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みこしで更生 伝統つなぐ 富山刑務所の成瀬さん 来春退官

8/11(土) 5:00配信

北日本新聞

 俳優の故高倉健さんが主演した映画「あなたへ」で、高倉さん演じる指導技官のモデルとなった富山刑務所の成瀬大一さん(59)=富山市=が来年3月で定年退官する。受刑者の刑務作業の一環として、全国的にも珍しいみこしの制作を担当しており、今後は後進の育成に力を入れるという。 (社会部・堀佑太)

 成瀬さんは、富山商業高校を卒業後、石川県の一般企業を経て、1978年に19歳で富山刑務所の刑務官に転職。その後、法務技官になり、みこし制作の担当になった。

 富山刑務所のみこし作りは、地元住民の依頼を受けて76年に始まった。現在は収容する330人のうち、約10人が担当。木材の削りだしから、組み立てや飾り付けまで全て手作業で行い、故障しにくい頑丈な造りが評判という。みこしはサイズや材料によって7種類あり、1基当たり60万~615万円で受注している。

 「あなたへ」の撮影では、高倉さんの演技に間近で触れた。「オーラがすごい。話し掛けられる雰囲気ではなかった」と振り返り、自身がモデルになったことに「自分の仕事を評価してくれたようでうれしかった」と言う。高倉さんが受刑者にみこし作りを指導する場面では、成瀬さんと受刑者のやりとりを参考にしていたという。

 みこし作りは、刑務所ならではの苦労も多かった。受刑者が規律違反をすれば、グループを外れるため作業が滞る。祭りの納期に間に合わせるため、一人で夜遅くまで工場に残ることもあった。富山刑務所では2~3年で出所する受刑者も多いため「作り方を覚えたころにいなくなる」と、技術の伝承にも悩まされた。

 ただ、みこしを買った人からの感謝の言葉が原動力になった。県内外の町内会からは毎年、感謝の手紙が届く。成瀬さんはこれまで約1300基を制作し「町の活性化に役立てようと、『自分がやらなきゃ誰がやる』と、使命感を持ってきた」と話す。

 来春からは、昨年4月に着任した作業専門官の熊崎雅文さん(31)=同市=がみこし作りを受け継ぐ。「長年続いてきた伝統を絶やさぬよう頑張りたい」と意気込んでおり、成瀬さんも「若さを生かして、新しいものを取り入れながら続けてほしい」と期待を寄せている。

北日本新聞社

最終更新:8/11(土) 5:00
北日本新聞