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知床 滞在長期化へ工夫 ガイドツアー、クジラ観察、ホテル新装

8/13(月) 5:00配信

北海道新聞

「これはヒグマのフンですよ」

 7月28日、青空が広がる知床五湖で開かれた散策ツアー。6人の参加者は自然ガイド歴8年の笠井文考さん(45)に案内されながら約3時間、夏の知床を楽しんでいた。

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 ツアーは環境省などから認定された複数の自然ガイド業者が11年から、5~7月限定で実施。この期間はクマの活動が活発になるため、ガイドなしでは五湖全てに立ち入ることはできない。最盛期のような人混みから解放され、静かな環境でじっくりと自然観察できるのが魅力だ。

 「これはヒグマのフンですよ」。同日のツアーで、笠井さんが足元のフンを見つけると、参加者から驚きの声が上がった。「この時期に五湖に来るのは、ヒグマのすみかに人間が入っていくようなものです」と解説を続ける。妻と2人でツアーに参加した三重県の会社役員大萱宗靖さん(51)は「クマと遭遇するかもしれないというスリルもあって、期待を裏切らない内容」と満足そうだった。ツアーの参加費は1人5千円前後。年々、観光客の評価が高まり、17年の参加者は11年の2・3倍に当たる1万5072人だった。

 知床峠の反対側、根室管内羅臼町沖が舞台のホエールウオッチングも人気だ。羅臼港を拠点とする観光船会社が10年ほど前から実施し、約3時間かけてクジラを観察する内容。羅臼町によると昨年の参加者は2万3442人で過去最多だった。

「ゆっくりとした時間が過ごせました」

 これらのメニューが定着していくに連れて、観光客の宿泊形態にも変化が出てきた。知床温泉旅館協同組合によると、斜里町ウトロの主要4ホテルの宿泊客のうち、連泊客の割合は年々上昇。17年度は春や秋の閑散期を除いて20%以上で推移し、夏季観光のピークとなる8月は08年度と比べ14ポイント増となる37%だった。

 知床五湖ツアーなどは拘束時間が長くなる上、羅臼町には宿泊施設が少ないことから、知床斜里町観光協会は「知床の自然をじっくり時間をかけて楽しみたいという人が、連泊を選択するようになった」とみる。

 こうした長期の滞在客をさらに増やそうと、ホテル業界も動きだした。

 知床北こぶしグループは今年4~6月にかけて、ウトロで経営する3館を相次ぎ新装オープン。富裕層を狙い高級路線を打ち出した客室やレストランをそろえる一方、低料金での宿泊を希望する客向けに、別のホテルは素泊まりを基本にして共用スペースに簡易キッチンを新設した。同グループは「いずれも、長く滞在してもらうことを念頭に整備した」という。

 妻や子ども、両親の7人で知床観光に訪れた東京都の会社員戸田洋一さん(43)は、今月1日からウトロに2泊した。「手つかずの自然を子どもに見せたくて来ました。知床岬までクルーズを楽しむなど、ゆっくりとした時間が過ごせました」と話していた。

「知床ブーム」のころには及ばず

 各業界が観光客の滞在期間を延ばそうと力を注ぐのは、観光客数自体の伸び悩みが背景にある。

 知床斜里町観光協会によると、斜里町全体の延べ宿泊客数は、知床が世界自然遺産に登録された05年度は約59万人に達したが、その後、08年のリーマンショックや11年の東日本大震災などの影響で減少。近年は外国人観光客が大幅に増加したが、それでも17年度は約45万人。世界自然遺産の登録で知床ブームが沸き上がったころには及ばない。

 同協会は「宿泊客数の減少分を補うためにも、連泊客を増やしていく必要がある」と強調。観光業界は今後も自然体験メニューや受け入れ施設を充実させる考えだ。(渡辺拓也)

北海道新聞

最終更新:8/13(月) 5:00
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