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【漢字トリビア】「滝」の成り立ち物語

8/12(日) 11:30配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「滝」。八月十一日は山の日ですが、涼しげな滝の風景は、汗をぬぐいながら山を登る人々へのご褒美です。

「滝」という漢字は、さんずいに「竜」と書きます。
「竜」は、頭に冠の飾りをつけ、うろこをまとった蛇の形をした想像上の動物。
古代中国では、不可思議な力を備えた聖なる存在で、神の意を受けて雨を降らせることもあります。
世界最古の漢字字典「説文解字」には、旧字体の「瀧」という文字を使って「雨(あめ)瀧瀧(ろうろう)たるなり」と記されています。
ここでは雨の降る様子を「滝」だと説明していますが、川の水の流れが速い急流を表すという説もあります。
日本語の「滝」という言葉の語源は「たぎつ」という古語。
水が激しく逆巻きながら流れることを意味し、万葉の時代における「滝」とは、古代中国と同じく川の急流を意味していたようです。
その当時、流れ落ちる滝は「垂れる」「水」と書いて「垂水(たるみ)」と呼びました。
のちに、激しい流れを意味し、水の神でもあった「竜」にさんずいを添えて、「滝」を意味する漢字として使われるようになりました。
一説には、滝の流れる様子が竜の姿に見えるから、ともいわれています。

山頂に立つ達成感だけが、山歩きのよろこびとは限りません。
足元を彩る草花や、岩間をおおいつくす緑の苔。
あるいは、休み休み眺める谷間の渓流や、遠い峰にかかる雄大な雲。
道中の思いがけない出会いが、心身の疲れをほぐしていきます。
そして、清らかな澤をたどって行き着くその先に、忽然と現れる滝。
滝壷を打ちつける激しい水音が、かえってあたりを静けさで包み、滝と自分だけが向き合っているような錯覚におちいります。
やがて、止まっていたときを動かす一陣の風。
からだの中を巡る水さえも司る竜神が、あなたの魂を浄化して、新たな命を吹き込む瞬間です。

ではここで、もう一度「滝」という字を感じてみてください。

白糸の滝、霧降(きりふり)の滝、玉簾(たますだれ)の滝。
滝につけられた名前から、個性豊かな滝の風景がしのばれます。
美しく連なったり、ぼやけてけむったり、上から下へ落ちてゆくはずが、下から上へ、勢いよく上っていくように見えたり……。
そこにふと、竜の姿がたち現れたとしても不思議ではありません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年8月11日(土)放送より)

最終更新:8/12(日) 11:30
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