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監督の指示無視して出場停止…「星野君の二塁打」が憲法的にOKな理由 アメフト問題と合理的なルール

8/25(土) 7:00配信

withnews

 監督がバントのサインを出したのに、それを無視してヒッティングしたところ二塁打に。チームを勝利に導いたが、監督から告げられたのは、出場停止だった――。道徳の教材にも使われている「星野君の二塁打」が、日大アメフト部問題をきっかけに注目されています。組織の一員なら「命令」は絶対に守らなければならないのでしょうか。「憲法」の視点から考えてみると……。(朝日新聞社会部記者・木村司)

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「実は、星野君と似た体験をしました」

 話を聞いたのは、江藤祥平・上智大准教授です。

――憲法のメガネをかけると、星野君の二塁打はどんなふうに見えるのでしょうか。

「いきなり脱線しますが、実は、小学6年のとき星野君と似たような体験をしました。私は大阪で一、二を争うチームの2番打者でした。とある大会で、相手がリード。後攻、二死ランナーなし。打席に立った私に監督から出されたサインは『三振』でした」

「試合終了の制限時間が迫る中、私が早くアウトになれば、次の回にもう一度攻撃できるという状況です。監督は、次の回での逆転を考えたのです。しかし、私は思いきりバットを振りました。結果は、ショートゴロ。その後、チームは逆転勝ちしましたが、この出来事もあって私はいったん野球から身を引くことにしました」

「バントは、ルールとして合理的なもの」

――いきなり、つらい話ですね。そうすると、星野君の二塁打はもちろんOK?

「いいえ、命令や指示に従わない人ばかりではチームは成り立ちません。憲法学の視点からまず考えるのは、野球のバントという指示が、ルールとしてあるいは戦術として定着した合理的なものかどうかです。合理的なものである限りは、監督の指示に従わなければなりません」

「したがって、星野君が理不尽に感じたとしても、やはり監督のサインは守らなくてはいけなかったと考えます。ただし、状況によっては、守らなくてもいい場面があることもたしかです」

「その命令はルールを超えているか」

――指示や命令を守らなくてもいい場面とは

「その指示や命令が、ルール(=合理的なもの)を超えているときです。具体的には、日大アメフト部の問題が当てはまるかもしれませんが、ルールを超えて監督に対する精神的な忠誠が求められているような場合や、監督や部の伝統がルール以上の絶対的な存在となっているようなケースです」

「気持ちや精神力で勝つということが、日本の体育会やスポーツの伝統では強調されがちです。精神論としてはわかるのですが、ルールや合理的なもの以上の何かに訴えかけている面では、かなり危険をはらんできます」

「合理性を超えた精神力を要求することが悲惨な結果を招いているケースは、今の日本社会に随所にみられます。たとえば、次々と明らかになる過労死の現場は、その典型でしょう。そんな会社は辞めてしまえばいいのに、と端から見れば思うかも知れませんが、渦中にいると、不合理なことになかなか気づけないものでもあるのです」

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最終更新:8/25(土) 7:00
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