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エアコン、湯張り、宅配もできる、パナソニック ホームズのIoT賃貸住宅「Sm@rt Gran荻窪」レポート

9/14(金) 18:39配信

Impress Watch

 パナソニック ホームズが、IoTを活用した同社初の賃貸住宅「Sm@rt Gran(スマート・グラン)荻窪」を完成させ、入居募集を開始した。スマホを使って、外出先からエアコンをコントロールしたり、お風呂の湯張りができたりするほか、スマート宅配システムとの連携により、宅配物の着荷をメールで知らせたり、荷物の発送やクリーニングサービスなどにも利用できる。

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 パナソニック ホームズでは、賃貸物件を持つオーナー向けに、新たな付加価値を提供できる提案と位置づけており、今後、東京、名古屋、大阪を中心に「Sm@rt Gran」を拡販予定。IoT賃貸住宅の提案を推進する考えだ。

■パナソニックのHEMS「AiSEG2」を活用したIoT賃貸住宅

 パナソニック ホームズの「Sm@rt Gran」は、パナソニックのHEMSである「AiSEG2」を活用。空調や給湯器、照明などを制御する「スマート設備コントロール」、付加価値型の宅配サービスを利用できる「スマート宅配システム」、スマホを使って施錠や開錠などが行なえる「スマートキーシステム」で構成される。

 スマート設備コントロールでは、AiSEG2を介して、外出先にいても、スマホからエアコンや照明をコントロールしたり、給湯器や電動シャッターを遠隔操作することが可能だ。パナソニックホームズ 特建・多層階事業企画部の箭内 孝氏は「寒い日は、家に着く前に暖房を入れておいたり、お風呂の自動湯張りをしておくといったことが可能になる。また留守の時間帯でも、照明やシャッターを遠隔操作することで、防犯上の観点から照明をつけたり、シャッターを降ろしたりといったことが可能になる」と語った。

 また、入居者のスマホに個別に状況を知らせるプッシュ通知も、グループ傘下の賃貸管理会社パナソニック ホームズ不動産を通じて、可能になっている。今後は、AiSEG2を活用したスマートスピーカーによる家電や住宅設備機器の音声コントロールも予定しており、「個別の機器の音声コントロールだけでなく、『行ってきます』といえば、照明やエアコンをオフに、シャッターを自動的に閉めるといった操作を、一度に行なってくれる機能も提供できるようになる(箭内氏)」とした。AiSEG2とスマートスピーカーの連動は、2018年度中を予定している。

 また、スマート宅配システムでは、宅配ロッカーに宅配物が着荷すると、居住者にメールで知らせるほか、宅配ロッカーに荷物を入れておけば発送してくれたり、クリーニング店との連携により、洗濯物を宅配ロッカーに入れ、クリーニングが終わると宅配ロッカーにいれてくれるといったクリーニングの集荷、着荷も可能だ。また、ネットスーパーなどの食品の宅配サービスとの連携も可能だという。「時間を気にせずに、いつでも宅配サービスを利用できる環境が整う(箭内氏)」とする。

 そして、スマートキーシステムは、スマホと連動して、エントランスのオートロックや玄関ドアの開錠ができる仕組みだ。スマホのアプリを立ち上げて、「オン」にしておけば、オートロックシステムが認識して、自動で扉を開けてくれる。いちいち鍵を取り出さなくても、オートロックのセキュリティを維持しながらマンションに入ることができる。そして、そのまま、自分の部屋の玄関ドアも同様にキーを使わずに開錠が可能だ。

 また、鍵情報の共有も可能であり、実家から両親が来た場合など、使用する時間を指定して、鍵情報を共有し、両親が持つスマホを使って開錠できるといった使い方もできる。スマホの電源が切れた場合などを想定して、SuiCaなどのカードにも情報を共有。カードキーとして開錠できるようにしている。ここでは、入居者が変わっても鍵の交換が不要となるため、管理者にとっても、メンテナンスの手間と費用を軽減できるという。

■NTT東・西日本の提供する光回線を利用

 一方で、Sm@rt Granでは、パナソニック ホームズとファミリーネットジャパンが共同で提供する賃貸住宅向けインターネットサービス「iのぞみネット by PH光」を採用している。iのぞみネット by PH光は、NTT東日本およびNTT西日本が提供する「光コラボレーションモデル」を活用したシェア型インターネットサービスで、2018年6月からサービスを開始。建物に引き込んだ1本の光回線を各戸へ分岐。入居者は入居当日から、低料金でインターネットの利用が可能になる。

 「Sm@rt Gran」は、賃貸オーナーの家賃収入に大きく貢献すると、パナソニック ホームズでは見ている。パナソニック ホームズ 常務執行役員 家づくり事業部の武林 良行事業部長は、「賃貸市場は、昨年から落ち着きをみせているが、都市部の優良賃貸住宅の供給は十分ではないと考えている。パナソニック ホームズ不動産では、東京を中心に約5万件の物件を取り扱っているが、一括借り上げ物件では97%の入居率となっている。東京を中心に、優良物件の需要は旺盛である。入居者の満足を高めるために、パナソニックのIoTの技術を活用して、新たな賃貸住宅の提案を行なうことになる。これによって、賃貸市場の成長がさらに見込める」と意気込む。

 調査によると、周辺相場よりも家賃が高くても入居が決まる要因として、単身者向け、ファミリー向けともに、「インターネット無料」が1位に挙がっている。また、2位には、どちらも「エントランスのオートロック」が入っており、3位には単身者向けでは「宅配ボックス」、ファミリー向けでは「追い炊き機能」がそれぞれ入っている。

 パナソニックホームズ 特建・多層階事業企画部の箭内 孝氏は、「Sm@rt Granでは、人気の設備をインターネットにつなげて、入居者の利便性や快適性を実現。高付加価値提案により、賃貸オーナーの安定した賃貸経営をサポートすることができる」と語る。

 同社の調査では、IoT賃貸に興味があると回答した人は82.2%に達しており、スマート設備コントロールでは、エアコンを制御したいという回答者が最も多く61.2%に達し、次いで給湯器、照明、シャッターとなっている。また、スマート宅配ロッカーでは53.2%の回答者が宅配の受け渡しの利用をしたいと回答。そして、スマートキーシステムでは、エントランスの開錠に興味がある人が50.0%、自宅の玄関の開錠が38.1%、鍵のシェアが28.7%となっている。

 Sm@rt Granでは、こうした上位にあがってくる項目をすべて網羅したものになっているというわけだ。

 さらに、これらのサービスを利用できるのであれば、家賃が上昇してもいいと回答した人は、スマート設備コントールでは78.1%、スマート宅配ロッカーでは76.5%、スマートキーシステムでは66.7%を占めており、平均で1500円前後の家賃上昇を許容していることがわかった。「Sm@rt Granでは、入居者が個別に契約する約4000円のインターネット料金相当で、3つのIoTサービスを利用可能になる。入居者の満足度を向上させることができる」と自信をみせる。

■「Sm@rt Gran荻窪」の月額賃料は、11万6000円~14万3000円

 パナソニック ホームズでは、第1号として、東京都杉並区荻窪に、「Sm@rt Gran(スマート・グラン)荻窪」を完成させ、入居募集を開始した。JR中央線および地下鉄丸ノ内線の荻窪駅から徒歩約8分。NTT東日本が保有する土地のなかにある。

 敷地面積は767.54m2、建物延床面積は1707.14m2。パナソニック ホームズの重量鉄骨造「Vieuno(ビューノ)」による5階建て構造で、総戸数は42戸。住戸面積は26.79~45.00m2、単身者やカップルなどを入居者のターゲットとしている。月額賃料は、11万6000円~14万3000円となっている。

 Sm@rt Gran荻窪では、電動シャッターサービスがないこと、食品の宅配サービスは今後検討していくこと、インターネット回線にはフレッツ光を利用しているなど、Sm@rt Granの基本仕様とは異なる部分もあるが、スマート設備コントール、スマート宅配ロッカー、スマートキーシステムの3つのIoTサービスの利用は可能になっている。

 なお、Sm@rt Gran荻窪は、テストマーケティングの位置づけであり、今回の成果をもとに、来年度以降に、Sm@rt Gran全体の販売目標を設定するという。現時点で、Sm@rt Gran荻窪を含めて、4棟のIoT賃貸住宅を受注している。

■次世代プランター「IoTプランター」

 一方、Sm@rt Gran荻窪では、NTT東日本が実用化を予定している次世代プランターである「IoTプランター」の実験も行なう。

 IoTプランターは、カメラやセンサーを搭載し、そこから得られた野菜や果物の生育画像、土の温度や湿度、栄養状態などを計測するセンサーデータなどをクラウドに集約。AIを用いて、最適なアドバイスにより、家庭菜園をサポートするというものだ。現在、約160種の野菜や果物などを栽培することが可能だという。

 NTT東日本 ビジネス開発本部第三部門の小池 哲哉部長は、「農業体験の意向を年齢別にみると、50代、60代以上よりも、20代、30代の方が高いという意外な結果が出ている。だが、体験農園の利用実態を見ると、60代以上が最も多く、20代、30代の利用は極端に少ない。また6割の体験農園において、応募者が待っている状態であるのに対して、体験農園を利用している人のうち、1カ月に1回以下しか利用しない人が8割を占め、1年後の継続率も6割に留まっている。

 ここにはやりたいと思っていても、やってみると、電車で30分以上移動しなくてはならないなど、立地の問題から足が遠のくといったことも原因になっている。体験農園をやりたいが、楽しむためにはギャップが存在していると考えた。IoTプランターを利用することで、簡単に家庭菜園を楽しむことができ、こうしたギャップを解消できる」とする。

 IoTプランターには、カメラと日照計、外気気温計のほか、水分量や温度を測る土壌センサーを搭載。1辺20cmの6角形のデザインとしており、6つの辺の上部にソーラーパネルが搭載されており、カメラやセンサーが自立して稼働するようにしている。

 栽培状況をセンサーやカメラにより、データとして収集。これに基づき、栽培状況を判断する。さらに、日本全国の気候などの情報も組み合わせて、ユーザーに最適なアドバイスを行なうという。

 「午後から雨が降るので水やりを制限した方がいいといったアドバイスがスマホに届く。水のやりすぎで根を枯らしてしまったということがなくなったり、虫による食害などに遭わないようにしたりといったことが可能で、初めて農業を体験する人でも、アドバイスにあわせて、野菜や果物を栽培できる」という。

 今回の実証実験では行なわないが、NTT東日本では、IoTプランターを通じたコミュニティ形成にもつなげる考えで、参加者が共同で行なう共同の夕食会や、ここで育てた野菜をレストランに持ち込んで調理をしてもらうと、料金の割引が得られるなどのサービスも検討していくとし、「農と食の発展につなげたい」としている。

家電 Watch,大河原 克行

最終更新:9/14(金) 18:39
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