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【イマドキの仕事人】“気軽にたくさん”試合実現の草野球リーグ

8/13(月) 6:00配信

スポニチアネックス

 夏の甲子園が盛り上がる中、現在国内には草野球人口が約490万人いると言われる。だが「たまにプレーしたい」というライトな層にとっては、自力で対戦チームを見つけて日程や会場を押さえるのは難しく、従来のリーグ戦やトーナメント戦に参加するにも難点が多い。そんなチームでも、気軽に野球を楽しめるようにサポートする草野球リーグの運営者を取材した。

 草野球には一見無縁の東京・六本木の一角にあるオフィスで、株式会社ギガスリート代表取締役の大垣伸悟(37)はリーグ運営のアイデアを巡らせていた。大垣が2012年に設立した「G―LEAGUE」には、首都圏で活動する社会人や企業、大学の同好会など約200チームが登録している。

 「草野球では勝ち負けも当然決めるけど、大事なのは、いかに試合をたくさんするか。その仕組みを考えた結果、今の形態にたどり着いたんです」。

 リーグ戦ではあらかじめ日程が決められ、メンバーがそろわないとリーグ全体に迷惑が掛かる。トーナメント戦は、初戦で負けると、そこで試合ができなくなってしまう。その両方の欠点をカバーするシステムを考案した。

 各チームは年間約5万~6万円の加盟料と、試合料1800円を払う。試合をしたい希望日を運営に伝え、条件が合い、かつ実力が近いチームが互いに申し込むシステムだ。成績を「完全ランキングシステム」という独自のレーティング計算で強さを数値化する。そのため試合数にばらつきがあっても競争でき、多いチームでは年間30試合ほど戦う。

 レーティングは米国発の野球統計学「セイバーメトリクス」を基に、OPS(出塁率+長打率)などの数値を使用する。勝敗や得失点という結果より、内容を重視。たとえば1安打のチームが1―0で10安打のチームに勝っても、敗れたチームの評価が上になる場合もある。年間のレーティング上位4チームがチャンピオンシップを戦い、優勝を決める。

 他にも野球ファンが喜ぶさまざまな仕掛けを用意する。同社スタッフを試合会場に派遣してスコア付けと写真撮影、インタビューやサイトに載せる記事執筆を行う。「スコアブックより簡単で研修すれば誰でも扱える。スタッフは主婦ら女性が多い」。参加者からは「試合後にも成績を眺めたりして楽しめる」と好評だ。個人成績をランキング化し、個人タイトル獲得者には、スポンサーが提供したグラブなどの道具をプレゼントする。

 大垣は1980年度生まれの「松坂世代」で、投手として本格的にプレーした。兵庫県の姫路商で野球部に所属したが、米国でのプレーに引かれ2年の夏に渡米。在学しながら短期間の滞在を繰り返した。卒業後も最速151キロの直球を武器に、各地のサマーリーグや独立リーグを転戦。のちに大リーグで首位打者となるノマー・ガルシアパーラらとも練習したという。だがマリナーズ傘下のマイナーキャンプに参加した02年に右肘の故障で帰国し、現役続行を断念した。

 高校時代に、難易度が高い第一種情報処理技術者の資格を取得。「野球をやめた時に備えることで、家族らの理解を得て野球に専念するため」だが、これが現在につながった。地元でIT系専門学校の教師を務めたのち、東京の企業にソフト開発エンジニアとして入社。所属する草野球チームの友人と話す中でアイデアが次々に浮かび、11年に同僚らと3人で独立した。

 日本の人口減に伴い草野球人口も減少し、高齢化している。だが「年齢を理由にやめる人が減っただけ」と悲観的には捉えていない。理想は「草野球人口の増加」よりも「1人あたりのスポーツ時間を増やす」こと。「カラオケボックスのように、誰もがちょっとした時間に楽しめるようになれば」と語る。

 鈴木大地スポーツ庁長官が掲げる「21年に成人の65%が週1回スポーツを楽しむ」という目標にも通じる。将来的にはフットサルなど、他競技の運営者にもノウハウを提供し、多くの人がスポーツを身近に楽しめる環境づくりを目指している。=敬称略=

 ≪全国100チームでカップ戦進行中≫会社名の「ギガスリート」には「ギガ(10億)」の人々が「アスリート」としてスポーツを楽しむという願いが込められている。スコアや個人成績の管理を簡単にする「G―SCORE」や「G―LOCKERROOM」などのサービスを提供。さらに今夏は登録チームを全国に広げ、約100チームで日本一を争うカップ戦を進行している。