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大江千里に聞く「格好悪い振られ方」と大人の恋愛

2018/9/8(土) 12:13配信

BuzzFeed Japan

体に染み付いたポップスが足かせだ

ジャズの道に進むことになったものの、困難の連続だった。大きく立ちはだかったのが、体に染み付いた「ポップス」の音楽だった。年齢や出身がバラバラな同級生の中でも、47歳の大江は「年長」に部類された。周りはまっさらな感性をもっていた。

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大学では、音楽の実技以外にも歴史のような教養の授業もあるんですけれど、悪目立ちしていたと思います。

大教室の一番前の真ん中の席で、コーヒーを脇において、ガリガリとメモをとっている。しかも、日本人でいい年齢。正体不明ですよね(笑)。年下の先生たちは、怪しがっていたと思います。すごい勢いで授業を受けているのに、テストの点数は20点。やっぱり英語がわかっていないんじゃないかって。

英語はもちろん、ジャズの言語も僕は知りませんでした。日本のポップスは音が多いんです。でもジャズは違う。音のない間で格好良さを作る音楽なので、いつも先生に「音が多い」と注意されていました。

みんなと演奏する中に、気持ちよく入っていけない日々が続く……。音を聴くとわかる。「ああ、自分は混ざれてない。何かが足りない」って。謎は解けないまま、僕の周りに浮遊していました。縄跳びで「お入んなさい」って言われても、すっと中に入れない感覚。いつも、縄の前で足が止まる。

血を入れ替えるぐらい、自分の中のポップスを全部出して、そこにジャズを入れていかないとやっていけない。痛感しました。

とはいえ、力任せに練習をすれば「入れる」わけでもない。最初の頃は、謎を解き明かしたくて、体の限界まで練習をして、文字通り手が動かなくなってしまうこともありました。とてもつらかった。もっとできるのに、やりたいのに、できないという日々は。

正直、学校に行きたくない気持ちは強かったです。学校の前に来ると「嫌だ、門をくぐりたくない」と思う。でも、毎朝、近所の屋台で1ドルの熱いコーヒーを買って「よしっ!」って気合を入れる。クラスのドアを「Good morning!」って開ければ、陽気な 「いつものセンリ」になる。声をかけられれば「Wow! How are you?」って笑う。

熱いコーヒーは、自分を元気な大学生に切り替える道具でした。

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最終更新:2018/9/8(土) 12:13
BuzzFeed Japan

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