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西日本豪雨「災害医療の課題は」 被災地支援の医療者に聞く

8/12(日) 12:00配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 200人以上の犠牲者を出した7月の西日本豪雨。猛暑の中での復旧作業は困難を極め、1カ月が過ぎた今も避難生活を送る人たちがいる。近年の大規模災害で、被災後に避難生活のストレスや持病の悪化で死亡する「災害関連死」が注目され、被災後の心身両面での健康管理の重要性が認識された。今回の豪雨災害の被災地で医療支援に当たった静岡県内の医療関係者に、被災地の医療・健康支援の現状や課題を聞いた。

 静岡赤十字病院の救護班は広島県呉市安浦地区で救護所活動や巡回診療を行った。「出発前は情報が無かったが、現地では情報共有されていた」。救急科の青木基樹医師(42)は振り返る。救護班は、避難所の掲示板と、被災者らが発信する情報から、医療介入できていない地域を診療して回った。ライフラインの復旧に加え、地元薬剤師会や開業医の動きも早く、薬剤や医療物資の供給に大きな問題は無かったという。

 救護所を訪れる人たちが訴えた症状の多くは、片付け作業中のけがや砂ぼこりによる目の痛み、慢性疾患など。簡単な処置で済んでも、話をしていると涙を流す人やサイレンの音に敏感になっている人もいた。新潟県中越地震や東日本大震災でも医療活動を行った看護師の鈴木直子さん(47)はこれまでの経験を踏まえて、「症状の程度にかかわらず、誰かに『大丈夫』と言ってもらいたい様子だった」と被災者の心のケアを課題に挙げた。

 県歯科医師会の柳川忠広会長(63)は、災害を見据えた診療体制の強化を指摘する。日本歯科医師会副会長として被災状況を見て回り、被災した歯科医院で、紙のカルテを一枚一枚乾かす様子を目にした。東日本大震災では、歯の治療痕によって5カ月間で約9千の遺体の身元確認が行われたという。南海トラフ地震が発生した場合、死者は県内だけでも約10万5千人と想定されている。各医院が所有する膨大な歯科情報の中から迅速に個人を特定するため、「全国レベルでカルテの電子化や書式の統一を早急に進めなくてはいけない」と訴える。



 ■災害関連死、防ぐ備えを

 復興庁によると、東日本大震災での災害関連死は3月末時点で3676人に上った。直接死を免れても、その後の生活環境のストレスや持病の悪化で命を落とさないために、どんな注意が必要か。

 災害関連死の約4割は車中死とされる。足の静脈に血の塊ができる「エコノミークラス症候群」は長時間足を動かさずにいると起きる。

 避難所では感染症に注意が必要。阪神・淡路大震災では災害関連死の原因の約4割がインフルエンザだった。障害者や高齢者、妊産婦、病弱者らは、一般の避難所に比べてバリアフリー対策などが施された福祉避難所が利用できる。

 災害時の口腔(こうくう)ケアも重要視されてきた。ケアを怠ると細菌が増殖し、全身疾患につながる。気になる箇所は平時に治療し、歯ブラシなどを非常持ち出し品に入れておきたい。

静岡新聞社