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【甲子園】慶応の親友2人が意地の連打 九回に奪った1点

8/12(日) 23:46配信

カナロコ by 神奈川新聞

 北神奈川代表の慶応は10年ぶりとなった夏の甲子園で12日、2回戦で高知商(高知)に6―12で敗れ、夏が終わった。序盤からの大量失点で劣勢の展開が続く中、最終回の攻撃では「親友」の2人が連打で意地の1点をもぎ取り、スタンドを沸かせた。

 8点を追う九回裏、敗色は濃厚だった。それでも、先頭の6番奥村拓馬(3年)がライトオーバーの二塁打を放った。

 続く打者に、代打が出された。背番号16の田邊慎之佑(同)にとっての甲子園初打席は、最高の形で回ってきた。

 「奥村は紛れもない親友。あいつが打ってくれたから、俺も絶対打てると思った。絶対に返してやろうと思った」

 2球目をライト前に運んだ。右翼が少しファンブルしたのを見逃さず、二走の奥村が一気にホームへ帰ってきた。結果的には敵失による得点だが、誰がなんと言おうと、それは「2人で奪った1点」だった。

 寡黙な副主将の奥村と、チームでも一、二を争うムードメーカーの田邊。性格は真逆の2人だが、なぜか入学した頃から気があった。キャッチボールもトスバッティングも自主練も、「とにかく2人組でやる練習はいつも一緒でしたね」(奥村)。

 口下手な奥村は、田邊に面と向かって感謝を伝えたことがなかった。本当はずっと思っていた。「田邊は守備はうまいけど出る機会があまりない。でも、自分がこうして試合に出られるのは、あいつのおかげ。誰のための頑張りたいかと聞かれたら、あいつのためにって答えます」

 もちろん、田邊も相棒の力を誰より信じていた。「あいつは地味だし、ヒーローになることは少ない。でも簡単に見えるけど難しいセカンドゴロをちゃんとさばいたり、あいつの何気ない一本がきっかけで勝った試合はたくさんある。陰の立役者です」。三塁コーチャーを務める田邊はいつも、奥村をホームに帰すのが一番うれしい瞬間だった。

 夏は終わってしまった。それでも最後の最後で、最高の思い出ができた。「負けたけど、あいつのヒットでホームに帰れたことは本当に、めちゃくちゃうれしいです」と奥村が言えば、田邊も「また口では何も言ってくれないけど、ベンチではしっかり抱き合って喜びました」と笑う。

 誰が何と言おうと、2人で奪った1点だった。