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天国の仲間・吉川さんにささげる1勝/2日前死去、夏の甲子園で光星奮起

8/12(日) 11:56配信

Web東奥

 仲間にささげる1勝だった。第100回全国高校野球選手権で八学光星が初戦を突破した11日の2日前、同校野球部の吉川智行さん(2年)=東京都出身=が1年近くに及ぶ闘病の末、生涯を閉じた。教諭で野球部長の小坂貫志さん(40)は甲子園のベンチに持ち込んだバッグに、吉川さんの枕元にいつもあったお守りをしのばせた。決勝点は同じ投手として吉川さんをかわいがっていた中村優惟選手(3年)の一打から生まれた。

 物静かな性格だったが、野球への情熱は強かった。厳しい練習の後に待ち受ける全体ランニングで、先輩に必死に食らいつこうとするひたむきな姿が、小坂さんの目に焼き付いている。

 「ボールが二つに見える」。2017年秋、1年生の吉川さんが異変を訴えた。病院を受診すると、脳に腫瘍が見つかった。

 入院した吉川さんへの面会はかなわず、小坂さんが会えたのは今年3月。吉川さんが光星の関東遠征に足を運んでくれた時だった。

 吉川さんは車いすに座り、離れた場所から練習試合の様子を見た。声があまり出ないようだったが、受け答えはできた。「仲間が甲子園に出ている姿を見たい」と言っていると、小坂さんは家族づてに聞いた。

 マネジャーたちは選手たち一人一人に配るお守りを、吉川さんの分も作っていた。ローマ字で「TOMOYUKI」と刺しゅうした。吉川さんは病室のベッドの枕元に、いつも置いていた。

 光星の甲子園出場が決まり、小坂さんは「テレビの前で応援してくれれば」と思いをはせていた。その矢先、訃報が届いた。初戦2日前の9日。ナインには翌10日の練習前に知らせた。

 4万3千人で埋まった甲子園。地元・兵庫県勢の明石商への応援と手拍子が渦巻く同点の八回、吉川さんを「かわいい後輩」と話す中村選手が登板した。

 延長十回2死一、二塁、中村選手に打席が回ってきた。投手起用で、途中出場の初打席。決して有利な状況とは言えなかった。

 「吉川のためにも頑張らないといけない」。5球目。思い切りバットを振り抜くと打球は三遊間へ。左翼手が送球に手間取っている間に、走者が9点目を踏んだ。

 吉川さんの託した思いが光星ナインを奮い立たせた。「最後の1点は彼が手助けをしてくれたと思っている」。小坂さんはそう信じている。

最終更新:8/12(日) 11:56
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