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これまでの反省を活かした、新しいF1日本GPの形。答えは”カッコイイF1”:鈴鹿サーキット社長インタビュー

8/12(日) 13:49配信

motorsport.com 日本版

 来季以降のF1日本GP開催契約について、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)と議論を重ねている鈴鹿サーキット。まだ現時点では契約締結には至っていないものの、延長の可能性は「6割以上」と鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの山下晋社長が語ったのは、既報の通りである。

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 当初は「大変厳しい」と開催延長について語っていた山下社長だが、それが好転……現在では、鈴鹿サーキット側もFOM側も非常に前向きになっているという。そうなった理由、それは鈴鹿サーキットが観客増員を目指す上で、FOM側の協力が得られるようになったからである。旧体制のFOMは、観客動員増のために鈴鹿が様々な施策を打ち出しても、なかなか首を縦に振らなかった。しかし今では、積極的な協力が得られるようになったという。

 では鈴鹿サーキットは、今後日本GPを盛り上げるためにどんなことを考えているのだろうか? これについて山下社長は、次のように説明する。

「来年すぐというわけではありませんが、映像メディアの活用について考えています」

 そう山下社長は語る。

「様々な映像メディアの皆さまに、取り上げてもらえるような形にしたいと思っています。地上波がなきゃダメだということではありません。でも日本GPの魅力が伝わっていくような、メディアの皆さまが取り上げたくなるような形になっていないと、とてもじゃないですが、一般の方々が『面白そうだね』と思ってくれるような状況にはなりません」

 旧体制のFOM下では、映像の管理は厳格に管理されていた。そのため、放映権を持つ放送局以外では、映像コンテンツを扱うのが非常に厳しく、さらに独自の映像コンテンツを取材することについても非常に難しかった。しかし、アメリカのメディア企業である”リバティ・メディア”がオーナーになったことで、この流れが変わることを、山下社長は期待しているのだ。

「彼らもメディア企業ですからね。その方策をしっかり考えてくれると思います。それが実現するのは、2020年以降になると思いますが……」

「日本GPの期間中には、実にいろんなことをサーキット内でやっているんですよ。でも、それはほとんど紹介できないでいる。そして、それは鈴鹿サーキット側の問題ではないということで、今まで来てしまいました。その反省を踏まえて、我々がF1を盛り上げたいと思います」

 かつて日本で”F1ブーム”と呼ばれた時代、鈴鹿サーキットには毎年10数万人のファンが大挙詰めかけていた。しかしそれは鈴鹿サーキットの努力の結果ではなく、様々な状況が後押ししてくれたからだと、山下社長は回顧する。

「以前は、我々が盛り上げたから、日本GPに多くのお客様がいらっしゃったということではありませんでした。ホンダのF1参戦と日本GPの開催が同じタイミングになり、そこにアイルトン・セナという類い稀なドライバーがいて、そのセナがホンダのマシンに乗って活躍した……その流れに乗っただけという、最初の数年間でした」

「観客数が落ち込み始めて焦り出した時には、もう手遅れの状態でした。そして、そのまま今まで来てしまった。その後、観客数が増えた年もありました。でもそれは、佐藤琢磨選手が頑張ったからで、我々が仕掛けたわけじゃない。2006年のとりあえず最後の日本GPの時も、ミハエル・シューマッハーの引退と被っただけでしたから……我々が主体的に取り組んでお客様を増やすことができたかといえば、そうとは言えません」

 1987年から日本GPを開催してきた鈴鹿サーキット。しかし、2007年と2008年は、その舞台が富士スピードウェイに移ることとなった。その間に鈴鹿は施設を改修し、2009年から再び日本GP開催を取り戻すことになった。山下社長曰く、その復活開催初年度となる2009年は、当初は以前と同じだけの数の観客数を見込んでいたという。

「富士から戻ってきた1年目、当初は以前と同じ数のお客様が戻ってくると思っていました。全席指定、15万枚完売を目指していたんです。しかし、とてもそれどころではなかった」

「富士で日本GPが2年間開催されたから、お客様の数が減ったわけではありません。我々が、お客様に魅力ある商品にできるかどうかだと思います。実際に起きたことは、厳しかったですけどね」

 以前の日本GPの際には、最寄りの白子駅や鈴鹿サーキット稲生駅で鉄道を降りただけで、いやその列車に乗っただけで、高揚感があった。しかし今では、その雰囲気が希薄になったようにも感じる。

「過去に比べて、周辺の駅も含め、やっていることは多いんですよ。人口密度が違うだけです」

 そう山下社長は語る。

「過去に比べると、やっていることは遥かに多いです。でも力足らずで、お客様に認識していただけるほど、やれてはいません。ただ、やはりお客様が多いほど、テンションが上がると思います。もちろん、程度を超えるわけにはいきませんけどね」

 ただ既報の通り、今年のチケットの売り上げ数は前年から増加傾向にあるという。

「これまでは賑わいという要素は確かに落ちていました。でも今年は、昨年よりは少し賑わっている日本GPをお見せできそうです」

「少なくとも環境は整えてきました。駅までのアクセスも便利になりましたし、お客様の観戦環境だけでなく、楽しんでいただける要素もたくさん用意できそうです」

 今年の日本GPには、「FUN」と名付けられた様々な企画を用意。来場したF1ファンを飽きさせない要素が、これでもかというほど用意されている。

「観戦チケットも、30回の記念大会ということで、プラスチック製のアニバーサリーチケットにしました。ミカ・ハッキネン氏をはじめ様々なゲストや伝説的なマシンも来場します。こういうことで我々の想いをお客様に伝え、今年どれだけご来場いただけるか……それを楽しみにしています」

 日本GPを、再び以前のように賑わうイベントにすべく、様々な施策を打つ鈴鹿サーキット。新生FOMも、その想いを後押ししている。

 山下社長は、FOMが語った方針を、最後に短い言葉で語ってくれた。

「F1って、カッコイイことが必要じゃないですか? FOMも、”カッコイイF1”を訴求したいと、そう言っています」

田中健一

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