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大江千里に聞く「格好悪い振られ方」と大人の恋愛

9/8(土) 12:13配信

BuzzFeed Japan

大江千里、58歳。大学在学中にメジャーデビューを果たし、ポップミュージックの最前線を走り続けていた。デビュー25周年を前にした2007年、今まで築き上げてきたものを手放して、単身アメリカに渡った。理由は、10代のときから憧れていた「ジャズ」を学ぶため。ジャズへの転向は「ラブソング書けなくなったから」とも言われた。それから11年、「ポップスからジャズへ、血を入れ替えた」彼は、アメリカに拠点を置くジャズミュージシャンとなり、忙しい毎日を送っている。そんな大江が初のセルフカバーアルバム『Boys&Girls』をリリースした。再生ボタンを押すと、音の違いに驚いた。ピアノで奏でるラブソングは、洗練された甘さがあり、憂いもあった。”格好良い”のだ。どんな変化があったのか? 【BuzzFeed Japan / 嘉島唯】

大江千里の奏でるジャズ【動画】

大人になり、恋愛から遠く離れて

2007年、大江は突然日本での活動を休止し、ニューヨークのジャズの名門校へ進学した。これまで築き上げてきたキャリアを捨てる覚悟はどこから生まれたのか――。

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若い時に持つ「初めて」ってあるじゃないですか。ピュアな視点と言えば良いのか、「まつ毛に雪がとまる」とか「ポケットの中で手をつなぐ」だとか、ラブソングのモチーフになるような、胸がキュンとするような表現は年々できなくなっていました。

社会に出てからって、ラブソングとして成立しづらいモチーフの方が多い。現実……と言うのかな。仕事、結果、はたまた体力もなくなってきて。

例えば、ダークサイドな感じにしてみたり、ジャジーなアレンジを加えたり、いろんな手法を織り交ぜて、あの手この手で音楽を作るのですが、新しい形のラブソングはなかなか成立しませんでした。

やっぱり、人がキュンとくるのは、若き日に感じた「最初のキラッとしたもの」が一番パワフルで、歳を重ねると飛距離が必要になってくる。「若き日の感覚」からどんどん離れていきますからね。僕が考える「ラブソング」は作れなくなっている気がしたんです。

このまま、ポップスをやり続けられるのか? 何かやり残してることなかったか?

ちょうど、散歩している時にショーウィンドウに映った自分の顔を見て、ハッとしたんです。

目の奥の、そのまた奥の目の、マトリョーシカの一番小さな奥が、笑ってないみたいな。何かが澱んでいたんです。あれ……? 俺、こんな顔していたっけ……? これでいいんだっけ?って。

自分の人生も、音楽も、何も沈んでいない底抜けなものをやってみたくなった。

その時に思い出したのがジャズでした。10代の頃、リスナーとしてジャズの虜になっていたものの、大学1年生の時にデビューが決まった。それからポップスの道に進んで30年が経つころでした。

それが47歳の時。3年待って、50歳で心機一転しても良かったのですが……人生のセカンドチャプターに行くのであれば、余力がある今しかない。自己PRとアレンジ曲を送って、ニューヨークの音楽大学を受験することにしました。

「僕がこの学校に入り、ジャズを学んだ暁には、ビルボードの総合チャートでトップ10に入るくらいのヒットを生む。僕にはその力があります」みたいなことを書いてしまって。勢いってすごいですよね(笑)。

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最終更新:9/8(土) 12:13
BuzzFeed Japan