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ラジオの生放送に遅刻した!~元たま・石川浩司の「初めての体験」

8/13(月) 0:10配信

DANRO

スタジオに飛び込む僕ら

マネージャーも顔面蒼白になっている。いまは8時20分。番組終了まで残すところ10分だ。

「もうちょっとです。次の小道を入ったら着きますから!!!!!!!」

「あぁ、でももう駄目やー」

そしてついに到着。時間は・・・8時27分。

車を降りると、スタッフらしい女の人が待っていた。

「こっちです!」

階段を3段跳びで駆け上がる。全力疾走だ。

「すっ、すいませーん!」

スタジオに飛び込む。こちらは言われた時間に指定されたハイヤーに乗ったので、自分に落ち度があるわけではないのだが、とにかく頭を下げてコートも脱がずにマイクの前へ走った。

「あっ、今、到着されました!」

「すいませーん、車が、こ、こ、こ、混んでいて!」

階段を駆け上がったので、息が切れ、まともにしゃべれなくなっている。そして横のスタッフが「あと2分」と書いた紙を小西さんに見せている。

「じゃあ、コンサートへの抱負を」

「えっ・・・あぁ、がんばります!」

実は僕が階段を駆け上がっているとき、コンサートの告知をしてくれていたらしいのだ。でも、いきなり抱負を聞かれて動揺してしまい、しょうもない答えになってしまった。

事前に番組進行表をもらっていて、質問される内容もだいたいわかっていた。「おっ、この質問ではこう答えるかな」とか「ここでちょいと笑いを取るコメントでもするかな」とか姑息に考えていた。しかし、その努力はすべて無駄になり、「あと1分」と書かれた紙にさらに動揺。僕がランニングを着ているワケなどどうでもいい話をしているうちに、「それでは、今日のゲストは石川浩司さんでした。また明日~」ってなことになった。

「・・・終わったな」

自分のせいではなかったとはいえ、番組に遅れ、パッとしないコメントを残した僕。とりあえずため息をつく。

「ふぅぅぅぅっ」

捨てる神あれば拾う神あり

その時である。思いがけないことが起きた。小西さんの次の番組が、えのきどいちろうさんの番組だったのだが、えのきどさんが声を掛けてくれた。

「じゃあ、そのまま僕の番組に出ますか」

以前ラジオのゲストに呼んでもらったこともあり、状況をニヤニヤと見ていたえのきどさんが、気をきかせてくれたのだ。「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったもんだ。しかし、そうたやすいことではない。番組ごとにディレクターも違うし、細かい秒きざみの番組台本がある。

「ニュースのコラム的なコーナーがあるんですけど、そこ飛ばしますから、石川さんのコーナーにしましょう」

「えっ!? いいんですか。・・・すっ、すみません!」

えのきどさんは、僕の『すごろく旅行のすすめ』という本を読んで、「この本のファンだ」と言ってくれていた。なおかつ、前回、番組に出演した後に、「鹿児島物産展で見つけた」と言って、わざわざ缶ジュースコレクターの僕に芋ジュースを送ってくれていたのだ。

「今日のテーマは『禁止』です。石川さん、なにか禁止されていること、ありますか?」

「えっ、あっ・・・家では、おならが禁止です。というか、妻のいる部屋じゃないところに行ってすればいいんですけど。ただ、腹の調子が悪い時は連続で出ますよね。なので、上半身は妻と一緒の部屋にいて、下半身だけ隣の部屋に尻を突きだして・・・」

まぁ、しょうもないコメントはどの番組に出ても結局変わらなかった。とにかく、えのきどさん、小西さん、その節はありがとうございやしたっ!

(著者プロフィール)
石川浩司(いしかわ・こうじ)
1961年東京生まれ。和光大学文学部中退。84年バンド「たま」を結成。パーカッションとボーカルを担当。90年「さよなら人類」でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白にも出場した。「たま」は2003年に解散。現在はソロで「出前ライブ」などを行う傍ら、バンド「パスカルズ」などで音楽活動を続ける。旅行記やエッセイなどの著作も多数あり、DANROでは、自身の「初めての体験」を書きつづる。

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最終更新:8/13(月) 0:10
DANRO

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