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酒税変更はチャンス まずは「うまさ」追求

9/2(日) 15:01配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 尾賀真城サッポロホールディングス社長(1)

 サッポロホールディングスは傘下にビール、飲食、不動産業などを抱える複合企業である。中核のビール事業は、「黒ラベル」とプレミアムビールの「エビス」という有力ブランドを擁する。ビール業界は総需要の減少や消費者のし好の多様化に加えて、酒税の改定が予定されている。変化極まりない市場の動きをどう乗り切るのか。創業140年余りの老舗サッポロの舵取りを、尾賀真城社長に聞いた。

 ――今年の夏は猛暑ですが、ビール事業の業績はいかがですか。

 これだけ暑かった恩恵を本来、もっと受けなければいけないのですが、ビール類の市場の状況は厳しいですね。気温が摂氏35度以上になると、暑すぎて水の消費が増える一方で、ビールの需要は低調になるという話もあるのですけど、私はし好の変化が大きいと見ています。

 チュウハイ、ハイボールなど、カクテル類も含めて低アルコールの発泡性酒類は伸びているんです。私どももビールは苦戦していますが、こうした分野の商品は、絶対量は小さいものの、1月から8月までの累計で前年比150%くらい増えています。

 お客様の関心がある物をきちんと提案するのはメーカーの責務です。同時に私どもとしてはビール市場を活性化しなければいけないと思っています。

 ――ビール類の酒税は段階的に変わり、2026年にはビールと発泡酒、新ジャンル(第3のビール)との価格差が大幅に縮まります。これはチャンスですかリスクですか。

 我々は常に変化を生かさなければならないので、これはチャンスです。ビールの総需要がすう勢的に下がっていますが、お客様の生活が変わり、し好が変化しているので、市場を子細に分析して、何を提供できるか考えれば、やりようはあります。

 酒税はビールを最高に、発泡酒、新ジャンルの間で差があったのが、一緒になりますので、一番安かった新ジャンルは値上げになり、ビールは値下げになります。

 チュウハイの価格が今のままだと、低価格品を買っていたお客様がそちらに流れるかもしれないので、それがリスクになる可能性はあります。ただしビールは安くなるので、買いやすくなるのは事実です

 税金が一本化されても、新ジャンルは税金の差以上に値段を安くしているので、価格差は若干残ります。この程度の差ならビールにしようと考えるかどうかは、お客様の判断です。

 ――メーカーとしては、ビールが売りやすくなるわけですね。

 ビールだけを考えればそうですが、酒全体をみると10年単位で大きく変化しているのです。清酒は1973年にピークに達してから下がり、10年後にウィスキーのピークが来るんです。あのころサントリーは世界1のウィスキー会社でした。

 それからウィスキーはダーッと下がり、今ハイボールブームで伸びているといっても、ピーク時の30%くらいですよ。清酒の山、ウィスキーの山に続いて、94年がビールのピークで、その10年後に焼酎の山が来るわけです。

 生活と食の変化によって、酒も流行り廃りがあるんです。酒全体の中でビールをどう考えるかということが必要です。我々にとってビールは基本ですから、もちろん注力していきますが、ビール全体の需要が今後上がっていくかといえば、今の流れからすると、上がりにくいかもしれません。

 ――ビールの需要動向はそうでしょうね。

 ただし、いろいろ工夫できると思います。まず、うまさをさらに追求することです。今あるビールも技術でもっとおいしくする。また簡便性、利便性の観点も必要で、容器の見直しも関係します。3つ目に、こだわりの原料の使用です。

 私どもは北海道の上富良野町にホップの研究所を持っていまして、ホップの品種を開発しています。「ソラチエース」というホップは世界のクラフトビールに使われて、クラフトの分野で人気に火がついています。麦については、生産者と協働契約栽培もやっています。

 こうした取り組みによって、面白い商品をつくれる可能性は大いにあると思います。

 ――社長が入社した1982年ごろ、サッポロの国内シェアは20%くらいありましたね。今は下がってどのくらいですか。社長は「20%を目指す」方針だそうですが。

 今は12%くらいですね。シェアは当然、気になるので、切りのいい数字の15%にしないといけないなと思うし、その後は昔20%あったとすれば、それを目指すべきだろうと思います。

 ただ私はホールディングスの立場で、目標は何かといったとき、シェアを最初に掲げるのは考え方として、ちょっとバランスを欠くように思うんです。

 ビールの需要がどんどん伸びているときなら、いけいけどんどんでしょうけど、そうじゃないのに、20%のシェアを取るためなら何でもやるぞ、とは言えません。シェアは結果です。結果は重要ですが、まずお客様にきちんと向き合うことが大事です。

 ――ガンガン売りまくれではないのですね。

 需要が伸び盛りの時代は、ビール会社はみんなそうやっていたのです。しかし今は収益性を問われますからね。

 現在もみんなシェアを気にしています。それで笑ったり泣いたり悔しがったりしていますが、シェアを一義的に目標に持ってくる時代ではありません。

 1杯のおいしいビールを飲みたいというお客様が増えています。いかにいいビールをいい状態でお客様にお届けするかと考えた方が、結果は付いてくると思います。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:9/2(日) 15:01
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