフト勤務に入ると難しい。保育士が出産後、現場に戻らない気持ちが今ではわかる。

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