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自動車メーカー「不正」のケース分析

8/13(月) 6:33配信

ITmedia ビジネスオンライン

 8月9日、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の3社が排出ガス抜き取り検査についての調査結果を国土交通省へ提出した。

三菱自動車が公表した燃費不正問題の概要

 これを受けて、各メディアは一斉に「不正」として報道した。しかしその報道内容を見ると、多くが不親切で、何が起きているのかが分かりにくい。ただ「不正」という印象だけが一人歩きしている。

 そこに問題が何もなかったわけではない。問題はあった。しかし、その実態は本当のところ何なのか、できる限りフラットにフェアに書いてみたい。

 しかしながら最初に断り書きをしておかなくてはならない。どうもこの問題、続報が出そうな気配を感じる。筆者は個人的に「あそこはまだ全部出し切れていない」と思っている会社があるが、この段階で証拠もなしに言うわけにはいかない。そんなわけで今後出てくる事実によっては、結論そのものが覆る可能性も否定できない。

 しかし、現在知り得る情報の中で可能な限り真摯な解釈をしていきたいと思う。

燃費不正問題

 話は2016年にさかのぼる。というのも、ここ最近の「検査がらみの不正」は大きく分けて「燃費不正」「完成検査」「抜き取り検査」の3種類あって、それぞれに意味が違う。その3つともが正しく理解されていないので、今回の件だけ抜き出して書くと、過去の件も一緒くたに扱われてしまう可能性がある。それはまた困る。なので三菱自動車の「燃費不正問題」から始めていきたい。

 燃費不正の問題は、クルマの性能届け出値についての不正である。監督官庁である国交省はもとより、ユーザーに提示される性能や仕様が現実と異なるものだという意味で、社会的影響が高い。

 三菱自動車が行なった燃費不正は、新型車の届け出燃費を改ざん・粉飾によって良く見せた不正だ。新型車はその性能や仕様について国交省に書類を提出して認可を得る。

 三菱自動車ではこの燃費測定テストの方法を日本の省庁が定める「惰行法」ではなく米国の方式「高速惰行法」で行い、かつ実測定データの分布の中からルールによって定められた数値の抜き出し方を逸脱し、粉飾を疑われるデータの選別を行なった。

 統計では、一般に最良データと最悪データは採用しないなどの考え方がある。そのため散らばった実測値から選択して良いデータについては国交省がルールを定めていた。にも関わらず、三菱自動車はこれを無視して都合の良いデータを選び出した。

 さらにそれらの平均値などを計算する過程でも恣意的な補正計算が行われた。さらに諸問題が発覚した後の再測定でも、国の指定する方法に従わず米国式の測定を行うなど、規範意識について疑わざるを得ないことが連続した。

 三菱自動車のケースはクルマの性能の届け出値、つまり性能が意図的に改ざん・粉飾されていたもので、これは黒と言わざるを得ない。

 同様の問題はスズキにもあった。スズキの場合、走行抵抗を測るテスト設備が海風の影響を受けやすいことから、実測値にばらつきが多く、それを回避するために机上数値計算で燃費を算出した。これも国指定の測定方法を勝手な創意工夫で他のやり方に置き換えたという点で大きな問題だ。

 ただし、三菱自動車の場合、補正値の組み込みなど数値を粉飾する意図があったのに対し、スズキの場合、のちに再測定して実測した数値は、机上シミュレーションによる届け出値より向上していた。算出法のルール破りが甘えであることには違いないが、数値そのものの粉飾や改ざんの意図はなかったと考えられる。

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