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「辞めたい…」反発する生徒の指導に挫折 教師救った「イエナプラン教育」 国内初、実践校が開校へ

8/13(月) 9:30配信

西日本新聞

 学級担任や進路指導では親身になって生徒に関わった。「子どもが学校に行かない」という連絡を保護者から受けると、すぐに家に駆け付けて子どもと話をした。高校受験前の放課後には、自習する生徒を見守りアドバイスもした。

⇒【画像】オランダの小学校でサークルになって話し合う子どもたち

 福岡県宗像市などの中学校で32年間、社会科教諭として勤務した久保礼子さん(62)は、教師として“真っすぐ”だった過去を振り返りつつ、自省の言葉を口にする。

 「どんな人も、たった一人のかけがえのない価値がある。でも、実践してきた授業や指導はその価値を尊重してきただろうか」

悩みの中で出合った1冊の本

 経験を積み、生徒や保護者との関係が密になると、久保さんの顔色をうかがう生徒も現れた。不機嫌な態度を示すと、多くの生徒は姿勢を改めた。落ち着いた学級で、生徒たちは自分の思いを受け入れているかのように思えた。

 しかし40代後半で着任した中学校では、同じ指導が通じなかった。反発する生徒たちを大声でしかり、力で押さえ付けようとした。毎日が苦痛になった。初めて経験する大きな挫折。「(教師を)辞めたい…」。強くそう思った。

 悩みの中で1冊の本に出合う。福岡県出身でオランダ在住のリヒテルズ直子さんが現地の「イエナプラン教育」を紹介していた。教員が管理せず子ども自身が主体的に、共に学ぶ教育という。「そんなことって」。まるで想像できなかった。

現地の学校の風景、目からうろこ

 研修制度を活用し2007~08年度、休職して福岡教育大修士課程で研究することにした。オランダにも約2週間行った。そこで見た現地の学校の風景は目からうろこだった。

 小学校では3学年の児童が1学級で編成されていた。日本では後ろ向きに捉えられがちな「複式学級」を、逆に戦略的な「異年齢混合学級」として位置付けていた。一人一人の違いが当然視され、自然に生まれる学びが、そこにはあった。

重視されるのは「聞く力」

 児童は国語や算数などの教科を自分の計画に沿って学習。それぞれ異なる学習をしている途中で、同年齢の児童が先生の周りに集まり短時間の一斉指導を受ける。理解した児童は自席に戻り練習問題をし、終われば自らの課題に戻る。理解できてない児童は先生が分かるまで教える。理解速度の違いが容認されていた。

 学びの中核は、自らの興味や疑問に基づく探究学習だ。1年間に学校が決める九つのテーマに対し主にグループで取り組む。ここで探究の方法を習得し協働の練習もしていた。

 学級全員がサークルになり、対話をする時間は1日に何度もあった。子どもたちはよく発言するが、低学年だと声は小さく、態度はもじもじ。先生は児童の声の大きさを正しはしない。ただ、級友の話を聞かない態度は厳しく指導する。日本では近年、プレゼンテーション力(発表・表現力)などが脚光を浴びるが、ここで重視されるのは「聞く力」だった。

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最終更新:8/13(月) 9:30
西日本新聞