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観光・防災で一石二鳥だけど…無電柱化はなぜ進まないのか

8/16(木) 11:03配信

ニュースイッチ

 街中の電柱がなければ見晴らしが良くなったり、地震で電柱が倒れたりするような事故を防げるのでは―。そんな思惑から、国土交通省は2020年度までの3年間で全国約1400キロメートルを無電柱化する計画をまとめた。実現すれば観光と防災の一石二鳥の成果となる。しかし、費用負担の大きさから無電柱化を進めるのは容易ではなさそうだ。

 無電柱化はロンドンやパリといった欧州の主要都市や、香港・シンガポールなどアジアの主要都市ではおおむね達成されている。無電柱化が進めば、景観が良くなるほか、災害時の電柱倒壊による災害防止、歩道の快適性確保などが期待できる。

 だが、無電柱化は簡単ではない。日本では86年に無電柱化の動きが始まったものの、無電柱化率は東京23区が8%、大阪市は6%とわずかだ。日本では現在、約3600万本の電柱があり、毎年7万本程度増えているという。

 開始から30年以上が経っても無電柱化が思うように進まないことについて、国交省道路局環境安全・防災課は「コストが高いため」と明快だ。

 1キロメートルの無電柱化には、電柱化の約20倍となる5億3000万円もの費用がかかるとされる。内訳は電力事業者など電線管理者の負担が1億8000万円、地方公共団体や国の負担が3億5000万円だという。

 古河電気工業の小林敬一社長は、「(空中に)電線を張るのと地中に埋めるのではだいぶコストが違う。国や我々(メーカー)の方向感が一つになれば、進み方も早くなる」と期待する。

 住友電気工業は電線の地中化需要が増えれば、埋設用の電力ケーブルやケーブル接続材料の販売が増えると見ている。子会社が手がける受変電装置の販売増や敷設工事の受注増も期待する。これら製品群を需要に応じて提案していく考えだ。

 日本電線工業会も無電柱化について「更新需要が増えると認識している」とする。

 取り組みを加速しようと国交省が4月に策定した「無電柱化推進計画」では、18年度からの3年間で約1400キロメートルの新たな無電柱化の着手を目標に掲げる。

 同計画によると、電線管理者が緊急輸送道路で無電柱化をする際に、新たに取得した電線などにかかる固定資産税を減免する特例措置を講じる。

 さらに、国の直轄国道で道路上空に設置されている電線を撤去して道路地下に埋設した電線などについて、「占用料」の減額措置を実施する。そうした取り組みは地方公共団体にも周知し、同様の減額措置の普及を促進している。

 技術開発も進む。例えば電線を地中に埋める上では、ケーブルの保護管を積み上げる「多条多段配管」が有用とされ、コンパクトに多条配管できるケーブル保護管のニーズが高まっている。

 古河電工は、多条多段配管に適したケーブルの保護管「角型エフレックス」の拡販を狙っている。外形が角形のため、積み重ねやすい。工具を使わずに製品同士を接続できるため、施工の手間が減り、コスト削減に貢献できる。多条多段配管をコンパクトにできる合成樹脂製の多孔管「孔多くん」の拡販も目指す。

 また、東京都は無電柱化のコスト削減に向けた官民会議を開催しており、東京電力パワーグリッドやNTT東日本、東京ガスが参加するなど、模索は続く。

 景観や防災上、必要と認識されながら進まない無電柱化。官民挙げてコスト削減や技術革新の促進とともに、政府はより一層の政策誘導を進め、自治体や事業者を支援する必要がある。

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最終更新:8/16(木) 11:03
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