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大きな粒が落ちて小さな粒が残る、不思議なフィルター膜

9/12(水) 13:10配信

ギズモード・ジャパン

常識を覆す。

「ふるい」や「ろ過装置」といったフィルターは、小さなものをふるい落として大きなものを残します。しかし、先月末Science Advancesに発表されたのは、その真逆をいく「小さいものを残し、大きいものだけを落とす」フィルターに関する研究でした。

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ペンシルベニア州立大学の研究者たちが開発したこのフィルターは、シャボン液のように輪っかに張られて安定した液体膜です。小さい粒子を留め、大きい粒子を通過させる安定した動画を見てみると、研究者の1人が「まるでSFから出てきたかのよう」と言ったのも納得の非現実感。

カギは大きさではなく質量

どうしてこれが可能なのかというと、フィルター膜が、物体の大きさではなく運動エネルギーに反応するからなんだそうです。研究チームの一員である生体工学のTak-Sing Wong准教授は、このフィルター膜の仕組みについて「一般的に、小さい物体はその質量が小さいために運動エネルギーも低い」と語っており「運動エネルギーが高い大きな物体は通り抜け、運動エネルギーの低い小さな物体は保持される」と説明しています。

さらにこのフィルター膜、自己修復するという特性も備えています。大きな物体が落ちた後に修復されるのもそのためで、通り抜ける物体を取り囲み、通りすぎると穴は閉じられるという仕組みです。

フィルター膜は、もっとも単純なタイプだと、水と液体と空気との境界面で安定する物質で形成されます。これは、生きている細胞膜に似た構造。ちなみに、プロトタイプの材料にはせっけん水が使われたそうです。

医療や衛生面で活用できる可能性

このフィルター膜は、機械的な耐久性、抗菌特性、あるいは悪臭の中和など、各々の目的にかなうよう修正&最適化することもできます。研究チームのメンバーで機械工学科の大学院生Birgitt Boschitschさんは「フィルター膜を長持ちさせる成分や、特定のガスを遮る成分を足すこともできます」と説明しています。

研究チームは、フィルター膜の将来的な活用方法について幅広く考えているようですが、特に医療現場や発展途上国での活躍が期待できそうです。

プレスリリースには医療面での活用例として、辺境地や戦場などで手術を施す際に、感染を阻止するバリアを考えているそう。医療器具は通り抜けられるので、清潔な環境を再現する手術用のフィルム代わりとなりえると書かれています。Wong准教授いわく「この膜のフィルターはばい菌やホコリ、あるいはアレルゲンが開いた傷口に届くのを防ぎながら、医者が安全に手術を行える」とのこと。

研究チームは機能を高めたフィルター膜の開発と実用化に向けて、他の研究者とも協力しながら実験と適用を計画しています。考えようによっては使い道はいくらでもありそうなので、どんな形で実用化されるのか気になりますね。

Source: Penn State University via News Atlas, YouTube

たもり

Image: Tak-Sing Wong and Birgitt Boschitsch/Penn State

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