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<大阪北部地震>露呈したモノレールとインフラの弱点

8/13(月) 9:30配信

毎日新聞

 6月18日朝に発生した大阪北部地震では、大阪北部を中心に鉄道路線が運休しました。中でも大阪モノレールの運休が長引き、利用客に大きな影響が出ましたが、その背景にはモノレールの弱点がありました。神戸国際大学・中村智彦教授が解説します。【毎日新聞経済プレミア】

【写真】止まった電車から線路を使って……

 今年、関西地方は立て続けに地震と台風に襲われた年として記憶されるだろう。6月18日午前7時58分ごろ、大阪府北部で最大震度6弱の地震が発生。その影響で北部を中心に鉄道路線が運休したが、多くの路線は翌日から通常ダイヤで運転を再開した。

 しかし、大阪府の北西部と中央部を結ぶ大阪モノレールは18日から運休し、いったん23日に運転を再開したものの、車両部品の不具合が発見され、24日に終日運転を休止。その後もダイヤが乱れ、完全復旧したのは29日午前11時以降だった。運休が長期に及び、利用客に大きな影響が出た。今回は、地震で露呈したモノレールの弱点と北摂地区のインフラへの懸念について考えてみたい。

 ◇「通勤通学の足」の長期運休

 大阪モノレールは関西地方では唯一のモノレール線で、大阪府が約65%を出資する大阪高速鉄道が運営している。大阪府北西部の大阪空港駅(豊中市)から中央部の門真市駅(門真市)を環状に結ぶ本線(21.2キロ)と、本線途中の万博記念公園駅(吹田市)から彩都西駅(茨木市)まで北上する彩都線(6.8キロ)がある。総延長は日本最長の28キロで、中国の重慶市にある重慶軌道交通のモノレール線に次いで世界第2位の長距離路線だ。

 大阪モノレールは、1990年に千里中央駅(豊中市)と南茨木駅(茨木市)間が先行開業し、97年に大阪空港駅と門真市駅まで延伸した。98年には彩都線の万博記念公園駅から阪大病院前駅(茨木市)まで開業し、2007年に彩都西駅まで延伸している。

 開業当初は乗客数が伸び悩んだ。しかし延伸開業後は大阪空港の搭乗客、門真市駅周辺のパナソニック関連企業や沿線に進出した企業の通勤客、彩都ニュータウンからの通勤通学客、病院の通院客などが増え、順調に乗客数が伸びていった。

 現在、1日当たりの乗客数は約14万人で、北摂地区の千里丘陵における重要な交通機関の役割を果たしている。黒字経営化しているが、それは本線の建設費を国と大阪府が負担したことが背景にあり、建設費の償却負担を含めると実質的には大幅な赤字といわれている。

 今回の大阪北部地震では長期間の運休を余儀なくされ、利用者などから批判が相次いだ。運休中は代替バスを運行し、駅頭に社員が立って案内するなどしていた。しかし「代替バスは交通渋滞で時間が読めずに困った」(彩都ニュータウンに住む会社員)、「復旧のめどが立たず、生徒の通学や授業の再開に支障があった」(北摂地区にある高校の教員)といった声が聞かれ、影響は広範囲にわたった。

 ◇点検に時間と費用がかかる

 モノレールは構造上、メリットとデメリットが表裏一体となっている交通機関だ。60年代には、「未来の乗り物」として人気を集め、全国でモノレール線が建設されたが、開業後のトラブルが多く、またメンテナンス費用の高さも要因となって廃線になった路線が多々ある。

 モノレール最大のメリットは、道路の上空を使えるため土地収用を最小限にできることだ。大阪モノレールには道路利用の特別措置があり、中国自動車道や近畿自動車道の上を走っている。モノレール軌道は、高架の橋桁が軌道を兼ねる。そのため、橋桁の上に鉄軌道を敷く通常の鉄道建設に比較して建設コストが抑えられる。

 だが、この構造のメリットが大阪北部地震ではデメリットとしてクローズアップされることになった。高架の橋桁を走るため、営業車両が軌道上で停止すると、点検用車両を運行して営業車両に近接しなければならない。その後、問題がなければ運行を再開できるが、異常があれば点検用車両が車両基地までけん引していく。そして再び、他の停止車両のところまで点検用車両を走らせるという行為をくり返す必要がある。

 軌道は送電も兼ねるため、点検作業時に送電を止めなければならない。点検できるのも、点検用車両のある部分だけだ。また軌道に問題があれば、橋桁そのものを取り換える大掛かりな工事になる。通常の鉄道のように、複数の保守車両や人員を路線沿いに配置して、多くの場所で同時に点検を行えない。点検は慎重になり、時間も費用もかかるのだ。

 ◇インフラ老朽化が顕在化

 大阪府は、16年に大阪モノレールの門真市駅から東大阪市瓜生堂までの延伸計画を示している。19年に着工、29年の開業を目指す計画だが、今回の地震の影響や、災害への脆弱(ぜいじゃく)性が表面化したことで、今後計画見直しも含めた議論が必要なのではないか。

 また、大阪モノレールが阪急京都線と接続する南茨木駅では、70年に建設された阪急南茨木駅ビルに大きな被害が出て、現在もエレベーターなど一部の施設が使用できない、一部のバリアフリールートが通行できないなどの影響が出ている。

 北摂地区のある市会議員は「北摂地区には高度経済成長期に建設された老朽化したインフラが多く、今後はメンテナンスや耐震化などに膨大な費用がかかる。今回の地震で多くの人がそのことに気づいたのではないか」と述べている。

 インフラや大阪モノレールの弱みが顕在化する中、大阪府は膨大な予算を組んで大阪万博誘致や統合型リゾート(IR)建設を推進している。これに対して、府民などから懸念の声が上がる可能性も高いだろう。

最終更新:8/13(月) 15:10
毎日新聞