ここから本文です

「試験管ベビー」30年迎える中国 あるじなくした受精卵、凍結保存されたまま

8/29(水) 8:50配信

東方新報

【東方新報】世界初の「試験管ベビー」が誕生してから、今年で40年になった。この短い数十年で、体外受精技術によって生まれた人の数は全世界で800万人を超え、世界で最多の中国は毎年20万人の出生者を数える。

「患者が来なくなって10年以上たっても、受精卵の保管は続く。当センターには、受精卵を保存できる液体窒素タンクを置く場所はもう無い。今後、一体どうしたらよいのだろう?」

 中国・北京協和医院(Peking Union Medical College Hospital)内分泌生殖婦人科センターの郁琦(Yu Qi)主任は、中国の試験管ベビーの歴史30年の歩みを振り返り、心中の葛藤について語った。

 ■保管コスト、受精卵一つにつき数万円

 病院と患者との連絡が途絶え、受精卵だけが残されるケースが少なくない。

 郁医師を困惑させているのは、あるじを失った受精卵の今後の方向性だ。保管を続ける場合、病院にとっては保管場所や保管コストといった大きな問題が生じる。一つの受精卵の年間保存コストは1000元(約1万6300円)から3000元(約4万8900円)の間で、病院が負担をするしかない。

 北京協和医院だけではなく、南京(Nanjing)、武漢(Wuhan)、深セン(Shenzhen)、などの生殖機構で同様の事態が発生している。

 ある資料によると、中国の一部の地域で凍結保存されている受精卵の数が数年前に1万件を超え、6割があるじを失った受精卵だという。

「中国国内の病院で受精卵を処分したところは一か所もない」と郁医師は言う。「医師の立場から言えば、受精卵は子どもになる可能性を秘めており、もし放棄するとなると、心理的な抵抗が大きいからだ」

 衛生部が2003年9月に発表した「生殖技術と精子バンクの倫理に関する通達」によると、受精卵の処理に対して、病院は夫婦双方の状況周知同意書が必要とされる。契約書への署名は、起こりうる紛争に病院が対処できる唯一の方法だ。

 北京のある生殖センターの契約書には、残された受精卵の行方に関する状況周知同意書の条文で、病院が凍結保存する受精卵は、6か月間が経過すると、さらに1か月を超えた時点で患者が新たな要求を出さない限り、凍結保存している受精卵を廃棄できるとしている。

 ■医学的、法的に統一した見解を整理する必要性

 中国人民大学(Renmin University of China)法学院の朱虎(Zhu Hu)副教授は、「中国の規定では、人類の胚性幹細胞の研究用胞胚の体外培養期間は14日を超えてはならないとしている。『民法』第16条は胎児を自然人としてみなすとしているが、受精卵にまでは言及していない」

「法律は定性的な問題は解決してくれず、受精卵とは何かを明文化することはない」と朱副教授は指摘する。「加えて、中国では受精卵を放棄できるかどうかについても明確な規定はなく、医師は法的効力が足らないことを危惧している」

「受精卵を廃棄することは社会秩序の問題には抵触しないので、法律はこの面で制限を加える必要はない。契約の内容が双方の真実の意思と願望に基づくもので、病院が契約の通りに実行すれば、法的責任を負う必要はなくなる」と朱副教授。「最良の解決案は契約で決める方式だ。医学界と法学界が共同で、統一された契約書のひな型を作成し、病院側が細部を調整すれば、受精卵の処分問題にしても、受精卵の継承権などそのほかの問題についても、医学界と法学界でしっかりと意見交換し共通の認識をつくっておくべきだろう」(c)東方新報/AFPBB News

※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。

最終更新:8/29(水) 9:30
東方新報

あなたにおすすめの記事