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【上海で躍進する企業】「物語コーポレーション」(中)

9/5(水) 14:00配信

ニュースソクラ

「会社がいい」と従業員が笑顔

 日本の外食企業の撤退も少なくない中、元気がいい物語コーポレーション(物語C)。だが、単に「蟹」では13店舗も展開はできない。そこにはそれ以外の何かがあるハズだ。

 そこで外食産業のコンサルタントとして活躍するゼロイチ・フード・ラボCEO藤岡久士氏に、日本の外食企業撤退の理由について聞いてみた。おそらく、物語Cの展開は藤岡氏の説く日本企業の弱点を逆手にとっているのではないかと考えたからだ。
 
 第一に、駐在日本人の減少だ。現在の上海は、人件費の高騰と家賃の高止まりなど、利益を出しにくい環境に加え、日本人を重要な顧客としてきた外食企業にとって、昨今の日本駐在員及びその家族の減少、出張者の減少などで、厳しい環境に追い込まれている。

 しかし、「蟹の岡田屋総本店」の国別客のパーセンテージは中国人98%、日本人1%、欧米人1%。完全にターゲットを中国人にしている点が成功の第一条件だった。 

 第二の点はSNSの普及だ。これにより、店の流行りすたりが速い。デザイン、演出、ボリュームなど、日本独特の洗練された盛り付けや量では中国人に響かない。さらに、継続的な新商品開発がとても重要だ。

 蟹の岡田屋総本店では水槽に豪快に活きたタラバ、ズワイ、毛ガニを入れ、注文した客は活きた蟹をつかんで写真撮影ができる。また、刺身、炭焼き、かにすき、天ぷら、寿司など、さまざまな食べ方を楽しむことができ、その盛り付けは斬新だ。

 コースを頼むと、土瓶蒸し、お造り、黒毛和牛の石焼など、そのボリュームと見映えはまさにSNS発信したくなる。客がまた新たな客を呼んでいる。新商品開発も四季はもちろん、例えば、桜の時期であれば、桜の葉で巻いた黒毛和牛、桜鯛、桜餅など、日本=桜の中国人がイメージする日本を完全にキャッチ。

 さらに、大きなメニュー変更以外に、小さな変更を随時行い、出汁も少しずつ変化させるなど、「店と夢に、これでいいやという終わりはない」という岡田氏の姿勢が、メニューにも表れている。

 第三のポイントは質の高い労働力確保。飲食業界は、他の業界ほどキャリアアップを実感できない。裏返して言えば、人材流出を止めることが困難。

 そこで、岡田屋では、年に1度の経営方針発表会で、サービス、調理部門など部門ごとに従業員表彰を行う。さらに今年は優秀社員6名を日本へ研修旅行をさせた。

 また、「完全実力主義」を徹底し、20代後半で月給3万元(1元:17円として日本円で51万円)の社員もいる。

 岡田氏はこうも語る。「会社が成長しないと優秀な従業員から辞めていく。会社を成長させることで、高給が取れるポジションが増え、辞めることはなくなり、さらに優秀な従業員が育っていく。だから我々は常に成長しつづけ、従業員の給料を上げることが最も重要」。

 2015年前年比145%、 2016年前年比177%、2017年163%の結果を出している。さらに、「もう一つのエンジンが必要」と新業態として今年4月に「薪火焼肉 源の屋総本店」1号店をオープンさせた。こちらも順調で、今後店舗数を拡大していく方向だ。 

 四番目の問題は、マネージメントする有望な管理職を確保するのが難しい点だ。私が訪ねた蟹の岡田屋の店では、東京の帝国ホテルに勤務経験のある中国人男性が店長をしていた。現地採用だが給与を他社より高くし、優秀人材を獲得してきた。

 従業員教育にも力を入れているので、従業員が成長し、管理職に引き上げられるケースも多い。

 第五の点は、上海での外食の現状は「圧倒的なハレ食市場」である点だ。日本で日常遣いの顧客に慣れたチェーン店にはかえって戦いにくい。

 その点、岡田屋は価格・雰囲気・演出デザインにおいてすべて「ハレ」。客単価は550元(1元=17円として日本円で9350円)であり、中間層から富裕層がターゲットだ。

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最終更新:9/5(水) 14:00
ニュースソクラ