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人間の「強い弱さ」の迫力。日頃の仕事で表面的な「強さ」「正しさ」ばかり求められている大人にお薦めする―小谷野 敦『童貞放浪記』楠木 建による書評

8/13(月) 8:10配信

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◆人間を知る、自分を知る

私小説集。表題作もいいが「黒髪の匂う女」がとくにイイ。名誉名声と美女がスキ。小学生のように強欲で自己中心的。底抜けの楽観と驚くべき悲観の呉越同舟。ねたみ・そねみ・つらみ・うらみ・ひがみのオンパレード。書いてあることは基本的にその5つだけ。人間の愚と醜の全面露出だ。

初めて読む人は心の底からへきえきするだろう。僕もそうだった。が、何事も我慢が大切。そのうちに人間の「強い弱さ」の迫力が分かってくる。泥沼から普遍的な人間の本質がどろりどろどろと浮かび上がる。

程度の差こそあれ、人間なんてこんなもの。人間を知る。そして、自分を知る。日頃の仕事で表面的な「強さ」「正しさ」ばかり求められている大人にお薦めする。

[書き手] 楠木 建
一橋大学教授。専門は競争戦略。著書に『「好き嫌い』と才能」(東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たったひとつの仕事の原則』(ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)など。

週刊ダイヤモンド 2014年12月20日掲載

楠木 建

最終更新:8/13(月) 8:10
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