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<映画「沖縄スパイ戦史」>少年ゲリラ兵、戦争マラリア、スパイ虐殺など描いた女性2監督に聞く

8/14(火) 5:30配信

アジアプレス・ネットワーク

◆「戦争の準備」への警鐘を作品に

沖縄戦で行われた「秘密戦」の深い闇に迫るドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」が全国各地で公開されている。映画「標的の村」「戦場ぬ止み」「標的の島 風かたか」で沖縄の基地問題を描いてきた三上智恵監督と、若手の大矢英代監督が、密かに進行する「戦争の準備」への警鐘を作品に込めた。(新聞うずみ火栗原佳子)

三上さんは毎日放送、琉球朝日放送を経てフリー。大矢さんは琉球朝日放送でイラク戦争に従軍した米兵を主人公にした「テロリストは僕だった」(2016年)などを制作、昨年独立した。

2人が題材にしたのは、沖縄戦の「裏面史」。第32軍の牛島満司令官が自決した1945年6月23日までを「表の戦争」とするなら、北部では、終わりなき「裏の戦争」が続いた。

冒頭描かれるのは北部の少年ゲリラ兵。陸軍中野学校出身のエリート青年将校が、地元の10代半ばの少年たちを「護郷隊」として組織、秘密戦のスキルを仕込んだ。

ふるさとの山中で白兵戦に駆り出され命を落とした少年兵は約160人。遺族、生き残った元少年兵たちの苦しみにカメラが寄り添う。元少年兵の一人は壮絶なPTSDに30年以上苦しんだ。戦争の話をしては暴れるという発作を繰り返し、家族は彼を座敷牢に閉じ込めざるを得なかった。

舞台は八重山諸島の波照間島に転じる。米軍の上陸はなかった。しかし、島民の3分の1にあたる約500人がマラリアで死亡した。軍命で有病地の西表島に強制移住させられたからだ。

罹患を恐れ反対する住民たちに抜刀し、追い立てたのは3カ月前着任した青年学校の教師。その正体は陸軍中野学校出身の工作員だった。学生時代、波照間島で暮らし、「戦争マラリア」を取材した大矢さんが、島の体験者の声を丹念に追う。

映画の舞台は再び北部へ戻り、日本軍による住民虐殺に焦点を当てる。「住民が投降したら敵に情報をもらす」と恐れた日本軍。「スパイ容疑の住民リスト」をつくった部隊もあったという。住民の相互監視のため、軍が地元の有力者らを集めた秘密組織の存在も浮き彫りにした。

少年ゲリラ兵、戦争マラリア、スパイ虐殺。それらが一本の線でつながるとき明らかになるのは過去の戦争だけではない。南西諸島で進む自衛隊増強とミサイル基地配備、日本軍の残滓をはらんだままの自衛隊法や野外令、特定秘密保護法の危険性へと切り込む。「悲惨な過去の話で終わらせてはいけない。いまに続くレールを見せなければと思った」と大矢監督は振り返る。

 「軍隊が駐留すれば必ず『秘密戦』がはじまる。沖縄の地獄が再来してしまう。このシステムにメスを入れたい」と三上監督は話した。