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【ゴジラと憲法】(4) 『原子マグロ』『放射能雨』~セリフに反戦・反核の思い

8/17(金) 11:31配信

アジアプレス・ネットワーク

1954年に公開された『ゴジラ』の第一作。突如島を襲った謎の巨大怪獣に放射能の痕跡が発見された。そのことを公表するべきか否か、国会の公聴会では与党議員と野党議員が激しく対立したが、大荒れの公聴会終了後、ゴジラの出現は公表された。
日本の戦後史を映画『ゴジラ』で紐解く連載の第4弾。(伊藤宏/新聞うずみ火)

◆核実験繰り返す核保有国

「政府ゴジラ対策に本腰」「災害対策本部設置さる」という見出しの記事が新聞の一面に掲載される。記事のリードには「政府は前日に引続きゴジラ出現の情報に種々対米と考慮中であるが……」という記述があった。その新聞を電車の中で読む男女が、以下のような会話を交わす。

女性「いやね。原子マグロだ放射能雨だ。そのうえ今度はゴジラときたわ。もし東京湾へでも上がり込んで来たら、一体どうなるの?」
男性A「まず真っ先に君なんか狙われるクチだね」
女性「いやなこった。せっかく長崎の原爆から命拾いしてきた大切な身体なんだもの」

連載の最初に触れたが、『ゴジラ』が公開された1954年3月1日、静岡県焼津港所属のマグロ延縄漁船「第五福竜丸」が、アメリカの水爆実験による放射能を浴びるという大事件があった。
アメリカは45年にニューメキシコ州で世界初の核実験を実施して以来、広島・長崎への原爆投下を経て、戦後に太平洋やネバダの実験場で9回の核実験を行っている。そのいずれもが大気圏内の核実験だった。

ソ連(当時)やイギリスもそれぞれ大気圏内核実験を行っていたため、世界中で放射能を含んだ雨が降り、汚染が広がっていく。そして、日本でも「放射能雨」が大きな問題となっていた。福島第一原発事故が起こる以前から、日本各地で高いレベルの人工放射能が検出されていたが、それは当時の放射能雨によって地表や森林などが汚染された結果だと考えられている。

◆第五福竜丸だけではなかった

また、第五福竜丸をはじめとする多くの漁船が太平洋上で被ばくしたため、水揚げされた魚も放射能で汚染されていた。当時の焼津や東京では、汚染マグロは「原子マグロ」と呼ばれ大量廃棄されている。54年3月15日に築地市場に水揚げされたマグロやヨシキリザメについては、せりが中断され、国の指示によって流通前に場内に埋められた。

「原子マグロ」は、第五福竜丸以外の太平洋上で漁をしている漁船からも水揚げされたわけだが、アメリカ政府からの見舞金は第五福竜丸だけに支払われた。当時としては破格の1人当たり200万円という金額だったために、他の漁船からは恨まれる結果になってしまった。

また、当時は放射能が伝染するという間違った情報もあったため、最終的に第五福竜丸の乗組員は故郷と漁師の仕事を失うことになった。ちなみに、第五福竜丸以外の被ばく漁船の多くは、風評を恐れて事実を公表しなかったとされる。

核保有国による大気圏内核実験は、63年に実験を地下に限定する「部分的核実験禁止条約」が締結されるまで続けられた。原子マグロ、放射能雨、そしてゴジラは、いずれも核実験に起因するものだ。女性の言葉によって、私たちはそれを再認識させられる。そして「長崎の原爆から命拾いしてきた大切な身体」が、ゴジラによって脅かされるという理不尽さが、改めて核兵器に対する怒りを呼び起こすのだ。

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