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富裕層が「思いっきり消費する旅行」とは? インバウンド消費拡大のためにできることを考えた【コラム】

9/12(水) 19:30配信

トラベルボイス

こんにちは。観光政策研究者の山田雄一です。

2018年現在、インバウンド客数は順調に増大していますが、一方で顕在化してきたのが「単価の減少」です。本日はこの問題に着目し、継続的な観光消費拡大につながる施策について考えてみたいと思います。

【関連画像】訪日客の年収分布グラフ

量的拡大と単価維持の矛盾と対策

最初に、訪日客1人あたり消費額の推移をみてみましょう。

2015年まで増大傾向にあった単価が減少傾向に転じた理由は、高所得層を掘り尽くし、より低所得層に市場が拡がったためと考えれば整理しやすいのではないでしょうか。

当然ながら、どの市場セグメントも量的な限界を持っています。国内市場であれば、休暇対策や「ふっこう割り」のような支援策によって市場規模を増やすことも可能ですが、訪日客については、そうした対策も取れません。

旅行活動が所得水準に大きく影響することを考えれば、先に動くのはより所得の高いセグメント(Upper)となります。しかし、このセグメントは有限ですので、訪日客が増えていけば、限界がくるわけです。

このとき、同じ発地国を対象としていれば、当然の帰結として、所得が中位のセグメント(Middle)へと拡がっていき、消費単価は減少していくことになります。

実際、2015年以降の訪日客の年収分布を「訪日外国人客消費動向調査」から整理してみると、より低所得層に比重が移っていることが分かります。

年収が低くなれば可処分所得も低くなるため、旅行時の消費額も低下します。これは、顧客の「財布の問題」であり、どんなに日本側で取り組みをおこなったとしても消費額を増やすことは困難です。

量的拡大をおこないながら単価も維持するには、市場の拡大を低所得層に向けておこなうのではなく、他の国のアッパー層の取り込みに向かっていくことが必要なのです。

ただ、ここで問題となるのは、どの国もアッパー層を主たるターゲットとして狙っているということ。どんなに所得があっても時間は等しく有限ですから、アッパー層の旅行先は限定されてしまいます。この旅行先に日本が選ばれなければ、彼らを取り込むことはできません。

また、顧客サイド(アッパー層の人々)も一様ではありません。東アジアのように、所得水準の向上によって新規に旅行に行けるようになった人々がいる一方で、欧米豪のように、以前から旅行に出かけていた人々も存在します。

日本にとって「他国のアッパー層」とは、まさしく、そういう「以前から旅行に出かけていた人々」であり、彼らは、すでにロイヤルティを感じている旅行先があって当然だし、その旅行先の国(着地)側は、彼らの離反を防ぐように行動するはずです。

これをくぐり抜けないと、量と単価の両立は難しいと言えます。

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最終更新:9/12(水) 19:30
トラベルボイス

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