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介護スタッフ確保へ、ママ支援 施設内に学童保育、子連れ勤務OK「短時間でも大事な戦力」

9/15(土) 16:00配信

神戸新聞NEXT

 人手不足に悩む高齢者介護の事業所が、スタッフ確保のため、多様な子育て支援策に取り組んでいる。兵庫県加古川市内では特別養護老人ホームの中に学童保育機能を設けたり、デイサービスの事業所が職員の子連れ勤務を導入したり。各事業所で柔軟な働き方の模索が続く。(広岡磨璃)

【グラフ】介護福祉士養成学校の入学者推移


 「もうちょっとで宿題終わるねん」「次は卓球しよう」。8月末、特別養護老人ホーム「せいりょう園」(加古川市野口町)の一角に、元気な声が響いた。

 運営する社会福祉法人「はりま福祉会」が夏休み、老人ホームの中に小学生向け「キッズクラブ」を設けた。学童保育の基準に照らし、幼稚園教諭などの有資格者を支援員として雇用。キッズクラブでは宿題、習字、読み聞かせなどのプログラムがあり、地域の児童5人、職員の子ども12人が利用した。

 全職員約170人のうち約100人が非常勤で、その約7割が女性だ。渋谷哲理事長(70)は「24時間の介護現場には分担が欠かせない。短い時間でも担ってくれる子育て世代は大事な戦力」と話す。

 兵庫県内を中心に約130事業所を展開する「日の出医療福祉グループ」(同市平岡町)は5年前、デイサービスなど一部事業所で「子連れ勤務」を導入。現在は9施設で職員37人と子ども61人が活用する。11月に尼崎市で開業する施設でも子連れ勤務を始める。

 7月からパート職員として、加古川市内のデイサービス施設で働き始めた女性(31)は「『子連れOK』に背中を押され、5年ぶりに仕事ができた」と制度を歓迎する。出産で病棟看護師を辞めた後、復職したくても長男(5)は待機児童の状態が続いた。口コミで制度を知り、週3日の勤務ごとに長男と長女(2)を連れて行く。

 子どもたちは施設内を自由に動き回る。利用者と一緒に料理をしたり、遊んだりする子どもの姿に、女性利用者が「かわいいねえ」と目を細める。騒ぎすぎて怒られる場面もあるが、施設によると、職員の定着率が向上し、子どものいるデイサービスに好感を持つ利用者家族もいるという。

 厚生労働省の推計によると、2025年度には介護職が全国で約34万人、兵庫県で約2万人不足。国も人材確保のため子育て支援施策に力を入れる。

 産休・育休をカバーする代替職員のマッチング事業や、ベビーシッターへの補助。事業所内保育施設の増加も後押しする。

 福祉施設と求職者のマッチングに取り組む中央福祉人材センター(東京)は「介護職員の離職理由には『結婚、出産・育児』が上位を占める。仕事と子育ての両立支援は職場選びの重要なポイント」と指摘する。


■高まるニーズの一方で 介護福祉士目指す学生激減

 日本介護福祉士養成施設協会(東京)によると、介護福祉士を養成する大学や専門学校への2018年度入学者は過去最低を更新し6856人。この5年でほぼ半減した。子育て世代が介護現場で活躍する一方、介護を志す学生の減少に歯止めがかからない。

 同協会は、介護福祉士を養成する学校でつくる。入学者は定員割れが続いており、定員充足率は13年度の69・4%から、18年度は44・2%に低下した。離職者対象の職業訓練を除く一般入学者は3割台にとどまる。

 廃校や廃科も目立ち、学校数は10年で16%減った。協会は17年度に入学者激減対策特別委員会を設けたが「抜本的な策を打てないのが現状」という。国は学費の貸付制度を始め、卒業後に介護の仕事に就くなどの条件で返済は免除になるが、大幅な改善にはつながっていない。

 兵庫県内のある福祉系大学の入試担当者は「受験生本人が介護分野を志望しても、保護者が低賃金や重労働といった先入観を持って反対するケースがある」と話す。

 事業者団体の県老人福祉事業協会(神戸市)は「官民によるイメージアップが欠かせない。省力化や育児支援など各施設が取り組みを進め、業界全体を働きやすい職場にしていくことが重要だ」とする。(広岡磨璃)

最終更新:9/15(土) 16:08
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