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右派の青年と不法就労の難民 二人の小さなトラブルが、国を揺るがした

8/31(金) 11:43配信

BuzzFeed Japan

きっかけはほんの小さなトラブル

自分たちの優越を説き、他派を激しく攻撃することで人気を集めた政治家がいた。

ある青年は、その演説の映像を繰り返し見、聞きながら、思うに任せない自分の生活の不満を募らせていた。妻は妊娠中。自動車修理の仕事は繁盛とは言いがたい。物価は上がる。生活は楽ではない。

メディアの写真はたいてい既視感を与えるものばかり だから彼は新しい土地で懸命に生きる人の痛みや望みを写真に収めた

ある日、青年の暮らすつつましいアパートの近所で、工事が始まった。不法就労の難民が現場監督を務めていた。

監督に水が掛かったという小さなトラブルが、やがて二人の手を離れ、暴走を始める。
SNSで話が出回り、何者かがヘイト落書きをする。それぞれの背後にテレビなどのメディアがつく。好き勝手な報道が、さらに騒ぎを大きくする。

「申し訳ない」の一言さえあればどこかで収まったはずのいざこざは、刑事事件として立件され、やがて国家元首まで仲裁に乗り出す、国を二分する大騒動となったーー。

「遠い国の話」ではない

これは日本で起きた話ではない。

中東のレバノンで制作された映画「判決、ふたつの希望」のあらすじだ。2017年のベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた。いずれもレバノン史上初の快挙だ。

レバノンで記録的な大ヒットとなり、上映された各国で大きな注目を集めたこの作品が、8月31日から日本でも公開された。

だが、決して遠い国の物語ではない。この映画のような出来事が、いつ日本で起きてもおかしくない。そう感じるのは、私だけではないはずだ。

なぜか。

そのキーワードは「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」。SNSの発達により、日本や欧米で今、問題となっている現象だ。

SNSを通じて同じ意見の人々とつながり、似たような見方ばかりが増幅されてゆくのが「エコーチェンバー」。「フィルターバブル」は、検索エンジンのアルゴリズムなどにより、見たくない情報が遮断されていくことを意味する。

レバノンには、ネットが発達する数十年前から、この二つと同じような状況が存在していた。行き着いた先は、戦争だった。

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最終更新:8/31(金) 11:43
BuzzFeed Japan