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「治療時間はどれくらい」受診者急増、重粒子線がん施設「サガハイマット」 全国から見学者

8/13(月) 8:20配信

西日本新聞

 佐賀県鳥栖市原古賀町の九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)が7月21日、一般公開された。4月から前立腺と頭頸(けい)部のがんなどに公的医療保険が適用され、サガハイマットを受診する患者が急増していることもあり、この日は全国各地から約300人の見学者が訪れた。

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 サガハイマットは九州初の重粒子線によるがん治療施設。2013年5月に開設し、これまで2700人を超す患者が治療を受けている。昨年は645人を治療し、全国14の粒子線治療施設で最多となった。前立腺のほか、肝臓や肺、膵臓(すいぞう)、咽頭や甲状腺などの頭頸部、骨や筋肉・脂肪などの骨軟部の腫瘍やがんの治療にあたっている。

放射線治療専門医、5人から6人に増強

 3月から次世代型3次元スキャニング照射装置と呼ばれる、複雑な形状のがんにピンポイントで重粒子線を当てる治療室Cが稼働。放射線治療専門医を5人から6人体制に増強した。昨年は月に約80人だった患者数は、同装置導入後に急増し、今年5月は約180人だった。

 一般公開は毎年7月の機器メンテナンスに合わせて実施。見学者はふだんは入れない治療室やがん細胞を破壊する重粒子線を発生させる加速器室などで担当者の説明を受けた。

「治療時間はどれくらい」

 見学者からは「治療時間はどれくらい」「胃がんは治療できないのか」などの質問が相次ぎ、担当者は「照射時間は1~5分で、早い人は10~15分で治療室を出る」「動きが予測できない胃などの臓器は照射が難しい」と回答。熱心にメモを取っていた。

 長崎市から顧客約50人と来たという生命保険会社の峯富美子さんは「生命保険商品に先進医療特約があり、顧客に重粒子線治療を知ってもらいたいと思って来た」と話していた。

少ない照射 負担少なく

 開設から5年がたち、新たな治療室も稼働したサガハイマットの中川原章理事長に、重粒子線治療の状況と展望を聞いた。

 炭素原子を使う重粒子線は、陽子線の12倍の重さがあり、がんを破壊する効果が高い。照射回数が少なくていいのが一番のメリットだ。前立腺がんの場合、陽子線だと32回の照射をするが重粒子線では12回。全国にはもっと回数を減らしている施設もあり、医療機関のコストや患者への負担が減らせる。

 がんの中でも最も厳しい膵臓(すいぞう)がんへの効果が高いことも分かってきた。膵臓は細胞内の酸素が他の臓器より少なく、そうした環境ではがん細胞がより悪性となりやすいが、重粒子線は酸素が少ない環境で効果を発揮する。頭頸(けい)部のがんは切除手術をすれば食べられなくなったり、話ができなくなったりするが、重粒子線治療を施した場合、免疫の低下などの後遺症が少ないこともメリットで、高齢者に向いているといえる。

 全国の粒子線治療施設で連携して統一のプロトコル(治療実施計画)に基づいて臨床を行っている。11月10、11日には佐賀市で粒子線治療の国際シンポジウムがあり、世界の研究者が訪れる。そこでアピールできるような重粒子線治療の科学的なエビデンス(証拠)を積み重ねて、国民のためになることがサガハイマットの使命だと思っている。
 (談)

西日本新聞社

最終更新:8/13(月) 8:20
西日本新聞

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